「すいません、空調下げれます?」って言う人。

ファミレスや居酒屋の温度が緩かった時、もしくは暖房が効きすぎていた時、店員さんに言うことのあるセリフだ。

私はあまり言うタイプではないので、こういったことを言える友人は尊敬している。

学生時代、みんなで居酒屋やファミレスなどに行くと、必ずと言ってもいいほど
「すいません、空調下げれます?」
と、言う友人がいた。

いやまぁ確かに暑いなというタイミングで言ってくれるので実際助かってはいた。

ただ、毎回言うので、私が店員なら間違いなく裏で「空調」というあだ名をつけていたと思う。

人当たりもよく、コミュ力の高い友人なので決して不快な言い方はしない。
嫌な言い方でもないので、多分暑がりなだけだったと思う。

ある日みんなでお台場のスポッチャに遊びに行った。
仲の良い10人ほどの大人数で行ったのもあり、スポーツが大の苦手の私でも大汗をかくほど楽しんだ。

余談だが、なぜ大人になると
遊ぶ=呑みに行く
になるんだろうか。たまにはまたみんなでスポッチャにでも行きたい。

サッカーやバスケ、ローラースケートなどを一通り楽しんだ後、せっかくなのでダイバーシティで買い物をすることになった。

しかし暑い。
冬だったため、室内は暖房がガンガンに効いていて、ヒートテック一枚で歩きたいくらいだった。

「あちー」
「あ、おれ帽子欲しいわ、ニューエラ行こ。」
「あついあつい」
「アイス食わね?」
「だれかダウン持ってて」

とにかく暑い中、ダイバーシティを歩いていると、ついにあの男が動き出した。

「あ、ちょっと待ってて」

向かった先はショッピングモール内にある「information(案内所)」だった。

そこで彼はいつものように言う。

「すいません、空調下げれます?」

受付のお姉さんはポカンとした顔で私達を見た。

別の友人がすかさず言う。
「すいません、なんでもないです。」 

「いや無理だろ、ファミレスじゃないんだから」
「恥ずかしいからやめてくれ」

突拍子もない発言に私達は笑っていた。
「空調」は少し恥ずかしそうにしていたが、彼は至って真剣に「言ってみなきゃわかんないだろ!」と返した。

私はこの出来事を今でもたまに思い出し笑いしている。

ただこの出来事があってよかった。

「言ってみなきゃわからない」

今思うと確かにその通りである。
社会人になって、客や上司の言いなりになってばかりの我々だが、彼らだって人間だ。
もしかしたら、言ってみたら案外話のわかる人かもしれない。
だから私は、このマインドを常に大切に持っている。

高校時代の彼の行動に、今になって学ばされたのである。

ただとりあえず、今年の高校の友人との忘年会では、温度調整がしやすい服を着てきた方がいいと思う。

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