Trovatoreさんの質問「桜井先生は、かつて、材料試験炉という原子炉で1万回の炉心解析のジョブを投入されたそうですが、この原子炉は燃料要素の本数や配置は固定されているのでしょうか。原発では決まっているみたいです」「もし決まっていないとなると、安全審査は個別の配置ごとに行うことになり、そうなると膨大な数の配置の組み合わせが発生するので審査に1万年くらいかかりそうですが、どのように審査がなされたのでしょうか」への回答

2023年10月1日 18:43
Trovatoreさんからの質問
桜井先生は、かつて、材料試験炉という原子炉で1万回の炉心解析のジョブを投入されたそうですが、この原子炉は燃料要素の本数や配置は固定されているのでしょうか。原発では決まっているみたいです。
2023年10月1日 18:47
Trovatoreさんからの質問
もし決まっていないとなると、安全審査は個別の配置ごとに行うことになり、そうなると膨大な数の配置の組み合わせが発生するので審査に1万年くらいかかりそうですが、どのように審査がなされたのでしょうか。

回答
私が、炉心解析を担当したのは、1976-84年の8年間であり、炉心構成が変更したならば、安全審査を受けなければならないとしたら、材料試験炉のように、炉心の中心にある燃料領域の周辺には、200の照射孔に、50個のキャプセルが装荷されるため、いちいち、各種キャプセルの照射試料条件で安全審査を受けなければならないとしたならば、時間がかかりすぎ、仕事にならず、実際には、
・キャプセルに核分裂性物質が含まれる場合だけ、審査対象となり、
・燃料領域の制御棒は、定まった本数と配置であり、
・燃料領域の燃料要素の数と配置も定まっており、
・炉心構成を決め、炉心解析し、
すべてのキャプセルの照射条件を満たすような炉心構成にするため(軽水炉材料の高速中性子照射量や軽水炉燃料の発熱量など)、条件が満たされるまで、炉心変更し、炉心解析し直しますから、仮に、炉心構成が少しでも変更したならば、安全審査の対象になったならば、炉心構成と目的とする運転条件を定められた時間内に実現することは、不可能になり、実際には、安全審査の対象は、少なく、作業は、比較的効率的に、進展していたと思います。
注意しなければならないことは、最初の『原子炉設置許可申請書』の段階で、考えられるキャプセル条件をすべて記載し、審査に合格していれば、その後、申請範囲ならば、新たな審査の必要がまっくないかと言えば、そうではなく、一般論ではなく、具体的な記載と判断が求められる場合もあります。
材料試験炉部では、炉心解析する課室とキャプセル設計する課室が異なり、私は、炉心解析のみでしたから、安全審査の煩わしい手続きや役所とのやり取りとは、関係ありませんでした。
私は、臨界集合体を利用した炉物理実験を実施し、炉心構成を変更し、何度も実験しましたが、安全審査の対象になったことは、一度もありませんでした。
なお、上記の1万回のジョブと言うのは、炉心解析のみならず、炉物理研究の計算も含めての回数です。

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