研究ノート 8割おじさん京都大学教授西浦博論文の懸念事項―私が査読すればアブストラクトだけでも一発リジェクト― 感染者数や死者数といった不確定要因の多い数値が、アブストラクトで示されているような狭い範囲で予測できることは、ありえない
8割おじさん京都大学教授西浦博論文の懸念事項
―私が査読すればアブストラクトだけでも一発リジェクト―
“8割おじさん”(京都大学教授の西浦博さんが「八割おじさん」と呼ばれる理由は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、接触機会を8割減らすことを提唱したからです)として知られる京都大学の西浦博教授らが発表した新型コロナワクチンの効果に関するシミュレーション結果が、2023年12月のNHKニュースで、大々的に報じられましたが、その研究結果は、新型コロナ対策として、ワクチンが有効に機能したことを示しており、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231203/k10014275951000.html
このシミュレーション結果の概要は、以下のとおりであり、2021年2月からの10カ月間について、人の移動状況のデータや変異ウイルスの性質、それにワクチンの接種状況などの要因を実際のデータに合致するよう数式化し、この数式を使って、仮に、ワクチン接種がなかった場合を試算すると、この期間の感染者数は、およそ6330万人、死者数がおよそ36.4万人に上るという計算結果になったということで、実際の感染者数の推計が、およそ470万人、死者数がおよそ1万人であったので、ワクチン接種によって35万人の命が救われたということになり、この西浦論文とは、
T. Kayano, Y. Ko, K. Otani, T. Kobayashi, M. Suzuki, H. Nishiura, “Evaluating the COVID-19 vaccination program in Japan, 2021 using the counterfactual reproduction number,” Scientific Reports, 13:17762 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-44942-6
で、この論文は、いわゆる、オープンアクセスのため、誰でも、無料で、読むことができ、複数の著者による連名の論文ですが、連絡先が西浦教授になっていることから、本論文のいわゆるcorresponding author、あるいは、責任著者は、西浦教授であると推察され、したがって、西浦論文と呼ぶこととし、この論文を批判的に解読・分析したのが、筑波大学の掛谷英紀准教授(NHKの映らないテレビ“イラネッチケー”の開発者としても有名)らの以下の論文で、
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2024.02.02.24302123v1
Unreliability in Simulations of COVID-19 Cases and Deaths Based on Transmission Models |
この論文を一般向けに解説したのが、以下の2編の動画であり、
・ ワクチンなしで36万人死亡⁉掛谷英紀氏が西浦論文へ反論!12月1日のやなチャン! https://www.youtube.com/watch?v=pZxRcv2hAyw&t=430s
・ 【第2弾】ワクチンなしで36万人死亡⁉掛谷英紀氏が西浦論文へ反論!2月14日のやなチャン! https://www.youtube.com/watch?v=EKKxvHh3qxA&t=2960s
西浦論文のアブストラクトでは、ワクチン接種がなければ、6,330万人が感染(95%信頼区間:6,320~6,360万人)、36.4万人が死亡(95%信頼区間:36.3~36.6万人)するとの予測が示されており、また、ワクチン接種が、2週間早ければ、死者が48%減少し、逆に2週間遅ければ、死者が50%増加する結果も示されていて、掛谷准教授らも指摘するように、感染者数や死者数といった不確定要因の多い数値が、アブストラクトで示されているような狭い範囲で予測できることはありえないので、私は、これまでに、多くの査読付き論文を投稿し、査読者と血みどろの論争を経験したこともあり、また、査読者として多くの論文をリジェクトしてきた経験がありますが、私がこの論文を査読すれば、ありえないような狭い信頼性区間が示されている論文は、これだけでも一発リジェクトです。