地方財政あるある#20.地方交付税、いろいろ誤解されがち(地方交付税3)
日本三景、日本三大祭をはじめとする三大○○。しかし世の中にはまだ知られていない数多くの三大○○が存在するという。我が党はそれらを有権者とともに調査。そして日本人なら知っておくべき3つを選定。それが「新・三大○○調査会」なのであります。
-あー、それおもしろかったですよねー。
◆誤解1:ミクロとマクロの混乱
日本人なら知っておくべき「新・三大地方交付税の誤解」。一つ目は「ミクロとマクロの混乱」。まず、有権者の皆様に訴えたいのは、「実際の」財源不足分が地方交付税で補われるというのは大きな間違いであるということなのであります。
-いつまで続けるんですか?
ありがとう。しんどなってきたわ。
-でしょうね。
で、まじめな話。意味わかる?
-分かりません。って言うか、話が入ってきませんでした。
せやな。もう一回言うで。「実際の」財源不足分が地方交付税で補われるというのは大きな間違い、ということ。この「実際の」がポイントな。
-はい。
何度も出てくるけど、「普通交付税=基準財政需要額-基準財政収入額」。「需要額-収入額」と聞いて、「ああ、財源の足りない分が交付税でもらえるのね」と理解したらあかん、ということやねんな。
-なんか、確かに不足してる分が補われるとイメージしてしまいそうですね。
せやねん。でも違うってことは分かってくれるやんな?
-はい。前に基準財政需要額と収入額の計算の仕方を教えていただきましたし。
そう。需要額も収入額も、人口とか面積とか、あるいは道路の長さとか学校の数とかをベースに計算していて、基本的には実際に使った金額をベースにはしてないというところが最大のポイント。まずは、この大前提は抑えとかなあかんな。
-はい。
で、需要額も収入額も積み上げて計算するから誤解されやすいけど、よくよく考えれば当たり前のことやと思わへん? だって、各自治体が実際に使った金額をベースにしたら、使えば使うほど地方交付税額は膨らんでいくけど、各自治体に配分される地方交付税の総額、要は国家予算は有限なんやし。
-そうですね。
国家予算から見た地方交付税をマクロ、各自治体の積み上げ計算から見た地方交付税をミクロと言ったりするけど、ミクロの金額を積み上げてマクロの金額を求めるということではない、っちゅうことやね。あくまでマクロの金額を各自治体に配分する、その金額の計算がミクロ。そういう意味では、いい感じに配分されるように単位費用とか補正係数とかが綿密に決められてるってことやね。総務省の人、めっちゃ大変!
-ほんまですねえ。
◆誤解2:「交付税措置がある」という言葉
次いくで。2つ目は交付税措置にまつわる誤解。交付税措置って聞いて、ピンとくる?
-あまりピンと来ないですね。
そやんなぁ。実質公債費比率の話をしたときに、ほんのちょこっとだけ触れはしてんねんけどな。
これも地方交付税制度にからむ話なんやけど、地方債にはいろいろ種類があって、種類によっては借り入れしたらその一部を地方交付税として国が措置してくれる、っていう仕組みがあんねんな。「交付税バックがある」とか言ったりして。で、その返ってくる額のことを「元利償還金に係る基準財政需要額」と認識しといたらええかな。
交付税措置があるっていうのは、要は、交付税バックがあるってことやねん。
で、よく、国からの通知で「○○に係る経費は基準財政需要額に算入する」って書いてあるんやけど、そのことを「交付税措置がある」とか言ったりするんやけど、意味わかる?
-いや、ちょっと。。。
そっか。難しい話ちゃうし、ゆっくり考えたら分かるで。そしたら、基準財政需要額が増えると普通交付税はどうなる?
-増えます。
せやな。「普通交付税額=基準財政需要額-基準財政収入額」やしな。要は、さっきの通知は「○○の経費分は基準財政需要額に含めることで普通交付税を増やしていますよ」、もっと言うと「普通交付税で賄えるように担保しますよ」っていう意味やねん。これを略して「交付税措置がある」と言ったりすんねんな。
-なるほど。「基準財政需要額に算入する」っていうのと「交付税措置がある」っていうのは、同じことを言っているということがよく分かりました!
OK。じゃあ、もし君が財政課職員だったとして、事業課から「交付税措置があるから予算を付けてくれ」って予算要求で言われたらどうする?
-そりゃあ、国が財源を措置してくれるんだから、予算を付けるべきではないんですか?
ちっちっちっち。
-(来た!)
チッチキチー。
-(2回目・・・)
そない言われたら往生しまっせー。
-・・・。
・・・。
-違うんですか?
違う。なんでか分かる?
-いや、ちょっと分からないです。
ほんなら確認。そもそも地方交付税の趣旨は何だっけ?
-財政調整機能、でしたよね。
そう。①地方自治体の財政力格差を解消する「財源調整機能」と、②各自治体が一定水準の行政サービスを提供するために必要な財源を国が保障する「財源保障機能」。だから、地方交付税は一般財源?特定財源?
-一般財源です。
そう。だから、ある事業について交付税措置があったとしても、その事業に予算を付けるかどうかは別問題。特定財源じゃないし。
-なんか釈然としないんですが。
事業課の気持ちは分からんではない。けど、第一の誤解の話の繰り返しになるけど、普通交付税額の算出は実際に使った金額をベースにしてない、つまりある意味で機械的に計算するもの。基準財政需要額とか収入額とかって、国からすれば、各自治体にどう公平に各自治体に地方交付税を配分するかの理屈付けの計算に過ぎひんわけで。
-たしかに。
もちろん、国としても、その事業を交付税措置の対象にすることで、その事業をやってほしいというメッセージを込める場合もあると思うし、各自治体の財政課もそのことは意識はしておかんとあかんと思うで。でも、交付税制度の原則論で考えると、交付税措置があったからといって即その事業に予算を付けると判断してはダメと理解すべきやねんな。
-はい。
そもそも、そんなに国が政策誘導したいんだったら、交付税ではなく補助金制度の枠組みで自治体に財源を振るべきとも言えるしな。
◆誤解3:「財政力指数」という言葉
ほんで、最後3つ目の誤解。財政力指数の捉え方の話。財政力指数って何やった?
-財政力指数が1を超えると、普通交付税がもらえない。
素晴らしい。財政力指数が1を超えると、普通交付税が配分されず、要は不交付団体になるということやったね。で、求め方は覚えてる?
-えっと・・・。
残念! 財政力指数=基準財政収入額÷基準財政需要額。
-そうでした。すみません。
謝らんでええよ。めっちゃ理解は進んでると思うで。今は完璧に覚えてなくてもいいし。財政の話って、少しずつしか理解でけへんと思うねん。
それでや。この財政力指数が1を超えると普通交付税が配分されないことは分かったとして、財政力指数が高いというのは、財政が健全だということを示しているかどうか。どう思う?
-そうだと思いますが。いつものパターンでいくと、違うってことなんですよね?
お見込みのとおり。「財政力指数が高いこと」と「財政が健全であること」は、全くの別問題。雑誌とかでもたまに誤解されてる。で、なんでか分かる?
-えーと・・・。あっ!
分かった?
-多分。結局、何度も出てきた「普通交付税額の算出は実際に使った金額をベースにしてない」っていうことですよね?
お~、いいねえ。もうちょっと詳しく説明できる?
-えーと・・・。先輩の言葉そのままですけど、基準財政需要額とか収入額は、各自治体にどう公平に各自治体に地方交付税を配分するかの理屈付けの計算に過ぎないから、各自治体がどれだけのお金を使ったか、つまりは財政の実態は全然関係ないということですよね。
素晴らしい! その通り! 財政力指数は財政の健全性とは無関係。文字通り「財政力」はある程度示しているとも言えなくともないけど。実際、こんな話もあってな。
-財政力指数0.99でも財政非常事態宣言をしないといけなくなったりするんですね。
そう。だって財政力があると言っても、お金を使い過ぎたら健全ではないよね。
-そりゃそうですね。
要は、財政が健全であるというのは「身のたけに合ったお金の使い方をしている」っちゅうことやしね。
-分かりやすいです。
「財政力がある≠財政が健全である」ってことやね。ほんで、「財政が健全である≠行財政運営が“適切”である」ってことも忘れたらあかんね。
-はい。前に仰ってましたよね。
おう。たしか、将来負担比率の話をしたときとちゃうかな。
まぁ、(将来負担比率は)低いにこしたことはないし、健全化判断比率というぐらいやし、比率が低い方が財政的には健全と言えることは間違いない。でも、財政が健全であることと、行政財運営が「適切」であることはイコールではないということは分かるやんな。
っちゅうことで、今日は天一もびっくりのこってりした話やったね。今までの中で一番濃かったかもしれんな。
-たしかに、そんな気がします。めっちゃ勉強になりました。財政って奥深いですよね。
せやな。これでもだいぶ端折ってるんやけどな。
-そうなんですか。
せやねん。で、ここまで地方交付税の話をしたところで、ようやくいよいよ臨財債の話ができる。
-リンザイサイ?
臨財債。臨時財政対策債。
-なんですか、それ。
これまた深い深いになるし、また今度にしよか。
-はい。また、よろしくお願いします。
全然ええよ。
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