立体✖️文字でコラージュ世界を描く
「『字は汚いけど絵は上手いね』と褒められて育ったんです(笑)。それなら、絵で世界一面白い字を描いてやろうと思って」
そう話すのは、イラストレータの勝倉大和(カツクラ ヒロト)さん。勝倉さんは、イラストと文字を融合させた作品を多く創作し、玄光社発行の雑誌「illustration」の誌上コンペで3度の入選を果たしています。
今回は、勝倉さんにこれまでの経歴や作品への思いについて、インタビューをしました。
勝倉さんはこんな人
東京都足立区出身。奥様と、8歳と4歳の男の子を子育て中のお父さんです。現在は、介護の仕事をしながら、年間約20作品の創作を行っています。企業や個人のお客様からのご依頼で作品を作ることもあれば、自身の体験や、読んだ本からイラストと文字を融合させて創作することもあります。
「作品が完成すると、まずは長男に見てもらうんです。『いいね』って言ってもらうと、もう最高に嬉しいですね」
「妻に見せて『もうちょっと明るい方がいいんじゃない』など、ちょっとしたコメントをもらったときは、描き直したりもします」
ご家族のお話をされるとき、素敵な笑顔を浮かべる勝倉さん。
コラージュ作品との出会い
勝倉さんがコラージュに興味を持ったきっかけは、小学生時代の友人が作ったコラージュ作品。
「富士山が描かれたポストカードに、雑誌から切り抜いた女性の写真を貼り付けられていました。富士山の後ろから大きな女の人が飛び出てるように見えて、非常に感動というか、こういうことができるんだって思いましたね」
学生時代とイラスト
小中学生の頃は、ノートに描いたイラストをご両親に見てもらって褒められたり、中学の卒業文集で表紙のイラストを担当したことが、思い出に残っているそう。
高校生の頃は、グラフィティアート(スプレーやペンなどを用いて、壁に描かれているアート作品)に魅了され、写真におさめることも多かったのだとか。
「高校の美術の授業でピーマンを模写したことがありました。そこで初めて絵の具でしっかりとものを描く経験をしたのが、印象に残っています」
高校の先生からの提案もあり、高校卒業後は創形美術学校イラストレーション科に進学。
「美術学校では、自分の画力についてものすごい挫折を経験しました。円柱の表現が特に描けなくて。例えば、上から見下ろした空き缶を描きたいと思っても、真横から見た表現になってしまったり」
イメージしたものを表現するためには、デッサンの基礎がしっかりしていないといけないと感じた勝倉さんはパースについて研究。遠近法の参考書を何冊も読みあさり、苦手な円柱をたくさん描いたそう。
「好きな作家さんの絵の模写をしたのが、上達への近道でした。その作家さんの絵は自分の2倍、3倍と細やかに描き込まれていて、ここまで描いて完成させているのか!? と体感できた事がとても大きな収穫でしたね」
介護職とイラストレーター、二足の草鞋
美術学校卒業後は、アーティストのアシスタント、家具職人、そして介護職と様々な職を経験した勝倉さん。
しばらくは、自分の表現したいものが定まっていなかったことや、あまり時間に余裕もなかったことから、ほとんど絵を描けなかった。
その後、現在も勤める介護の仕事に転職してからは自分の時間が作れるようになり、施設の利用者の方に似顔絵を描いたりと、少しずつ絵を描き始めたようです。
「介護の仕事で必要な資格を一通り取った後に、このままでいいのか? 本当にやりたい事は何だ? と自問しました。せっかく両親に美術学校の学費を出してもらったのに何か出来ることはないか、と考えるようになって」
そこで勝倉さんは、当時還暦を迎えた父にプレゼントのつもりで描いたバイクの絵を足立区の作品展に出展。すると周りからの評判が良かったことから、絵を描くことへの意欲が再燃しはじめます。
「父へのプレゼントは描いたけれど母にはどうしようと考えて。そこで、幼少期、楽しかった団地の思い出を絵に表現できたら良いのでは、と思って生まれたのが、『ケーキの団地』でした」
「10歳まで団地に住んでいたんですが、当時、団地を下から見上げながら、屋上がどうなっているんだろうって考えていて。もし、イチゴとか乗っててケーキになってたら面白いなと思っていたんです」
思い出の団地の風景と、小さい頃にワクワクしながら思い描いていたケーキのイメージを、大人になってから形にしたのがこの作品。
「作品が完成したあと、学生の頃に先生が話していた『ザ・チョイス』の公募の事を思い出しました。しかもちょうど審査員がイラストレーター界の大御所の宇野亞喜良先生で、これは出すしかない! と思い、初めてチャレンジしました」
「まさか準入選するとは思ってもいなかったので、入選の電話がかかってきた時は全身に鳥肌が立って、涙が溢れてきました。」
その後も、ザ・チョイスに応募を続けた勝倉さん。
サイトウユウスケ先生が審査員となった第218回では、「右」という文字とイラストの表現作品で準入選、さらに北澤平祐先生の第220回で「す」という作品で入選を果たします。
「この二人の先生方の評価が、今の私の絵の方向性に確信を持たせてくれました。文字とイラスト、とても楽しく描けています。その後も色々な場所で入選、入賞をいただけるようになりました」
勝倉さんの作品
文字とイラストを掛け合わせた個性的な勝倉さんの作品は、どうやってつくられるのでしょうか。
例えば、と教えてくれたのが、「アンネの日記」という作品。
「立方体を俯瞰してみると3面できるので、それぞれの面にアンネの3文字を入れました。配置が大まかに決まった後に物語に出てくる場面や物、人物を配置していきます」
「私のルールで、物語に関係ないものは描かないと決めているので、全て本の内容にあった物を配置しています。この作品だと日記、万年筆、本棚、などですね。実物をよく調べて描くようにしています」
現在、勝倉さんは、業界や団体の広告のメインビジュアルや、演劇企画のチラシのイラストの仕事を受注していて「今後は、書籍や電子書籍の装画の仕事にも取り組んでいきたいですね」と話していました。
2024年4月には、吉祥寺で個展と原宿で開催されるグループ展への出展が控えています。
今後の勝倉さんの活躍に目が離せません。
勝倉さん情報
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