こんなに違うん!?アメリカと日本のラグビー(前編)
どうもおおたけです!
留学生活も2ヶ月が経ち、3ヶ月目に突入しました!
今年ラグビーのプロリーグも開幕し、人気も高まってきているここアメリカ。
今回は僕が大好きなラグビーについて、アメリカと日本の比較をしながら、書いていこうと思います!
前提として、僕が経験したラグビーチームをベースに書いていくことになるので、学術的な比較ではありません。主観ベースなのでそこは悪しからず、、。
英語力があがり、かつラグビーの仲間と過ごす時間が増えていくほどわかることも多いと思うので、今回はわかる範囲で書いていきます。
さて、今回の前編では
①前提として自分の所属してきたチームについて
②そもそもアメリカってラグビー人気なの?
③ラグビーのゲーム構造の違い
④サイズの違い
後編では
⑤練習について(練習内容や進行方法など)
⑥試合について(レフリーとの関係やセレモニーなど)
⑦環境について(スポンサーやカルチャーについて)
綴っていきたいと思います!早速いきましょう!
①自分の所属してきたチームについて
今回は主観ベースなので、前提としてまずは自分の所属してきたチームを紹介します!
高校時代は愛知県立明和高校のラグビー部に所属していました。
入学時〜1年次は愛知県準優勝、ベスト4、2年次は東海大会優勝と全国選抜大会ベスト16、ただ県大会では勝てずベスト4,3年次はベスト8でした。
卒業後は多くが旧帝大等に進学し、ラグビーを続けています。また対抗戦の強豪校に進む選手も毎年2,3人おり、1つ上、2つ上には慶應のバイスキャプテンが、1つ下にはジュニアジャパンに選ばれた選手もいました。(僕の代は除き)
・練習は週6日、朝練は任意で、放課後は3時間弱。長期休みは半分以上菅平、オーストラリア、北海道、福岡、大阪などに遠征しています。
・部員数は20人~30人。うち初心者が8割。ギリギリでしたが、福岡や大阪などの全国の強豪校との試合や愛知県内では有名なモルゲーなどの猛練習などのおかげで長い間、県内では良い成績を残していたチームです。
・基本的に選手たちで練習を考え、監督のお叱りが入ります。
・コーチには雪の早明戦、神戸製鋼で7連覇を達成した時の主将で日本初のプロコーチである大西一平さんがスポットコーチでいらっしゃいました。
・土の硬いグラウンド、定期考査など公立高校の悪条件がありながら、監督やOBの方々のおかげで環境は恵まれていました。
日本の大学では早大GWRCというチームに所属しています
カテゴリーは学生クラブ。早慶明などラグビーの伝統校=体育会が激しい大学において、学業とスポーツの両立を目指し、作られたカテゴリーです。
・1930年創部、88年の歴史を持つ日本で2番目に古い学生クラブです。
主に同じような伝統校の学生クラブや、拓殖、山梨学院などリーグ戦(体育会)のCチーム、また、一橋、東大、北大、立教など、対抗戦2部や旧帝大とも多く試合をします。
体育会のCや北大などには勝っていますが、一橋、東大などには勝てていないので、対抗戦2部の下位といったレベル感だと思われます。
・練習は週3回、うち一回は体育会元監督の後藤貞和さんの元、早稲田ラグビー部と合同練習を実施。
・部員数は毎年70名前後。ただ学生クラブなため、全員が毎回コミットしているわけではありません。高校時代花園や県選抜などでプレーしたものの、大学でラグビー漬けになるつもりはない。けどラグビーはしたいというような選手も多い反面、初心者もいます。
・基本的に学生の自治で練習が進んでいきます。合宿は夏に10日間、隔年で大阪遠征があります。
アメリカではUniversity of Washingtonのラグビー部とシアトルサラセンズというチームに所属しています。
University of Washington(ワシントン大)のラグビー部は
・1963年創部のチーム。リーグの中で1996, 2002, 2004, 2005,2014,2016年にチャンピオンになっています。
・練習は週3回です。
・部員数は15~30人くらい。
・コーチは元U20アメリカ代表のプロコーチだったり、専用グラウンドがあったりするなど充実した体制が整えられています。
しかし現在は部員が足りず、今シーズン2試合目から棄権。
そんなわけで今はSeattle Saracensというチームに所属しています。
サラセンズは
・1966年に創立されたチーム。ブリティッシュコロンビアリーグというカナダとのリーグに所属しています。
今年開幕したメジャーリーグラグビーの初代チャンピオンチーム、Seattle Seawolvesというプロチームとリンクしているチームです。
サラセンズの監督はseawolvesのGMであり、Seawolvesの選手の中にはサラセンズ出身の選手も多くいます。実際現在もseawolvesの選手は秋のオフシーズンはサラセンズでプレーし、春はSeawolvesでプレーしています。
ユニホームはどちらも緑がベースで、ホームグラウンドも同じ。兄弟チームというイメージが良いかと思います。
レベル感はトップイーストやトップウエストくらいでしょうか。
・練習は週3回で、
・正式に登録しているのは100人前後。高校生から40代前半の選手までいます。ただ仕事などとの両立もあり来ない人も結構います。フィジー、トンガ、サモア、スペイン、オーストラリア、レバノンなど多国籍です。
・コーチは5名前後ほどがフルタイムでおり、グラウンドも人工芝の広いグラウンドが使えます。トレーナーも2名います。
・スポンサーも数多くおり、遠征代は賄われます。
フィジーの英雄、ワイサレ・セレヴィが所属していたり、何かと度肝を抜かれます。
さて長くなりましたが、ここからは比較へ!
②そもそもアメリカってラグビー人気なの?
ってはなし。
World Rugby(ラグビーの国際協会)の発行するWorld Rugby Year in Review 2017(最新版)によると
競技人口は
アメリカが世界2位の150万人超、総人口に対してのラグビー人口の割合であるラグビー率は0.5%、
日本は世界6位で26万人超でラグビー率は0.2%です。
この数字は協会への登録者数ではなく、授業等何らかの形でラグビーに触れた人も含めています。
登録者数=本格的にラグビーをしている人でいうと
アメリカは世界6位の12万人で人口当たり0.04%
日本は世界9位の11万人弱で人口当たり0.08%
世界ランクは日本が11位、アメリカが13位であるし、2015年のW杯は日本がアメリカに勝利、また、アメリカはアメフトや野球が有名であることを考えると、アメリカのが競技人口が多いことは驚きではないでしょうか?
実際、街中でラグビーをしているというと、アジア圏出身の人には通じないことが多いですが、ほとんどの人には
「お!いいね!」
みたいな反応で受け入れられます。プロリーグも僕のいるシアトルで開催されるゲームは全てチケットが売り切れるなどかなり人気です。
意外とポピュラーなスポーツになってきています。
日本に関して注意したいのはラグビー熱がマックスだったのは1980年代。
84年に放送されたスクールウォーズなどをきっかけに人気が高まり、早明戦では常に6万人を超え、雪の早明戦などの伝説の試合も生まれました。
この頃ラグビーをしていた50代の方々は多くが現役を退き、1ファンとして,またはラグビーを全く見ないorたまに見るような関係性を築いています。
実際のラグビー認知度などはもう少し高いような気もします。
話は逸れますが、早稲田大学スポーツ科学研究室の平田竹男教授は逆台形モデルというのを提唱しています。
(ネットよりに拝借しましたが、1年生の時履修生でしたので、お許しを。)
これはプレーヤーとして関わるだけではなく、年を経るごとにメディアやスポンサーなど様々な形でスポーツに関わる機会があることを示し、また、種目単位で見るならば、台形の上辺を広げていくことが必要であるとしています。
日本ラグビー界は幅広い年代に、この上辺になれる可能性を持った人々が多くいます。2019年に向けては様々な企業やメディアと関わることを目指すなど関係人口の増加を協会側主導で目指していくことが必要ではないでしょうか。
さて話を戻し、
③ラグビーのゲーム構造の違いについて
あくまでサラセンズやトップリーグ、代表レベルなどを包括的にみた主観的な比較であることを注意書きしておきます。
*アウトライン
アメリカラグビーの特徴は
(1)とっても雑
(2)スロー
(3)全てはパワーと身体能力
であることが挙げられます。
(1)とっても雑
*決まりごとは基本的にありません。
・アタックだと日本では”カンペー”、”1飛ばしループ”など多くのサインプレーがあります。フォワードの中でもワンパスするのか、バックドアするのか、ゲインを切りに行くのか、ラックを作りに行くのか色々なコールがあるでしょう。
しかし、アメリカではほぼありません。
全てはその場の雰囲気。フォワードが当たるかバックスに回すか、キックかというコールはあるものの、ワンパスなのかやゲインを切るか、ラックを作りに行くのかなどはその場の雰囲気です。
・システムをみても、日本ではシェイプ、ポッドを採用しているチームがあり、そのシェイプやポッドも複合的なラインを引くなど、高度に組織化されています。
しかし、アメリカではシェイプは走行距離が多い分、基本ポッド。また、ポッドの中での動きは基本その場で決まります。
(このポッドでは1-3-3-1の真ん中の3を本来作ろうとしていますが、2人しかいません。システムが機能していないともいえますが、ゴール前になり雰囲気で動いているからとも言えます。)
・ディフェンスもまた日本は高度に組織化しています。マンマーク、シャロー、ドリフト、ゾーン、これらを採用していたり、さらにはエリアごとに使い分けたりすることが高校レベルから高度に行われています。
しかしアメリカはとくになし。基本的にあがる、個人がタックルする。ラックになる。の繰り返しです。
このマオリ VS USAの3分台、5分台のディフェンスをみても組織化はそこまでされていないと言えます。
代表レベルでもマークの受け渡し、ラインの制度などは高度ではなさそうです。
・セットプレーも日本はかなり高度でしょう。スクラムにはサインがあり、押す方向なども細かく決まっています。ラインアウトもアルファベットや数字などを組み合わせた複雑なコールやいくつものバリエーションがあります。
しかしアメリカはこれまた雑。スクラムのサインや足肩肘の数センチ単位の調節などはとくになし。ラインアウトもいくつかコールはあるものの種類やバリエーションは少なく、ただのワード(例えばappleが前みたいな)で決められていることが多いです。
かといってスクラムやラインアウトの練習が少ないわけではありません。スクラムではロックがいかに強く押すか、プロップがいかに強く当たるかを練習します。
またラインアウトでは素早く最高到達点まであげることをよく練習します。
つまりここには価値観の違いがあり、
日本は
1+1+1...≠8, そして更に1+1+1....>8にできると考えていて、元来この1の力が大きくないということが前提にありますが、
アメリカは足し算の概念などなしにはこの1をいかに大きくするかにフォーカスしているというわけです。
(ここのモールのディフェンスでもサック、ささりなどのオプションは特にサインとして決められてはいません。)
ハンドリングなどのスキルは日本はバックスが長短のパスやボールの回転、立ち方、キックの軌道などに細かくこだわるのに対し、アメリカではそこまでではないように感じます。しかし、日本人より下手かと言われるとそうでもなく、素早くスピンの効いたパスが飛んできます。
フォワードは日本ではパスが投げられる人と、投げられない人の差があるかと思います。例えばトップリーグやトップ大学レベルでも左パスの回転がおかしなフォワードも見られます。しかし、アメリカではクラブチームレベルだとみんな関係なくパスが投げられます。練習編で述べますがタッチフットをかなり行うからでしょうか。しかし大学レベルだと、アメフト等から転向したての選手が多く、投げられない選手も多いです。
いずれにせよ細やかなスキルが日本にはあり、アメリカにはありません。
(2)スロー
基本的に3~4フェーズくらいしか継続されず、ノックオンやタッチキックで試合が切れます。
ちょっと走ってすぐセットプレーというイメージです。
タックル数、走行距離の多いポジション(フランカー)をしていますが、それでも試合中息が切れることがほとんどありません。
実際のデータを元にみてみると、
アメリカのインプレー時間は正確なデータは公開されていませんが、20分前後。
1試合あたりのタックル数はサラセンズの場合トータル80回ほど。15人に割ると1人あたり5~6回
スクラムはサラセンズで平均10回・ラインアウトは平均7~8回ほど
対し日本は
日本はサンウルブズや日本代表などのトップチームを筆頭に
・素早く、
・ボールタッチの多いラグビーをする傾向が多いですよね。
例えばトップリーグやトップの大学だとインプレー時間は35~40分程度
一人あたりのタックル数は8~9回程度
スクラムは平均8~10回前後、ラインアウトは10~13回前後。(もちろんチームの戦術にもよるので、この数字の正確性は問わないでくださいね)
このようにデータから見ても
・インプレー時間が全く違うこと(アメリカ短い↔︎日本長い)
・それにもかかわらず、スクラム数はほとんど変わらないということを考えるとかなりブツ切れなスローな試合をしているといえます。
(3)全てはパワーと身体能力
しかし、コンタクトの強度は異常に高いです。硬く重く強い・・。
個人の体感ですが日本でも以前遠征したことのあるオーストラリアでも体験したことがないほどの重さ、速さです。
FW同士のコンタクト練習は恐怖しか感じないほどでした。
また手足が長く上半身の太さが全く違うので、上にタックル行こうものなら簡単に跳ね飛ばされます。
反対に下半身の強さ、太さは日本よりないし、足が日本人より長い分、低いプレーに弱いので、下にタックル入れば多くの日本人ラガーマンにとって、止めることはそれほど難しくはないでしょう。しかし、足が長くレンジも広い、また体幹も強いので、止められても倒すまではまだ一山あります。
ディフェンスやアタックで組織プレーが少ないのもこの身体能力やパワーでなんとかなってしまうという事実に関係ありそうです。
では実際にパワーなどがどれくらい違うのか。
次の④サイズの違いを元に少しみていきましょう。
④サイズの違い
データの数の関係上に対称的に比較することは難しい、また膨大な量であることをふまえ、
例としてサントリーvsNコム、日本代表の試合のFW平均身長/体重と
兄弟チームseawolvesやアメリカ代表とを比較しながらみていきましょう。
サントリーvs Nコム(今節、トップリーグ公式サイトより引用)
FW平均サントリーは181cm/106kgNコムは185cm/108kg
このあいだのロシア戦(日本代表ホームページより引用)
日本代表のFW平均は185cm/108kgでした。
対してアメリカ、プロチームのseawolves(本当は僕のプレーするサラセンズのデータを集めたかったですが、チームが今集計中なのでほぼ同じseawolvesから参照。ちなみに彼らは秋シーズンはサラセンズの一軍でプレーしているのでサラセンズのFW平均身長体重とほぼイコールと思ってください。)
Seawolvesは187cm/110kg
アメリカ代表(今日のアイルランド戦より)は190cm/115kgでした。
まとめると
でした。
日本代表のロックがロシア戦はサムエラやヘルウヴェでなく、姫野やヴィンピーなど180センチ台の選手だったことから平均身長はいつもより下がっているでしょう。
それでも代表同士を比べるとロックの身長やプロップの体重などに差があります。
また日本最高峰のリーグであるトップリーグのサントリー,Nコムと、同じくアメリカ最高峰リーグSeawolvesを比べても大きく違うのがわかります。
サラセンズは体感としてはトップチャレンジレベルであると考えられますが、トップチャレンジのチームのロックは180センチ台がほとんどでプロップも100キロ台であることを考えるとこのカテゴリーでもいかに大きな選手が揃っているかがわかります。余談ですが177cm/82kgの自分は為す術もありません。
また、こちらの大学の出場選手の身長体重のデータがないため、正確に比較はできませんが今まで対戦してきたこちらの大学(トップレベルではない)のロックは190センチ越えが当たり前です。
一方大学トップレベルの試合である昨日の早慶戦のロックの身長は
早稲田が178,187、慶應が183,190であることをみても、いかに大きいかがわかるでしょう。
このようにどのカテゴリーを見ても大きさはかなりアメリカが優っています。
しかし前に述べたように世界ランクでも直接の対戦成績でも日本に軍配が上がります。
やはりスキルレベルや組織の成熟度などは日本がかなり高いレベルにあるのではないでしょうか。
ひとまず、ゲームの構造やサイズなどわかりやすいところから比べてみました!
正直アメリカに来る前はここまでラグビーのカルチャーが国によって違うとは思いませんでした。
プレースタイルやシステム、また今後述べる予定の試合前の準備や試合後の文化など、想像を遥かに超えて異なっています。
しかしどんな場所でもラグビー選手同士は仲良くなれるし、ノーサイドの精神などといった基本概念、コンセプトは受け継がれていました。
ひとまず留学生として1年間しか時間がないので、必死に大きくなり、一軍に上がることが目標です。
続編ではスポンサーとの関わりや、試合後のアフターマッチファンクションのカルチャーなどもこれからまとめていきたいと思います!
何か聞いてみたいこと、知りたいことがあればどんどんコメントしてください!
ありがとうございました!