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N響定期で須賀田礒太郎「交響的序曲」の上演決定!
2026年5月のN響定期で、須賀田礒太郎「交響的序曲」が演奏される事になりました。
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先日伺った藝大奏楽堂での日本の作曲家コンサートで、ナレーターの片山杜秀さんからこのビッグニュースを伝えられた時、私は驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになりました。というのは、この「交響的序曲」は1999年に栃木県の蔵から奇跡的に発見され、2002年に神奈川フィルによって再演された時、私が浄書パート譜を作らせて頂いていたからです。それ以来須賀田礒太郎という作曲家の虜となり、彼のホームページまで作ってしまいました。
http://www.medias.ne.jp/~pas/sugata.html
天下のN響が孤高の作曲家・須賀田礒太郎の作品を演奏してくれるなんて・・・すぐには信じられませんでした。片山さんによれば指揮の山田和樹さんがNAXOSの須賀田礒太郎CDで「交響的序曲」を聴かれ、「ヒンデミットとの近似性が面白い!」と、本家の「画家マチス」と同じステージでの演奏を決められたという事でした。さっそく須賀田礒太郎ご親族の黒澤陽子さん(須賀田礒太郎氏・姪)、黒澤雄太さん(同・姪子)にお伝えしたところ、たいそう喜んでおられました。
ヒンデミットが「画家マチス」を作曲したのは1934年、その少し後にベルリン・フィルを振って録音もしています。この頃須賀田は、西欧の最新事情にたいそう敏感でした。ヒンデミット指揮のレコードや譜面も、おそらく入手してのではと思われます。その5年後、須賀田はこの「交響的序曲」を書いています。
私事で恐縮ですが2002年の2月9日、この「交響的序曲」が小松一彦指揮/神奈川フィルで63年ぶりに再演された時、私は「画家マチス」という曲をよく知りませんでした。奇しくもその少し後に名古屋フィルで下野竜也さんの指揮で、この曲を演奏する事になりました。弾き始めてしばらく・・・「あれっ?これ・・・須賀田礒太郎じゃないか!」とビックリしたのを、よく憶えています。10年後、須賀田礒太郎の自筆譜を保管して下さる事になった神奈川県立図書館のご依頼を受け、須賀田礒太郎について講演させていただく事になりました。その時まず「画家マチス」のCDをかけ、その後に須賀田の「交響的序曲」を聴いていただいたのです。
「すごい、ほんとによく似てますね!」
参加された皆さんの驚かれた顔を、今もよく憶えています。
でも、だからといって須賀田は、ヒンデミットのいいところだけを盗み取った訳では、決してありません。
ヒンデミット的オーケストレーションを取り入れつつも、そこに日本音階を基調とした旋律を巧みに絡ませ、ヒンデミットより一歩進んだ展開部を、須賀田は構築しているのです。後半のアレグロ・エネルジーコの部分では対位法の錬熟も顕著で、フィナーレのコラールの転調も見事。その和音はシベリウスの第2交響曲のフィナーレを思わせ、鳥肌のたつ素晴らしさです。
そのあたりをこの機会に是非、聴き取っていただければ幸いです。
須賀田礒太郎の「交響的序曲」Op.6、SWV.16 は、1939年(昭和14年)にJOCK (日本放送協会)主催による管弦楽懸賞・序曲の部で入賞し、翌年2月11日に山田耕筰指揮する日本放送交響楽団によって放送初演が行われました。日本放送交響楽団はNHK交響楽団の前身・新交響楽団の放送時の別称ですので、同オーケストラによる実に87年ぶりの再演ということになります。(原題は「興亜序曲」)
「交響的序曲」は須賀田の後期ロマン派的手法の頂点をなす傑作で、幻の名曲「葬送曲・追想」(1941)と共に、もっと知られていい作品です。
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