フランス人の友人から勧められて在日コリアンのファミリーヒストリー「Pachibko パチンコ」を読み、読書感想をシンガポール人と南アフリカ人の友人と語り合った
「パチンコ」というアメリカの小説ご存じですか?在日コリアンの100年にわたるファミリーヒストリーを描いた優れた小説です。Apple TV+でもドラマ化されてます。 この小説をシンガポールに住むフランス人の友人から「絶対読んだほうがいい」と昨年、強く勧められ、英語版を購入しましたが、知らない英単語の多さにギブアップして、文春文庫で翻訳版を購入しました。忙しさにかまけて読まずにいたのですが、この夏、時間を見つけて読み終えました。そして、フランス人の友人がなぜそんなに僕にこの本を読むよう勧めたのかよくわかりました。
僕は、英検1級を取得していますが、英語がペラペラで不自由なく話せる、といったレベルにはほど遠いレベルです。だから仕事で英語は使えても、
政治や宗教の話を英語で語り合えるようなレベルではありません。それでも、僕は太平洋戦争の話だけは、アジアに住む様々な国の人たちと率直に語り合います。先述したフランス人も奥さんはシンガポール人で、彼女の祖父や祖母や親戚が日本兵によって受けた被害を彼から聞きました。そういう話を聞くのはしんどいですが、それでも、心の奥底にあるアジアの他の国の人たちの太平洋戦争における記憶を聞かずに、真のビジネスパートナーや友人になれないと思ってます。そして、そのフランス人が、僕のそういった考えを知っていたので、この小説を読むことを勧めたのです。
「Pachinko パチンコ」はまさに日本の暗部をえぐる本でした。在日コリアンへの差別を詳細に描いてました。孫正義さんが、かつてその差別に自殺しようと思ったことがある、という発言をされていて、僕は、孫さんのビジネス上の山が果てしなく高いゆえに、その差別への苦悩はそれと同じくらいどこまでも深いのだろうと胸を痛めました。社会において在日コリアンに対する固定化した差別が詳細に描かれていて、あまりにリアルなので、これを書いた作家,韓国系アメリカ人のMin Jin Leeは本当に多くの当事者にインタビューをしているのだ、と言うことがはっきりわかります。僕が小さい頃か感じていた、社会のタブーが詳らかに描かれています。
韓国系アメリカ人女性の登場人物が、主人公の在日コリアンに向かってこう言います。
「日本人はどうしていまだにコリアンの住人を区別しようとするわけ?何世代も前からずっと日本に住んでいる人たちなのに。あなただってこの国で生まれたのよね。そのあなたが外国人ってどういうこと?どうかしてるわよ。お父さんだって日本生まれでしょ。なのにどうして二人とも韓国のパスポートを持っているの。それっておかしいでしょ。」
(パチンコ 下(文春文庫)
固定された社会階層というのが、いかに人に絶望感を与えるのか、目の前で見ているような描写でした。けれども、意外なのは、差別されている人々がどう逆境を乗り越えいていくのか、エンターテイメント性を盛り込み表現しているので、気が重くてページをめくるのをやめてしまうことはありませんでした。
在日コリアン差別とアパルトヘイト
この本を読み終えた次の日に、たまたまシンガポールから来日していた、南アフリカ人の男性とシンガポール人の女性の友人と根津にある串焼き屋に夕食を食べに行きました。二人は夫婦です。食事中、何かの表紙に、奥さんが「マサヤ、『パチンコ』という小説を知っているか?」と聞いてきたのでびっくりしました。僕が昨日読んだばかりだと答えたら、彼女もびっくりしてました。そして、彼女は、矢継ぎ早にこのエピソードは本当なのか?あのシーンはどういう意味なのか?など質問してきました。日本が大好きな彼女はよほどショックだったようです。僕は、一つ一つ丁寧に解説していきました。
そして、興味深かったのは、南アフリカ人の夫の反応です。僕の解説を聞いて「よく理解できる。どこの国でも起こりうる社会問題だ。」と言いました。そして自分の母国のアパルトヘイトについて話してくれました。階層が固定化されて、希望がない毎日の絶望。アパルトヘイトという制度はなくなっても、人々の意識や、振る舞い、慣習はすぐには変わらない。南アフリカは今も困難に直面していて、経済的な利益を享受できるごく少数の人とできない大多数がどんどん乖離していって、治安が本当にわるくなっている、と彼は言ってました。「自分の両親を国外に移住させたいのだけれども、多くの子供や孫がいるため、簡単に海外移住できず、治安が悪くなると、相対的にまだ良いエリアに移住するのを繰り返している」と苦悩を吐露してました。
僕は思います。閉じられた空間で、誰もが、学歴とか、家柄とか、勤務先で、ランクづけされて、固定化する社会の息苦しさ。これが長く続くと人々は病んでいくだろうと。
「パチンコ」の前述のアメリカ生まれの韓国系アメリカ人女性が在日コリアンの主人公に別れを告げる時、こう呟きます。
「わたしはここでは暮らせないわ、ソロモン。たとえあなたが結婚したいと言ってくれたとしても、ここで暮らすのは無理なの。ここにいたら息が詰まりそう。」
この息苦しさを日本社会から少しでも取り除くことが日本をより良くするために重要だと思ってます。僕のライフワークはビジネスでこの課題解決に貢献したいと思ってます。
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