ネコゴコロとヒトゴコロ その21
結構毛だらけ猫灰だらけ
映画『男はつらいよ』の主人公フーテンの寅さんの仕事は露天商(テキ屋)。今でいうと、テレビショッピングによく出てくるカリスマ実演販売士みたいな職業です。
劇中でも、寅さんが巧みな話術で品物を売りさばく、啖呵売のシーンがよく出てきます。例えば、こんな口上でお客の聞き耳を立たせてしまいます。
「結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻のまわりはクソだらけってね!」
こんな感じで、思わず笑ってしまう口上が次々と飛び出すので、寅さんの周りにはいつの間にか人だかりができてしまうのです。
それにしても“猫灰だらけ”って何でしょう?
今のようにエアコンやガスストーブが無かった時代のこと。室内の暖房器具といえば囲炉裏や炬燵、台所のかまどの炭火くらいのものでした。
寒がりの猫は人間が起きている間は炬燵や囲炉裏のそばにいればいいのですが、就寝時にはその火も消えてしまいます。そうなると、猫が暖をとれるのは、ぬくもりの残ったかまどの灰の中ぐらい。そこに潜り込んで寝るので“灰だらけ”になる猫がよくいたというのですね。
そんなことを猫がするかしらと思うかもしれませんが、現代でも野良猫たちは暖をとるために似たようなことをします。彼らのターゲットになるのは、例えば車のエンジンルーム。特に寒い時期、子育て期間中の野良の親子にとっては居心地のいい空間になるので、車のオーナーの皆さんは気をつける必要があります。知らずにエンジンをかけたせいで、痛ましい事故が起こることもありますものね。
まあ、猫たちにとっては、暖かい空間というのはそんな危険を冒してでも手に入れたいものなのでしょう。
温度の高い低いは人の心にも少なからず影響を与えます。
例えば、温かい飲み物が入ったカップを持っただけでホッとしてくつろいだ気分になった経験はないでしょうか。私たちは温かいものを持つと心まで温かくなったように感じますし、逆に、冷たいものを持つと孤独感を抱きやすくなることが心理実験でも確かめられています。
私たちの思考や行動は、無意識のうちに身体感覚の影響を受けているのです。それを心理学用語で『身体化認知』といいます。
実験では、温かいものを持っているだけで、他人を温かく受け止め、配慮や気遣いの精神が生まれやすくなることも確かめられています。
ということは、カフェで待ち合わせをした仕事相手といい人間関係を築きたいのであれば、注文する飲み物をホットにするかアイスにするかはおのずと決まってきますよね。
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