NPO法人の「正味財産の部」

 NPO法人の活動報告の一端である、「活動計算書」「貸借対照表」
にある「正味財産」って何だろう?と思った方向けです。できるだけ専門用語を排して書いていきます。

意外と重要な正味財産の部

 正味財産の部は、資産の部から負債の部を差し引いた差額を示した部のことです。株式会社などの利益団体では純資産の部と呼ばれますが、別名称であることからして、純資産と正味財産とではその性質は大きく異なっています。

 株式会社では、初期の活動資金を賄うために出資を募ります。これに応募して払い込まれた資金と引き換えに株式を発行するわけですね。よく言われる資本金ウン千万円とかがそれです。そしてその資本金を元手に商品を仕入れたり固定資産を購入して使用したりして売上をあげ、利益を積みあげたものが資産と負債の差額として純資産の部に現れます。(資本金+利益剰余金)株式会社の純資産の部はここからさらに複雑になりますから、今回はこの程度に留めます。

 それに対して非営利型法人(今回はNPO法人に限ります)は出資者が居ないため資本金がなく、単純には差額全体が過去の利益を積み上げたものとして捉えられます。このことから、純資産は株式会社の、正味財産はNPOの体力を示すゲージとも言えます。

指定正味財産

 NPO自身の活動については寄付や、官民からの補助金助成金、限定的ながらも収益事業を行うことで収入を得ますが、その中でも一部の収入については「この活動専用」として使途を限定される寄付等を受けることがあります。
 使途を限定された寄付等を指定正味財産と呼び、正しく使われていることを計算書の注記として報告書へ記載し、所管の自治体へ報告することが求められます。

(実際の例)NPO法人しんぐるまざあずふぉーらむの2020年3月期の注記に記載された指定寄付金の内訳

通常の寄付であれば、下記の仕訳の通り寄付金を受領した時点で寄付金の収入に計上されます。
(現預金)   xxxx /  (寄付金収入)  xxxx

しかし、この使途が制約された寄付金等の収入がある場合、入金された時には寄付金収入とされず、目的に沿って寄付金が消化された時に寄付金収入に計上されます。

入金時
(現預金)          xxxx / (指定正味財産)    xxxx

消化時
(活動費)             xxxx / (現預金)                 xxxx
(指定正味財産)  xxxx / (寄付金収入)          xxxx
※寄付金収入ではなく寄付金振替額等の名称がつけられる場合もあり

 つまり上記例に当てはめると、当期増加額は入金、当期減少額は消化された金額を示すわけです。指定正味財産が出てくると、正味財産の部は先に述べたNPOの単純な体力ゲージではなくなり、体力ゲージ+特殊スキルゲージみたいな感じになります。

 この指定正味財産は「寄付者から預ったお金」の性格を色濃く持つため、現預金残高がこの指定正味財産の残高を下回ってはいけません。それは預かったお金を別の使途に使ったことを意味します。

 1年単位の年度でもらった寄付金を全て消化しきれる短期の事業であれば指定正味財産としないこともできるためあまり問題にはなりませんが、大口の金額が長期間にまたがる場合は、他の現預金と区別するために特別な口座なりを設けて管理運用することが望ましいと考えられます。

入金時
(特定資産)        xxxx / (指定正味財産) xxxx

消化時
(活動費)         xxxx / (特定資産)        xxxx
(指定正味財産) xxxx / (寄付金振替額) xxxx

 こういった基本知識を組み込んで計算書を読むと、見えなかったものが見えてきたりしますね。




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