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【シナリオ】あなたが消えない #2

登場人物

  • 佐倉亜季(20) 大学生

  • 鞠元優二(35) レストラン店長

  • 酒牧千鶴(22) レストランスタッフ

  • 石川海斗(24) レストランスタッフ

  • 佐倉真紀子(45) 亜季の母

  • 佐倉吉江(70) 亜季の祖母

  • 藍沢(58) レストランオーナー

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〇『ザ・シー&フラワーズ』・客席
  厨房やホールスタッフたちが集まり、
  優二と藍沢を囲んでいる。
藍沢「今日からここの店長をしてもらう、鞠元優二君です」
優二「鞠元です。よろしくお願いします」
  スタッフたちが拍手をする。
  千鶴が隣にいる亜季に向かって、
千鶴「ねぇー? 渋いでしょー?」
亜季「何歳なんですか?」
千鶴「35? まぁー、結婚してるけどねー」
亜季「ふーん」
  スタッフたちと話している優二を見る亜季。

〇亜季の実家・玄関(夜)
  亜季が入ってくる。
亜季「ただいまー」
   居間から真紀子が出てきて、
真紀子「お帰り。ごはんは?」
亜季「いらなーい。まかない、食べた」
   と、2階に上がっていく亜季。

〇同・亜季の部屋(夜)
  亜季が部屋に入ってくる。
  ベッドの上に倒れこむ亜季。
亜季「あーあ、疲れたー」
  亜季はベッドから手を伸ばし、
  机の引き出しを開けて、通帳を取り出す。
  通帳を眺める亜季。
  残高は30万ほど。
亜季「……全然足りないー!」
  亜季は、ベッドのサイドテーブルに通帳を置いて、布団をかぶる。
  通帳の下には、不動産情報誌がある。

〇『ザ・シー&フラワーズ』・事務所
  優二が事務作業をしている。
  ドアをノックする音。
優二「はい」
亜季「失礼します」
  亜季が、恐る恐る入ってくる。
優二「ちょっと、待って」
亜季「あ、はい……」
   作業を終わらせた優二が振り向く。
優二「はい? なんでしょう?」
亜季「実はシフトの件で……」
  優二、亜季の胸ポケットにあるネームプレートを見る。
優二「佐倉、さん?」
亜季「はい。バイトの佐倉亜季です」
優二「ごめん、まだみんなの顔と名前、一致してなくて」
亜季「いいえ」
優二「で、シフトの件って? 休み?」
亜季「いえ。できれば、増やしてもらえないかなって。平日は夕方以降、入れるので」
  優二、デスクにあるシフト表を手に取り、見ながら、
優二「調整してみるけど……。学生?」
亜季「はい!」
優二「じゃー、確認して伝えますね」
亜季「よろしくお願いします!」
  頭を下げる亜季。
亜季「(笑顔で)失礼します!」
  事務所から出ていく亜季。
  優二、手元のシフト表を見ながら、
優二「……佐倉、亜季」
  と、亜季のシフトを確認する。

〇同・休憩室(夕)
  亜季、千鶴、海斗が談笑をしている。
  そこに優二が入ってきて、
優二「佐倉さん」
  亜季、立ち上がり、
亜季「はい!」
  亜季に、シフト表を渡す。
優二「今月は、とりあえずこれで」
  亜季、シフト表を見て、
亜季「あ、ありがとうございます!」
優二「(微笑んで)じゃ、よろしく」
  と、休憩室から出ていく。
千鶴「シフト? どうしたの?」
亜季「増やしてもらったんです」
海斗「なんで?」
亜季「一人暮らし、したくて」
千鶴「へぇー。偉いね、亜季ちゃん。海斗も少し見習ったらー?」
海斗「俺は、実家でいいの! 楽だし……」
  言い合っている二人を横に、
  ウキウキしながら出勤日を確認する亜季。

〇同・客席(夜)
  ディナータイムの店内。
  亜季が張り切った様子で仕事をしている。
  その様子を優二が見て、微笑む。

〇亜季の実家・亜季の部屋(朝)
  亜季がベッドで寝ている。
真紀子の声「亜季―!」
  亜季が、もぞもぞと動き出す。

〇同・居間(朝)
  真紀子と吉江が、朝食を食べている。
  そこに、眠そうな亜季がやってきて、
亜季「おはよー」
真紀子「亜季? 今日もバイト? 勉強、大丈夫なの?」
亜季「うん。全然、大丈夫」
  亜季、ごはんと味噌汁を注ぐ。
  真紀子、朝食を食べながら、棚のカレンダーに目が行く。
  6月10日の日付に赤丸がしてある。
真紀子「あれ? 今日、亜季の⁉」
吉江「?」
亜季「え?」
  亜季もカレンダーを見る。
亜季「あー、いいよ。別に」
真紀子「……ごめん。今日、ちょっと遅くなるのよー」
亜季「だから、別に大丈夫!」
  亜季、朝食を食べ始める。

〇『ザ・シー&フラワーズ』・裏口(夜)
  亜季やスタッフたちが出てくる。
亜季「お疲れさまでしたー」
  亜季、バックからガラケーを出してみるとメールが届いている。
  メールは、真紀子からで、
  『亜季、ごめん! やっぱり、今日遅くなる! ホントごめんね!』
  亜季、平然と携帯をバックにしまい、
  空を見上げ、少し考える。
  そして、歩き出す。

〇コンビニ(夜)
  亜季がコンビニに入り、デザートコーナーで小さいショートケーキを
  手に取り、レジに向かう。
  店員がバーコードを読み取り、
店員「315円です」
   亜季、バックの中を漁る。
   財布がない。
亜季「ちょっと待ってください! あれ?」
   慌てる亜季。

〇『ザ・シー&フラワーズ』・裏口(夜)
  亜季が走ってやってくる。
  ドアが開いて、ホッとし、
亜季「よかったー」
  と、急いで中に入る。

〇同・更衣室(夜)
  亜季、自分のロッカーを漁り、財布を探す。
  ロッカーの下の方に落ちている財布を見つけ、
亜季「あったー!」
  と、財布をバックにしまう。

〇同・廊下(夜)
  更衣室から出てくる亜季。
  誰が残っているのか、辺りを見回す。
  そして、客席に向かう。

つづく

photo by Republica


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