■13歳からのアート思考
アート思考?
本書のサブタイトルには“「自分だけの答え」が見つかる”とあります。
一体どういうことなのでしょう?
この本は美術やアートの教科書ではないのですが、美術史に多少の関心がありましたので、ざっくりレジュメにしてみました。
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1.アンリ・マティス「緑のすじのあるマティス夫人の肖像」(1905)
[問]「素晴らしい作品」とは?
・カメラの登場→「美=写実性」への懐疑
2.ピカソ「アビニヨンの娘たち」(1907)
[問]「リアルさ」とは?
・脱「写実性」
cf.遠近法=「半分の真実」、人間の錯覚
3.カンディンスキー「コンポジションⅦ」(1913)
[問]アート作品の「見方」とは?
・脱「具象物」
4.マルセル・デュシャン「泉」
[問]アートの「常識」とは?
・アートの思考化(視覚から思考へ)
cf.曜変天目(南宋)に対比する黒楽茶碗
5.ジャクシン・ポロック「ナンバー1A」(1948)
[問]私たちの目には「なに」が見えている?
・アートと「イメージ表現」との分離
(「絵画はただの物質」としてもアートとして成立)
cf.2歳児が描いた絵は何かをイメージしているものなのか?
6.アンディ・ウォーホル「ブリロ・ボックス」(1964)
[問]そもそもアートとは?
・脱「オリジナリティ」
・アートと非アートの境界の溶解
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内容的には、これだけでも十分楽しめました。
が、アート思考のお話ができていませんね。
筆者は、これらの6つの「アート作品」を通じた問いから、アート思考とは以下のようなものだと結んでいます。
「興味のタネ」を持ち、「探究の根」をはり、「表現の花」を咲かせることが大事なんだよ。
常識や正解を疑わずに「表現の花」ばかり「模倣」していては、「自分のものの見方」は育たないよ。
だから、興味をもつこと、そして興味を持ったら探究すること、その上で表現することが「自分だけの答え」なんだよ。
そして、その答えの良し悪しなんて気にしなくていいんだよ。
そんな強くも優しいメッセージを送ってくれている本でした。
もう1つ興味深かったのが「アウトプット鑑賞」のお話です。
何がおもしろかったと言うと、自分がアートを鑑賞するとき、思った以上に「事実」を観察できていないということに気付かされたところです。
そういえば、アートに限らず、何事においても「観察」が大事とよく言われますね。
そういう観点でも、この本を通して感じるところがありました。