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てん菜の生産量減少のニュースを見て、てん菜とてん菜業界について調べてみた


2022年5月15日付の北海道新聞に国などが行っているてん菜の生産量引き下げ議論について、北海道の産地への影響を不安視しているとニュースがありました。


明治時代の開拓から、北海道の農業にとって「てん菜」はとても重要な作物です。しかし、国内での砂糖の消費量が減少しているという点に加えて、生産者へ交付金を支給して生産者の収入を支えていた現在の仕組みが限界にきているようです。
色々と自分で調べてみた内容をこのnoteでまとめてみようと思います。


〇そもそもてん菜ってなに?

そもそも「てん菜」ってなんぞや?というところから始まりますが、一言で言うと砂糖の原料となる作物です。
海外ではビートという名前で、見た目がダイコンに似ていることから日本ではサトウダイコンなどと呼ばれることがありますが、実はヒユ科に分類されてほうれん草の仲間に分類されます。
砂糖の原料というと鹿児島南部や沖縄などで作られるサトウキビを思い浮かべる方も多いと思いますが、実は砂糖の国内生産量約78万トンのうち、沖縄や鹿児島で作られるサトウキビ原料の砂糖は約13万トンと全体の17%しかありません。残りの8割以上の65トンはこの「てん菜」を原料にして作られていてしかもすべてが北海道産というから驚きです。※2019年調べ

https://www.alic.go.jp/content/001206519.pdf

実は「てん菜」という作物は寒い地域での栽培に適していることから、主に寒冷地で栽培されることが多く、国内に輸入しているてん菜の原産国はEU諸国やウクライナ、カナダなど北国から多く輸入されています。
裏を返すと、寒い地域では野菜などを栽培可能な品目は限られるため、小麦やてん菜などは寒い地域での農業にとって重要な品目であるように思われます。

〇北海道でのてん菜栽培の歴史


では、国内で唯一「てん菜」の生産を行っている北海道での歴史を見ていきましょう。
そもそも「てん菜」は日本に昔からある作物ではなく、明治時代に内務省勧農局(現在の農林水産省)が行った西洋作物種子導入政策によって、ビール用の二条大麦や亜麻と同じ時期に海外から持ち込まれました。
その後、北海道開拓の推進のためフランスから技術者を呼んでてん菜の栽培試験を開始するとともにフランスから製糖機械を購入し勧農局(今の農林水産省に当たる)直営のてん菜糖工場を建設。北海道でのてん菜栽培と砂糖の生産へ本格的に乗り出しました。
北海道内でてん菜の栽培技術が確立してきたとともに、第一次世界大戦などの勃発により世界的に砂糖の供給が困窮したため国内生産へシフトが始まったことで、現在の帯広市など主に十勝地方でてん菜の栽培が広がりました。
現在こそ温暖化によって野菜や米など様々な農作物の供給基地となった北海道ですが、当時は試される大地として生産できる農作物がかなり限られていました。
てん菜は明治時代から今日まで様々な困難がありましたが、平成27年度には生産量は約400万tにまで増え、北海道の農業を支える重要な品目となっています。

〇国内での製糖メーカーの業界再編と海外シフト

この「てん菜」やサトウキビなどの原料を砂糖に加工する会社のことを製糖メーカーと呼びます。
国内ではDM三井製糖HD、日清製糖、日本甜菜製糖など複数社あり、業界1位のDM三井製糖HDは名前の通り三井系の企業です。2021年に当時業界1位の三井製糖と2位の大日本明治製糖が経営統合を果たして持株会社化、現社名になりました。また、3位の日本甜菜製糖が資本業務提携を締結しており業界再編が激しい業界です。
アジアやアフリカなど新興国での人口増加による砂糖の消費拡大見込まれる成長市場へシフトをしたい背景があります。
やはり人口減少で市場が縮小するため国内の製造拠点を減らして、原料輸入によって工場を海外に新たに作って消費地に近い場所で製造する方向へシフトしています。


〇最近のてん菜生産の動向

ここ10年で世界的にみてロシアが生産量を大幅に拡大させてきており、生産量はせ回第7位まで上昇してきています。
自国の農業自給率を80%まで引き上げることを目標にしているとのことで、日系の総合商社や日揮が極東ロシアで野菜の生産を始めたりと、数年前から動きがありました。

〇最近のてん菜生産の動向


2022年のロシアによるウクライナ侵攻によって、小麦の生産大国のウクライナからの供給不安が起こり、日本国内でも小麦の大幅な値上げで大混乱になりました。ウクライナは小麦のほかにトウモロコシ、ばれいしょ、なたね、てん菜などが主要の農産物です。
小麦は数年おきに別の作物への転作が必要なため、ウクライナもご多分に漏れず小麦とてん菜を輪作している状況です。
農畜産業振興機構の調査によると、旧ソ連時代、ウクライナはソ連向けに大量に砂糖を輸出していましたが、ソビエト崩壊後は価格統制の緩和によって肥料や農薬の利用が減少して生産量が大幅に減少しているとのことです。


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