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ネットに漂うCDショップ ~ 天使のハンマー

今回のおススメBGM : Pete Seeger / If I had a hammer


私には姉が二人いて、上は五歳ちがい下は二歳ちがいで、そのどちらからもオンガクを聴く影響を受けた。
影響と言わないまでも、いろんなキッカケはもらったと思っている。

たとえばこのレコードは上の姉が聴いていたものを学生時代に断りもなく実家から持ち去り、我がものにして50年という一枚だ。

聴きつぶして年月が経ったこともあって、ジャケットも綴じ込みの歌詞カードもボロボロ。
いかにも年季を感じる。

ボブ・ディランやサイモンとガーファンクルはこのレコードで知った。
ディランの「風に吹かれて」でのシニカルな言い回しは、大人しい生ギターの弾き語りにもかかわらず強烈な印象を持ったことをよく憶えている。

だけどこのオムニバスアルバムのなかでイチバン心を奪われたのは、ピート・シーガーだった。

ことに、N・Yのフォーククラブ「ビターエンド」でのライブというこの曲には心のなかで熱い拍手を送った。
平和や愛や正義といった現代社会では手垢にまみれてしまったメッセージを高らかに彼が歌い、聴衆が陶酔して大合唱するというこれまた今では気恥ずかしくなるような空気に鳥肌が立ったものだ。
それが分かっていても今でも聴くたびに当時と変わらない高揚感に包まれるのはなぜだろう。

この歳で何を青臭いことをと思うが、ノスタルジーだけでなく単純にオンガクが商業主義にさらされてしまう前夜、という緊張した空気感をひしひしと感じるんだろう。
さらに自分にとって少しばかり時代的に後追いではあったが、ベトナム戦争反戦や公民権運動などに沸き立つアメリカの当時のムードが色濃くまとわりついていたからというのもあるだろう。

オンガクの力で世の中を変えていこうという、幻想めいたメッセージに酔いしれた若者たちの息づかいを懐かしく思う。

ネットにはいろんなバージョンがアップされているが、ぜひこれで聴いていただきたいので今回はおっせかいをしておこう。
⇒ https://www.youtube.com/watch?v=nCZuVCbp0r0


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