「IT企業の人事」が基礎造形と出会ったら
桑沢デザイン研究所の基礎造形専攻には、様々な背景をもった方が学びに来ています。基礎造形と出会ったきっかけや、造形課題を通して感じたことなどを、綴ってもらいました。
「IT企業の人事である私」について
昼間はIT企業の人事・人材育成部門に所属し、人材育成を担当しています。
新人研修の企画や実施、OJT(On-the-Job Training)の方針検討、共創や新規事業創出のためのコミュニティ形成と場づくり、社員面談などが主な仕事です。
人事だって、「クリエイティブになりたい」
基礎造形専攻に入ろうと思ったのは、あるデザイナーとの出会いがきっかけでした。
彼は「人と組織に寄り添いながら、場のデザインをする人」で、私はたびたび彼と一緒に仕事をしていました。
その中で、彼と自分との「ものの見方の違い」を感じるようになりました。
自分では思いつかないようなアイデア、提案の数々。
しかもそこには、みんなが楽しめるしかけがあって。
「そういう発想って、どうやってわいてくるんですか?」
「今のアイデアって、どこに着目して出てきたんですか?」
と何度も聞く中で、
「自分も、こういう発想やものの見方が、身についたらいいなぁ…」と思うようになりました。
そんな時、一つの漫画に出会います。
タイトルは「クリエイティブになりたい」。
ここには、基礎造形専攻の学びが描かれていました。
読み終わった後、「ここに通えば私も、いろいろな見方でものを見る力がついたり、今までとは違った発想を生み出すことができるかも…?」と思い、勘と勢いで入学願書を提出しました。
基礎造形は、「自由になるための技術」
入学後のオリエンテーションで、先生から以下の話がありました。
・基礎造形では、「観察力」「発想力」「構成力」の力をはぐくみます。
・各造形課題は、必ずどれかの力にひもづいています。
(複数の力を使いながら取り組む課題もあります)
どの課題も段階をおって授業がすすみ、先生のゆるやかな指示があります。
「自由にやってください」
こういったことは、一切言われません。
けれど、私は授業の中で何度も「自由さ」を感じました。
たとえば、「Prepared Drawing」。
これは「発想力」にひもづく課題です。
画材という「出力」側に制限をかける(=画材を自分で開発する)ことで、自分の制御の範囲外で対象物を描いていきます。
綿を使って、やかんを描いたり
ビー玉を転がしながら、頭像を描いたり
それぞれが画材を開発し
さまざまなチャレンジをします
このときの自分の思考メモが残っていたので、以下に書いてみます。
「自由に発想すること」は、言葉で言うほど簡単じゃない。
どうしても、「それって何のためにやるの?」「それって意味あるの?」と、目的や意味を考えてしまう。
目的や意味は、何かを実行していく上でとても重要だけれど、そればかり考えていると「発想のヒント」を見過ごしてしまうのかもしれない。
一方で、誰しもが自分の制御外に足を踏み入れられるよう設計されているこの課題では、目的や意味から離れざるを得ず、ある種「人が本当に自由になるための技術」を体得していることになるのかもしれない。
1年間の学びのノート
1年通ってみて「基礎造形とは、自由になるための技術なんじゃないか…」、そんな風に思いました。
「造形が、自分の見方をほぐす可能性」を伝えたい
よくわからなくても、まずは手を動かしてみる。
とにかく、やって、やって、やってみる。
分解したり、制限をかけたり、後ろや真横、斜め下から観察したり。
手で触って確かめたり、引っ張ってみたり、いろんなパターンを試してみる。
そして、クラスメイトと分かち合う。
こうした試行錯誤と、他者との対話を繰り返すことで、だんだんと自分のものの見方がほぐれていき、「つくる」「発想する」ことへの自信がつきました。
そしてその自信は、このnoteにもつながっています。
「もし、1年前の私と同じようなことを思っている人がいたら、その人に届くといいな」
そんな風に思い、記事を書きました。
ここまでご覧くださり、ありがとうございました。
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