今日、大阪市の未来が決まる

小学生のころ、両親が商売をやっていて大阪市内に住んでいました。

大阪市にはいい思い出と忘れたい記憶とが売るほどあります。
家族4人、六畳一間で暮らしていたこともありました。

学校では精一杯見栄をはり、「ええとこの子」に見せようとしていましたが、家に帰れば寝床は弟といっしょに押入れのなかです。

親の商売がうまくいっているかどうかくらいは子ども心にもわかるから、母親の「清美、あんたは勉強せなあかん!」という言葉を切実に受け止めていました。塾に行くお金がなくて、教科書を丸暗記して臨んだ中学受験。抽選で落ちたときには、悔しくて絶望して環状線で泣き続けました。

でも大阪のまちは優しかった。

私たち姉弟を実の子どものようにかわいがってくれた近所のおっちゃんおばちゃんたち。みんな生活厳しいのに、しんどさを笑いに変えて日々を生き抜いていく力を教えてくれました。

私はその複雑で、優しくて、おもろい大阪がやっぱり大好きなんです。

そんな大阪の未来が今日決まります。

私は、ええことばかりいう人は気をつけた方がいいと思っています。世の中はそんなに都合よくできていないということは、小学生の私だって感じていました。だから、「大阪市をなくせばバラ色の未来」としか聞こえない松井さんや吉村さんの主張には、身構えて警戒してしまうのです。

気いつけなあかん、中身もわからんのに、契約書にハンコついたらあかんと。

大阪はお好み焼きみたいなまち、いろんな人がまじりあって支えあうまち。
だから、弱い人は置き去りにされてひとつの方向性に強引にもっていかれそうな気がする「大阪市廃止」にはやっぱり反対です。

でも、賛成を投じる人の気持ちも痛いほどわかります。
どうすればもっといい明日があるのか、みんな考えて、もがいているから。

今日どんな投票結果が出るとしても、賛成・反対はきっと拮抗するはずです。どっちが否決されても、どっちも半分。届かなかった半分の人たちの思いを切り捨てることはあってはいけません。

行政には、「一票差でも勝ちは勝ち」とごり押しするのでなく、この住民投票で市が分断されないように、大阪市民の気持ちを丁寧にまとめていってほしいです。

ある日、82歳になるうちの親が「ヒョウ柄着ていけ」と言うので借りてきました。梅田の最後の演説の聴衆の中には母の姿もありました。やっぱり、ヒョウ柄のインナーを着ていました。

かつて、大阪は空襲で焼け野原になりました。
そこから立ち上がってきた大阪をつぶしたくないと願っている人はうちの親だけではないはず。

大阪市民のみなさん、今日の投票にぜひ行ってください。
そしてご自身の思いを、一票に込めてほしいと思います。

2020年11月1日
衆議院議員 辻元清美

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