山本直純/新日フィルライブ

最近興味深いCDが出た。「山本直純&新日本フィルハーモニー交響楽団 ライヴ集」と題する、5枚組セットである。
ナオズミ先生おなじみの管弦楽入門的なレパートリーだけでなく、ブラームスの一番や「第九」のライブ、そして伝説のヴァイオリニスト・潮田益子のブラームス/ドッペルコンチェルトなどが入っていたので、即購入した。
昔ハドフで、ナオズミ先生が名古屋医師会のオケを振った「第九」を100円で買って聴いたことがある。たいそう立派な演奏で驚いたのを、よく覚えている。
さてこの新日との1990年のライブだが、予想に違わず素晴らしいもので大いに感銘を受けた。
ナオズミ先生の指揮は余計な思い入れや小細工がなく直裁的なもので、それが「第九」の曲想にピッタリとはまっているように感じた。新日フィルは1972年の分裂騒動以降、小澤征爾と山本直純両氏がよく指揮をとっていたが、その信頼感も根底にあったのだろう。曲は終始直裁的に進んで行くが、歓喜の大合唱のところでガクッとテンポを落とし、合唱団に心ゆくまで伸び伸び歌わせており「おお、ナオズミ先生登場!」と拍手をしたい気持になった。一万人の第九」で培った持ち前のサービス精神からだろうか。ナオズミ先生の顔が鮮やかに思い浮かび胸が熱くなった。
亡くなられる少し前に名古屋フィルのポップスで来演された時、舞台裏に貼られたスケジュール表をじっと眺める氏の姿があった。
「モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスか… いいなあ。
おい、次はこういうコンサートに呼んでくれよ」
そのお顔が忘れられない。

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