地方財政あるある#26.原課にめっちゃ資料要求しがち(予算要求)
あー、いややわ。今年もこの時期か。
-予算の時期ですね。
そう。当初予算編成。またマトモな時間に帰れへん日が続く。憂鬱やわ。
-忙しさの折れ線グラフがえらいことになってましたもんね。
事業課の「要るものは要る」と財政課の「無いものは無い」「無い袖は振れない」の不毛な対立の時間な。
-不毛・・・。
不毛やで。だってその時間、何も産み出してないやん。その月100時間を超える残業時間とか時間外手当、もっと市民さんのために使った方がよくない?
-たしかに。
もっとも、全ての時間に時間外が付けられてるかどうかっちゅう話もあるけど。
えーっ!
-ま、それはさておき。「もっと予算があれば、もっといろんなことができて、市民さんへのサービスが向上できるのに!」っていう事業課の気持ちも分かるねんで。でも、大事なことが忘れてませんか、と。
-大事なこと、と仰いますと?
いろいろあるんやけど、どこから話しよかな。
◆リソースは有限 ~そもそもできるの?~
繰り返しになるけど、無い袖は振れへんのよ。
-さっきも仰ってましたね。
何度も言うよ、残さず言うよ。
-どっかで聞いたことあるフレーズ・・・。
で、財政課が何をするかと言うと、無駄がないか、費用対効果的にどうか、他にもっといい手段はないか、本当にこのタイミングでやらないといけないのか、政策的な優先順位はどうか、議会で説明がつくような内容なのか、、、とかとか、いろんなことを考えて、歳出を切り詰めて、なんとか見込める収入の枠内に収めようとすんねんな。
よく「財政課が予算を切る」と言われるけど、別に好きで「切って」るわけじゃなくて、無い袖は振れない、ただそれだけのことなんやけどな。新たにお金がかかることをするんやったら、他に削るところをちゃんと考えてほしいわ、ほんま。別に財政課が商売をしてカネを稼いでくるわけでもないんやし。
要は財源、お金というリソースは有限っちゅうことやな。
-はい。
でも、それだけちゃうねん。
-え?
リソースって、お金だけ?
-よく、ヒト、モノ、カネ、情報って言われますよね。
そう。ほんで、特にヒトのことも考えてほしいねん。
-と、仰いますと?
カネが確保できたとしても、財政課的にはヒトの確保はあずかり知らないところ。カネを確保した分増える仕事は本当にやり切れるのか、そんなことも考えなあかんと思うねん。
-まあ、そうですねえ。
もちろん、より幅広く行政サービスを展開するという気持ちは大事やと思うし、立派な心掛けやと思う。でもや。行政職員の数は増えへん。やることは増える。残業も増えてる。これ以上、仕事できるか?
-そうですね。
せやから、何か新しいことをやるときは、代わりに何をやめるかとか、事業を統合するとか、そういう発想が大切やと思うねんな、経済成長が右肩上がりでイケイケドンドンという時代はとっくに終わってるし。
-そうですね。優先順位付けが大切ってことですね。
せやな。
-でも、優先順位って、決めるの難しくないですか。どうやって決めればいいんですかね~。
確かに難しいところやな。でも、それをよく知ってるのは財政課じゃなくて、市民さんに最も近い事業課やし、事業課こそ、しっかり考えてほしいところやな。
◆説明責任 ~そもそも予算要求とは?~
そうは言っても、やっぱり事業課はいろいろ事業をやりたいという気持ちは分かるし、歳出予算要求額が、歳入予算額、要は見込まれる収入の金額内に収まることなんてことはまず無いから、いっつも言ってるように、歳出を切り詰めて、なんとか見込める収入の枠内に収めるという作業工程が必要になってくるわけやな。これが世に言う予算編成。
-はい。
というわけで、予算編成は事業課から予算要求書が財政課に提出されることから始まりまる訳やけど、その後のことを想像したことある?
-いや。って言うか、予算要求に携わったことがないので。。。
そっか。まだ若いもんな。じゃあ、「財政課に予算切られた」って、どこかで聞いたことある?
-はい。なんとなく耳にしたことはあるような気がします。
ほな、その「財政課に予算切られた」の意味するところを見ていこか。
ざっくり言うと、こういう流れ。自治体規模によって、刻み方は違うかもしれんけど。
①事業課から提出された予算要求書を見て、まず財政課で要求誤りなどがないかを確認した上で、予算要求の内容について必要性や妥当性を精査する。
②その結果を財政所管部長に報告し、さらに予算要求の妥当性について検討を加える。(一次査定、部長査定)
③その結果を、財政所管部長から市長に説明をして、最終、市長が予算要求を認めるか認めないかを判断する。(市長査定)
④この予算査定、予算編成のプロセスを終えて、結果を予算議案として議会にお示しし、その議案が承認されて初めて、予算として執行できるものとなる。
-はい。だいたい分かりました。
この流れが分かれば、予算要求とは何かということが見えてくるはずやねんな。
第一の意義:査定者への説明資料、査定者の判断材料を提供するもの
第二の意義:市民の皆さまに理解、納得をいただき、承認を得るための情報を提供するもの
単に「これだけのお金が必要」という、まさしく「要求」するだけではアカンということやな。
-そうですね。
そう考えると「財政課に予算切られた」ってよく言われるけど、本当にそうなんやろか。さっきの2つの意義で言ったことが、予算要求書で表現されていたんやろか。要は、説明責任を十分に果たした上で「財政課に予算切られた」って言ってるのか、改めて考えてほしいっちゅうところやな。
◆自分のお金の使い方として許せるかどうか
-「財政課が資料をめっちゃ要求してくるのがめんどくさい」って誰かが言ってましたけど、それって裏を返せば、説明責任を十分に果たせていないということだったんですね。
そう! もちろん現場が多忙を極めてるのは重々承知してるけど、予算要求時点で十分な情報が集まってなかったら、結局、後にその不足している情報をヒアリングで集めることになって、財政課の残業地獄につながるわけやねんな。
-そうですね。
そしてその残業代は、基本は市民の皆さまからいただいた税金。サービス残業ってパターンもあるけど。こういう状況が全国の自治体で常態化してるという状況を、どう考えるかってことやで。
-たしかに不毛ですね。サービス残業って言うのは、ちょっとアレですけど。。。
やっぱり不毛やね。何も産み出してへんし。極論、財源の調整をしてるだけで、市民サービスを産み出しているわけでもないし。その残業代、あるいはその時間を市民サービスに振り分けた方がいいと思わへん?
-さっきも仰っていましたね。
と、まあ財政課の愚痴みたいになってしもたけど、行政ってどうしても、お金にルーズになってしまう「構造」があると言われてんねんな。
-構造、と言いますと?
行政の仕事は「他人のお金を他人のために使う」というところやね。自分のお金やったら少しでも節約しようと思うし、自分のために使うんやったら少しでもいいものを得ようとするもんな。
-たしかに。
せやから、さっき、説明責任みたいな難しい言い方したけど、「自分のお金の使い方として許せるかどうか」っていう感覚が大事ってことやね。だって、市民さんから見たら、納めた税金は「自分のお金」やしね。
-たしかに! ところで・・・
ん? どうした?
-予算要求するときには、さっき「査定者への説明資料、査定者の判断材料を提供する」とか「市民の皆さまに理解、納得をいただき、承認を得るための情報を提供する」という意識とか、「自分のお金の使い方として許せるかどうか」という感覚が大事というのは分かったんですが、なんか抽象的というか。もう少し具体的にイメージしたいな、と思ったんですが。
なるほど。要は、どんな視点で予算査定、予算編成を進めているか、具体的に知りたいってことやな。今日はだいぶ長なったし、また今度、そこら辺の話しよか。
-ありがとうございます。
全然ええよ。
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