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会社員が起業した時に見える大海原の風景について

来春で、60歳になり、定年で会社を去ります。その後は、一人会社を作って引き続き今までやってきた海外のスタートアップが日本に参入するのをサポートする仕事をします。2011年に新規事業開発の一環で、フランスのスタートアップとの提携をして彼らの日本ビジネスの拡大を支援をする業務を責任者として担当しました。それ以来、ずっと世界各国のスタートアップの日本市場に参入する仕事を続けてきます。

定年まで残りわずかになってきたので、週末は、準備を始めています。と同時に、時々は、様々なバックグラウンドを持った方とランチやディナーを共にしながら相談に乗ってもらっています。

先週、付き合いの長い知人と中野の焼鳥屋で二人で呑みました。その方は、私の元クライアントで、20年前に独立され、以来ビジネスコンサルタントとして大活躍され、著作を何冊も出されています。
 今回、彼に会って、聞こうと思っていた話がありました。起業されて間もない頃に彼がつぶやいたエピソードです。

原口さん、グローバル企業の要職辞して、一人会社を作って独立する時、家族を含め、周りの多くの人はびっくりして、再考したほうがいい、というアドバイスをくれたんです。でもね、一人会社設立後、1社目の顧客のオフィスに向かう時、突然、頭の中に絵が浮かんだんです。どこまでも穏やかな大海原が自分の前に広がっているのを。そして、気づいたんですよ。自分はプールの中でずっと泳いでいただけなんだと。その高揚感は忘れられません。

彼が独立された20年前は、僕は、40代後半。自分が独立起業なんて、まったく考えず、そのリスクを思うと怖くて想像することしなかったように思います。会社員の安定した生活より良い職業があるのか?と本気で思ってました。

でも、来年の起業を前に、自分が会社員としてやってきたことをあれこれ思い出しながら独立の準備をしていると、今までと違った見方でサラリーマン生活が見えるようになりました。確かに、大企業の看板の下、働くことで、日本を代表するような企業や、、天賦の才に恵まれたアーティストやクリエイターと一緒になって新しいプロジェクトを推進したり、大きな投資をして新規事業にチャレンジするというのは、本当に貴重な体験だったと思いますが、やはり、それでも、自分はとどのつまり自らの人生をコントロールしていなかったんだなと率直に思うようになりました。そんなことを思うようになったのはつい最近です。やはり、卒業が近いからだと思います。また、僕がこの十数年一緒に働いてきた海外の起業家達の多くは、今、40代だというのに一定の財を成したのでリタイアプランを作っていたり、全然違う分野に移ろうとしたり、あるいは、家族と一緒に知らない国へ移住する準備をしたり、次の章を意識して、自分を変えようと日々努力していることに気づきました。

定年近くなってくると、幽体離脱するかのように、片足、あるいは半身がもう、外の世界に出ているので、そんなふうにして物の見方がどんどん変わってきています。そして、起業を準備してゆくことで、ビジネスにおいて、まだ芯の部分を齧っていない自分に気付きます。それゆえに、是非とも大きな口を開けてガブリと齧ってみたいという意欲が湧きます。

知り合いのコンサルタントの方は、日本酒をゆっくり呑みながらこう言いました。
「もちろん、原口さんにも見えますよ。起業した日に。どこまでも穏やかな大海原が自分の前に広がっているのを。応援しますよ。」

何事も遅すぎることはない、と言いますね。僕も大海原を眺めようと思います。


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