ラッパーに憧れて、はじめてブレイズにした日の話。
10代の頃、特殊ヘアーが好きだった。
いわゆるドレッドとか、アフロとか、そういった特殊な髪型。
実際に10代の頃は若気の至り金髪やチリチリのツイストパーマにしていたし、ヒップホップが好きなので、そういったファッションやカルチャーに憧れを持っていた。
でもずっとできていない、やってみたい髪型があった。
それがブレイズだ。
(※ブレイズとは、小分けにした毛束を細かい三つ編みにしたヘアスタイル。)
しかし、そういった特殊ヘアにするには、それなりにお金がかかるし、できる美容院も限られている。
当時は学生でお金もない。
ノリでやるには少々高額だ。
流石に躊躇して、気付けば数年が過ぎていた。
そんな時、ブレイズにするタイミングが訪れた。
20歳。人生の中でも大切なイベント。成人式がある。
ここだ。このタイミングでやるしかない。
実行する日を成人式に合わせた1月と決め、まずはブレイズにするために髪を伸ばし始めた。
数ヶ月、何も考えず髪を伸ばしていたので非常に気持ちの悪い髪型になっていたが、まぁそれはいい。憧れのヘアスタイルのために我慢は必要だ。
友人にも「髪なに?キモいから切れよ」と言われたがそれもいい。憧れのヘアスタイルのために我慢は必要だ。
とはいえ多少毛先だけでも整えようと思って行った美容室では、
「ブレイズのために伸ばすのはいいけど流石にキモいからパーマかけとく?」
と言われたがそれもいい。憧れのヘアスタイルのために我慢は必要だ。
でもキモいからパーマはかけた。
そして成人式前のバイトが休みの日に、私は数万円を握りしめ、鎌田に向かった。
肌色よりタトゥーのインクの面積の方が多いお兄さんに席に案内される。
少し緊張する。
「あ、あの、予約してたブレイズにしたいんですけど。。。」
「あ、オッケー、髪の長さ微妙だね。エクステ何色にする?」
いやエクステつけれるのかよ。じゃあなんでこんなキモい髪型で数ヶ月過ごしたんだよ。
「あ、じゃあおすすめで」
「りょーかい。じゃあ在庫余ってるからこれで。」
正直なお兄さんが髪を編み始めた。
とにかく手の動きが早い。見る見るうちに髪が編み込まれていく。
「ちょっぱやっしょ〜」
うん、たしかにちょっぱやだ。まごう事なきちょっぱやである。
憧れだったブレイズはあっという間に完成した。
「成人式楽しんで!また来てくださーい。」
そう言われて店を後にする。
おぉ、すごい、これがブレイズ。
少々頭皮が引っ張られて痛いが、そんなことは気にならないほど気分がいい。
BADHOPにも加入できそうな勢いだ。
アナーキーとフューチャリングできそうな気持ちだ。
まさにI'm A Rapper。
帰り際、バイト先の居酒屋に寄り、友達や先輩に髪型を自慢する。
近くにいた友達を呼んで、髪型を自慢する。
地元の友達にわざわざ迎えに来てもらい、髪型を自慢する。
いい気分だ。
帰りにもう一つのバイト先であったコンビニに寄った。
流石にブレイズのコンビニ店員は見たことがないので、申し訳ないがしばらくシフトを入れていなかった。
店長が「髪似合ってるね」と褒めてくれた。
「似合ってるからその髪のまま普通にシフト入っちゃっていいよ」と言われた。
私が嫌なのでそれは断った。
何はともあれ、憧れの髪型にできた。大満足だった。
成人式当日の話は割愛する。
が、頭が痒すぎるので、私のブレイズ生活は成人式の翌日に幕を閉じた。
少し寂しい気持ちもあったが、イケてる髪型でたくさん写真が撮れたのでよしとする。
あと、ブレイズを解いた後のシャンプーより気持ちのいいシャンプーはない。これは決まっている。
10代の頃は、髪を染めたり、特殊ヘアに挑戦していた人も、社会人なってしまえば全員整髪料で整えた黒髪以外の選択肢がないと思っているだろう。
ただ私はタイミングがあれば、次はドレッドにするつもりだ。
アナーキーのように、運命に逆らうので。
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