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ネコゴコロとヒトゴコロ その29
猫をかぶる
前に『猫に名言』という本を出したとき、そのお披露目の会用に作ったのが写真の猫のお面。「猫をかぶる」という言葉があるし、来場の皆さんにかぶってもらえたら嬉しいし、会も多少は盛り上がるのではないかと考えて。
そもそも「猫をかぶる」ってどんな意味で、なぜ“猫”なのでしょう。
久しぶりに広辞苑を引っ張り出してみたら「本性を包み隠して、おとなしそうに見せかけること、また、そういう人」とありました。
でも、なぜ猫なのか。
猫は一見おとなしい動物として可愛がられているけれど、飼い主に従順な犬とちがって、時に手がつけられないほど狂暴になることがあります。飼い主にだって平気で爪を立てます。そんなところから、本性を隠しておとなしくしている様を「猫をかぶる」と表現するようになった模様。
なんにしても、「猫をかぶる」ってあまり良いイメージはありません。「あいつは猫かぶってる」といえば「見た目と中身は大違い」「腹の中では何を考えているかわかったもんじゃない」といった相手の二面性を非難する意味合いが含まれていますものね。
けれど、「猫をかぶる」こと自体は必ずしも悪いことではありません。
猫をかぶる人の得意技の一つに「作り笑い」があります。特別嬉しくもないのに笑顔を作ることをいいますが、心理学的にはこの「作り笑い」には思わぬ効用があることがわかっているのです。
その効果とは、うわべで笑顔を作っているうちに、いつの間にか心の底から楽しくなってしまうこと。
19世紀末、アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームスとデンマークの心理学者カール・ランゲが主張した『情動の末梢起源説』という 心理学理論があります。
いかにも難しそうな説ですが、これを簡単に言うと、 「人は楽しいから笑うのではない。笑うから楽しくなるのだ」という説です。
あなたにも以下のような経験はないでしょうか?
・飲み会で愛想笑いをしていたら、なんだか楽しくなって大笑いしていた。
・悲しいドラマを観ていて、思わずティッシュに手が伸びたとき、自分が泣
いていることを自覚して、途端に涙が止まらなくなってしまった。
・相手を注意するために怒ったフリをしていたら、本当に腹が立ってきた。
研究者2人の名をとって「ジェームズ=ランゲ説」ともいわれるこの説は、何らかの出来事に対してまず体が反応し、それが意識化されることで感情が生まれていくと考える理論。つまり、愛想笑いでもいいので笑っているうちに、楽しいという感情が生まれてくるということ。笑顔が板についてくるわけですから、「猫をかぶっているのでは」という疑惑も持たれなくなりそうですよね。
また、この効果を活用すれば、怒りの感情が心の中に渦巻いているときや無性に悲しいときでも、無理にでも笑っているとだんだんその怒りや悲しみの感情が薄らいでいきます。
昔から「笑う門には福来る」といいます。あなたもネガティブな気持ちを吹っきりたいときは、大いに笑いましょう。