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■実践 シナリオ・プランニング -不確実性を「機会」に変える未来創造の技術

新井宏征さんの著。ご縁いただきまして、出版前にABDに参加させていただきました。

VUCAの時代、「組織も人材も環境変化に柔軟に対応できるようにするには?」という問題意識に対するメソッドとしてシナリオ・プランニングを紹介するものです。

そもそもシナリオ・プランニングとは。同書では「設定したテーマにおいて起こり得る不確実な未来の可能性に備える対応策を検討する。さらに、このステップをくり返すことで、未来の捉え方をアップデートし続ける取り組み」と定義されています。

具体的な手法は本書をお読みいただくとして、この考え方の重要なところは「アップデートし続ける」なんだろうと思います。環境変化に柔軟に対応できる個人の特徴として、帚木蓬生さんの言葉「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉を引きつつ、「①不確実性に耐える」ということが挙げられています。15年ほど前だったか、上司に「お前は“気持ち悪さを持て”」と言われたことを思い出しました。その時はピンと来ていなかったのですが、スグに答えや解決策を導き出したい性分を見抜かれてのことだったのでしょう。今さらながら、沁みる言葉です。

ちなみに、環境変化に柔軟に対応できる個人の特徴として、他に「②変化を起こすために責任を持って行動しているエージェンシー)」「③自分のパーパス(≒価値観)を大事にしている」が挙げられています。②はやや厳しめに聞こえますが、③も合わせて見ると勇気づけられているような気持ちになります。

一方、環境変化に柔軟に対応できる組織の特徴は「①それぞれのメンバーの思考の“違い”を活かしている」「②常に“実験的”な態度をもって行動している」「③組織のパーパスを重んじている」。しれっと書きましたが、どれも1つで1冊の本が出来上がりそうなもの。自身の経験から特に②はとても興味深いです。元システムエンジニアとして“アジャイル開発”の文脈で、よく“失敗は許されない”と言われる行政に身を置く者としては“計画行政”という文脈で、掘り下げたくなるところです。

このような組織・人材の実現を阻害する要因としてどのようなものがあるか。本書では、①進みすぎた標準化(慣例・前例の墨守、減点主義等)、②進みすぎた構造化(仕事の無反省な自動継続、役割分担等の固執等)、③コミュケーションの平板化(仕事に関する会話の消失、現場情報の軽視等)、④興味・関心の行きすぎた内部化(「あきらめ」の姿勢の定着等)が挙げられています。どれも“あるある”な光景で、首がもげそうです。

他にも「論理的に正しさが証明できないようなものでも、それに取り組むことで、将来、幸せな状況が想定できるのであれば、それを選ぶのがよい」など、数々の箴言もあり。内容充実、盛りだくさんな一冊でした。

◆こんな人におススメ
VUCAと何それ?な方。
※VUCA…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった語。先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態のこと。

#書評というほどでもない書評


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