島津製作所の防衛産業撤退は慶賀すべきこと。何で嘆くか?
これを一番初めに報じたのはダイヤモンドだったはずです。
「撤退方針がわかった」ではなく、具体的な道筋がついた、ということでしょう。
島津製作所、空自向け部品製造から撤退へ…低収益で防衛事業の継続困難
https://news.livedoor.com/article/detail/23123092/
>分析機器大手の島津製作所(京都市)が、防衛関連事業から撤退する方針を固めたことがわかった。
>航空自衛隊向け部品の製造などをしているが、開発費に見合う利益を期待できないと判断した。新規の設備投資を見送り、事業の譲渡先を見つけた後に撤退する。日本の防衛産業では事業の継続を断念する企業が相次ぎ、防衛力強化を掲げる政府の課題となっている。
>関係者によると、島津は一部の部品を一定期間分、作り置きした上で、生産を取りやめる考えを主な取引先に伝えた。人員配置を見直す措置も取っている。
>2022年3月期の航空機事業の売上高は223億円で、連結売上高に占める割合は5%程度。このうち8割が防衛省向けだが、営業利益率は0・5%にとどまっている。
コマツや住友重機と違ってバックレるわけではありません。これらの企業は長年にわたって他国より高いコストのクズを作ってきて税金を浪費してきました。それが将来への投資で、やがては世界先端の兵器をリーズナブルなコストで調達という将来が描けるのでったならば、それも無駄ではなかった。ですが、さんざん税金食い散らかして敵前逃亡したわけです。上場を取り消しても良いと思うぐらいです。
対して島津は十分なコンポーネントを生産するなり、事業譲渡するなりの手順を踏んでいます。であればそれは防衛産業の事業統合に繋がり、これまで蓄積してきたノウハウが霧散するわけではない。
例えば10億円の商売なら大企業にしてみれば鼻くそみたいなものですが、中小企業にとっては大きな仕事です。それに大企業みたいに大手町にある立派なオフィスを維持するような無駄なコストもないので低コスト経営が普通ですから、利益率は改善します。
ある意味、大手家電の技術者をアイリスオーヤマが雇って家電事業を行うようなイメージがいいでしょう。業界内にいるとその業界の非常識を「常識」と思い込んでいます。ですから外から来たニューカマーの方が合理的な経営をして成功する可能性が高い。
例えばニコンなんて潜水艦や装甲車両のペリスコープなんて事業譲渡すればいいんです。社内ではうちは平和企業だと嘯く人達が多いわけですから、被差別事業部で髀肉をかこうよりも、新しい会社に吸収された方が従業員も幸せです。何しろあれだけ世界に双眼鏡やスコープ売っていて、四本脚を撃つスコープはつくりますが、二本足を撃つスコープは作りません、軍用双眼鏡なんて作りません、という会社です。
こういう会社が惰性と、経営者の惰弱で防衛産業を続けることは納税者、株主に対する裏切りです。特に生保とか大手投資家は上場企業に防衛部門のやる気がないから、撤退を迫るべきです。その方が投資家にも利益があるはずです。
本来防衛省や経産省が音頭をとってこういう事業譲渡による、業界再編を指導すべきですが、両省ともその気も、当事者能力もない。
>防衛省の発注する装備品は原価に8%程度の利益が上乗せされているものの、材料費の高騰や為替の影響などで目減りすることが多い。一方で高性能な海外製の輸入が増え、国内での調達は減少傾向にある。山本靖則社長は読売新聞の取材に「無責任な撤退はしない」とした上で、「防衛省の予算がついても発注は増えない」と説明した。
これは誤解を招く書き方で、為替差益はある程度反映されています。それが問題ならば輸入品の調達なんて赤字だらけで成立しなくなって、商社は撤退しています。世界の防衛産業の取材経験がないと、相手の言葉(それが悪意がなくとも)鵜呑みにたり、誤解して記事をかくので、是非とも新聞社は記者クラブで電話番しているじゃなくて、世界の軍事産業の取材でもしたらどうでしょう。防衛記者クラブでもジェーンズとかシェパードとか海外軍事メディアを定期購読している人はほぼいません。カネがないならば記者クラブの図書費で買えばいいのですが、それすらしていません。勉強しないボケが記事書くんじゃねえ、とか思ったりしています。
>防衛関連産業では、同様に撤退を決める国内企業が相次いでいる。小松製作所は自衛隊車両の新規開発を取りやめ、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)も艦艇の建造から撤退。今年2月には、輸送機用ブレーキなどを製造する油圧機器大手のカヤバ(KYB)も、撤退方針を公表した。
こういう記事だと単に「撤退」しかわからない。コマツは新規開発どころか、今の調達すらやめます。だから防衛省は次期NBC偵察車の開発を水面下で進めています。取材経験と知識の蓄積がないから相手の言葉をそのまま記事にしてしまう。読者の新聞離れが進むのは当然です。
そして繰り返しますが、バックレて逃げた卑劣なコマツと、事業譲渡による事業統合で撤退する三井E&Sホールディングスでは同じ「撤退」でも意味が全く違うわけです。そこが本来この記事のキモになるべきですが、それを望むのはないものねだり、なのでしょうか。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自ご自慢の新型の19式155ミリ自走榴弾砲には試作には12.7ミリ機銃が搭載されていたが量産型でなくなったのは、C-2で空輸するというラノベみたいなファンタジー仕様にこだわったためで、将来RWSが必要になって搭載は無理、との噂。