地方財政あるある#9.財政課と会計課、ごっちゃにされがち(支出負担行為・支出命令)
伝票の持っていき先が財政課だったり会計課だったりするのはなんでか、という話やったね。
-はい。
事務決裁規程を見れば財政課合議が必要かどうかは分かるけど、なんで財政課合議が必要な場面が出てくるのかというところが分かれば、イメージできるかもしれんな。
じゃあ、具体的に話した方がええかな。財政課合議の伝票って言って、まず思い付くのはどんな伝票?
-兼命令ですかね。
せやんな。消耗品とか買ったときの伝票やね。ちなみに、正式名称分かる? 「兼」って、何と何を兼ねてるん?
-えーと、支出負担行為と支出命令ですよね。
正解。じゃあ、支出負担行為って何?
-えーと。支出を負担する行為。。。
まあ、そう言うしかないわな。一応、地方自治法の定義を抑えとこう。
(支出負担行為)
第二百三十二条の三 普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(これを支出負担行為という。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。
じゃあ、支出命令は? 誰から誰の命令?
-考えたことなかったです。普通に考えたら、命令されるのは会計課ですよね。
せやね。正確に言うと、命令されるのは会計管理者。で、命令するのは首長。
(支出の方法)
第二百三十二条の四 会計管理者は、普通地方公共団体の長の政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができない。
2 会計管理者は、前項の命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない。
今さらかもしれんけど、支出負担行為と支出命令の関係を確認しとくな。
ちなみに、会計管理者が支出負担行為に関する確認を行う旨の規定は、別の条文にもあったりすんねん。
第百七十条 法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、会計管理者は、当該普通地方公共団体の会計事務をつかさどる。
② 前項の会計事務を例示すると、おおむね次のとおりである。
六 支出負担行為に関する確認を行うこと。
前提の話が長くなってもうたな。で、会計側で法律の定めもあって伝票をいろいろ確認せなあかんというのはなんとなく分かったとして、じゃあ、財政課合議となっている伝票があるのはなぜか、という話。さっき、財政課がどういう伝票チェックをしているかって話したよね?
-はい。5つほど仰ってました。
①伝票の内容に間違いがないか
②予算で認められたとおりのお金の使い方をしているかどうか
③予算編成とかで言ってたことと違う動きをしてないか
④イレギュラーなことが起こってないか
⑤監査とか市民さんの情報公開に耐えられる内容になっているか
そう。このうち、財政課合議の趣旨は②③④と言っていいと思う。で、思いつくままにしゃべったからアレやけど、③④って、②と同じこと言ってるよな。
-たしかに。
で、この趣旨からすると、財政課合議が必要なのは支出負担行為で、支出命令は財政課合議は要らんってことになるの分かる?
-分かったような、まだ分かってないような。
そうねぇ。財政はお金の使い方を意識していて、会計は財布の開け閉めを意識しているというイメージかな。
-ああ、なるほど。分かりやすいです。
支出命令は、支出負担行為が確定している前提で財布からお金を出すことを命令するわけやから、お金の使い方を意識する財政課としては支出負担行為の段階でチェックしていればOKということになるわけやな。
-はい。
ちなみに、この財布の開け閉めのことを出納(すいとう)って言うねんな。お茶入れそうになるけど。
-???
キミ、それは水筒(すいとう)や。
-・・・。
で、兼命令は支出負担行為を含むわけやから、財政課合議は?
-必要です。
そう。ほんで、財政課と会計課がごっちゃになる理由なんやけど、財政課の方で会計課視点の疑義も見てしまうということやねん。たとえば、今回の検収日が抜けているという例は、どちらかというと「本当に財布からお金をだしていいか」という判断なので会計課視点やねんな。財政課のチェックは会計課に回る前に伝票を確認することになるから、「①伝票の内容に間違いがないか」に会計課視点も含んでまう。だから、原課は財政課と会計課の棲み分けが分かりにくくなるんとちゃうかな。
-なるほど~。
ちなみに、伝票の間違いってのはある程度、類型化できると思うねん。
■手続要件
・決裁権者、合議先に漏れや誤りがないか
・請求書が添付されているか
・検収証跡があるか
・日付の整合性がとれているか(契約日≦検収日≦請求日<支払日)
■支払内容
・金額は請求どおりか
・支払先に誤りがないか
■予算科目の正当性
・予算事業に誤りがないか
・予算科目(節など)に誤りがないか
ちょっと回りくどくなってもうたけど、せっかくやし、あまりに基本的な事務の内容やったし、法的根拠を確認しておいた方がええかなと思って、話長なってしもうたわ。
-いえいえ。いつも勉強になります。ありがとうございます。
言っとくけど、本来的には財政課のチェックは間違い探しが目的じゃないからな。繰り返しになるけど、予算で認められたとおりのお金の使い方をしているかどうか、監査とか市民さんの情報公開に耐えられる内容になっているか、加えて、もっと効率的なお金の使い方がないのか、たとえば本当に特命随契しないといけないのかとか、そういう観点で見てるしな。他にも、予算と執行状況の乖離状況を見て、次に打つべき手を考えたりもしてたりすんねんな。
ちなみに、財政課と会計課がごっちゃになりがちなことがもう1つあってな。決算って、どこが担当か知ってる?
-財政じゃないんですか?
ちゃうねんなあ、これが。決算は会計課の仕事。
-そうなんですか。
ま、この話はまたの機会にしよか。
-はい。今日も長時間、ありがとうございました。
全然ええよ。
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