噺家は噺家のやり方で愛を込める
引き続き昨日の「柳家小三治・三三 親子会」について綴ります。
この落語会は、柳家小三治師80歳の誕生をお祝いするためにお弟子さんたちがサプライズで開いた会です。
なので、小三治師はこれまで通りの親子会だと思っていたでしょう。
この会に参加したお客は、みなサプライズの「共犯者」ということです。
小三治師の前に高座へ上がったのは、柳家三三師。
何度か聴いて大スキになった師匠のおひとりだ。
「目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは無理をせず
人の心を見つめつづける 時代遅れの男になりたい」
(時代遅れより歌詞抜粋)
こんな雰囲気の噺家さんだと勝手ながらの印象です。
師匠の系譜を受け継ぐストロングスタイルだ。
親子会で、三三師はなんの演目をかけるのか気になっていた。
年末に関わる演目かなぁとか思いつつ、前日の独演会の演目をチェックしたりして。
マクラもそこそこに羽織を脱いで始まったのが
「火事息子」!
こんなあらすじ。
神田にある質屋の大店「伊勢屋」の若旦那は、子供の頃から、火事が大好きだった。それが高じて、実家を勘当された挙句、臥煙(がえん)という荒くれ者の火消しになってしまう。
実家付近が火事になって、若旦那が駆けつけ、両親と数年ぶりに、気まずくも嬉しい対面をすることになる...
勘当されても子は親を、親は子を想い続ける複雑な心情を描いた人情噺である。
ワタシも大スキな噺で、とてもシアワセな気持ちにさせてくれる。
三三師が、親子会で「火事息子」をかけたメッセージがあったんだと思う。
ワタシの勝手な解釈なんだけど。
それは、師匠への感謝と息子である自分を報告したんだと。
まだまだな息子だけど、がんばるよっとメッセージ。
面と向かうと照れくさいから、子が親を想い続ける気持ちを、この噺に込めたんじゃないかと。
だから噺家らしく、噺家にできる方法で伝えたんじゃないかと。
臥煙(がれん)の火消しになったしまったけど、若旦那は凛々しい大人になっていた様子は、まさに柳家三三という名人の凛々しさにピッタリだった。
まだ落語を聴き始めて半年ぐらいだけど、香る至芸がワタシの拙い想像を補ってくれた気がする。
ステキな高座に巡り逢えてよかった。
●柳家三三師について綴ったnoteもよかったらどうぞ