彼の傍で眺めた海たち
彼が「月の光が海に溜まっている」と言った。その海を、私は彼の肩越しに見たんだ。
枯れてもなお、想いは続いていくんだ。
こんなカクテルがあったら酔いね、と手を繋いで畦道を歩いたんだ。
太陽の光が海に溜まっている。
夏の霧は全てをぼやかしてしまう。美しい。隠してしまう。気持ちも過去も、貴方の表情さえ。声が滲んでいる。それに気づかないのは霧のせい。しっとりとした、生温い水蒸気のせい。
かつて海の底に沈んだ世界が、形を取り戻したようだった。
貴方の助手席は私の指定席。
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