ネコゴコロとヒトゴコロ その8
特別扱いする
猫は人間の膝に乗って寝るのが大好き。でも、誰の膝でもいいというわけではありません。ちゃんと相手を選んでいます。
選ばれたほうもまんざらではありません。膝に乗られると、動けなくなるし、足がしびれることもあるしで、あまり快適とはいえないかも。それでも、家族の中で自分を特別扱いしてくれた猫が愛おしくて、そんなことは取るに足らないことになってしまいます。
猫のほうもそれを承知の上で、誰かを特別扱いしているのではないでしょうか。
『ハード・トゥ・ゲット・テクニック』という心理技法があります。hard to
getとは、入手困難なものという意味。これは、「あなただけが手に入れられる」「あなたにしか話せない」というように、相手を特別扱いするテクニックのこと。
「これは信用できるあなただから話すんだけどね」
「いいネタが入ったからコレ食べてみて、でも他の客には内緒ね」
このように囁きかけることで、“あなたは特別”だと相手に意識させるのです。
そんな風にいわれれば、いわれたほうもまんざらではありません。自分は相手から信頼されている、特別扱いされていると思えるからです。さらに、相手が自分を特別視しているということで承認欲求も満足させることができます。
猫は、このことを知ってか知らずか乗る膝を選ぶのです。選ばれたほうは選ばれたほうで「やっぱりこの子は私の膝じゃないと安心できないんだわ」と、この心理効果が働いて満足げだし得意げになってしまうというわけです。
注意点があるとするなら、この心理効果は双方の信頼関係の上に成り立つものであるということ。片方だけだとこの効果は期待できません。ですから、信頼関係がない相手から「これはあなただから話すんだけどね」と囁かれても嬉しくはないし、逆に「どうせみんなに同じようなことをいってるんでしょ」と、なんだか白々しく思えてしまいます。
猫って気まぐれに来客者の膝の上に乗ってくることがあります。互いに信頼関係はありませんから、乗られた客は驚きますし、なんだか気まずそうです。猫がそういうことをするのは、もしかしたら膝に乗ることで居心地を悪くさせて、その異分子を家から早々に追い出すための彼らなりの策略なのかもしれませんね。