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ペールピンクのままに

オペラという派手派手な透明水彩絵の具のピンク。それを水で薄く薄く溶いていくと、柔らかな優しいピンクが生まれる。

そのピンクは子供の頃に母が縫ってくれた、薄手の綿ブロードの、無地のピンクのワンピースを思い出させる。そのピンクのワンピースはお気に入りだったし、結構似合っていたと思う。そんなピンクのワンピースをピアノの発表会などに着ることもあったけれども、案外、女の子らしくなかったかもな。普段は男の子とおたまじゃくしを採っていたりしたから。

小学校の2年生までは、女の子よりも男の子の友達の方が多かったくらいだ。
そこで私は、明るい黄色い絵の具を筆で溶いて紙に乗せてみる。まだ紙が水を含んでいたところは、黄色がピンクと混じって元気なオレンジ色も表れた。
そのオレンジ色は元気のいい女の子みたいだ。

男の子みたいな緑も使ってみようかな。だけど、この優しいピンクの持つ雰囲気も壊したくはない。そうだグレーを作ってみよう。この前描いた絵で、オペラのピンクと緑が紙の上で自然に混じり合い、素敵なグレーが偶然生まれたことがあるんだ。
いつものパレットから、特別に絵皿にまずはオペラの絵の具を筆で取って水で溶いていく。次に慎重に緑の絵の具を少しづつ少しづつ足して、薄いグレーが出来た。

柔らかな優しいピンクはこのまま大事に取っておきたい。明るい黄色と元気なオレンジ色も、男の子みたいな緑を隠し持ったグレーもこのままに。

ペールピンクのままに、私は筆を置いた。

(2022年12月9日になった深夜、友からの思い出話により加筆。
 今年最後の満月が天高く私の真上に。)