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踊り | バリ舞踊 動き編⑤『首の動きと3箇所の「首」』

もうひとつ、バリ舞踊の特徴的なうごきがあるとしたら、、「首」という人もいるかもしれません。

左右に小刻みに動く、不思議な動き。


▼これまでの動きの話はこちら


とはいうものの首の動きというのはバリ舞踊特有のものではなく。
西洋でもどの踊りにも入ってくる場合があるよ、というのは私個人の意見ですが。


確かにアジアの踊りには多いですね。
インド舞踊などでは必ず見られます。


私の担当させていただいていたコーナーも、あの首の動きがかなり印象に残るからなのか「あぁ!インドの踊りでしたよね!」「タイ舞踊ですよね!」と言われることがとても多かったのですが(なぜか「バリ舞踊!」とはならない。笑)それだけ印象とすればアジアの踊りの雰囲気は似ている!ということなのでしょうか。

詳しいことを述べだすと長くなるのでここではやめておきますが、実際はそれぞれ大きく異なるまったく違う踊り。

そして、その首の動きは別に特別なものではない、というのが、本当のところ。


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ジャズやモダンなど踊りをやっていると、アイソレーションと言って、身体をパーツごとに自由に動かせるように訓練をします。
例えば、首、胸、腰。
左右だけでなく、前後、斜め、回す、など。
こういうことで踊りの中で使える身体をつくっていく。

なのでダンサーからすると別段珍しい動きではないのですね。普通のこと。

クラッシックバレエでも、創作の作品には首の動きが出てきたりします。
私自身、小さい頃にテレビで観たインドかアラビアのお話!といったバレエ作品でバレリーナたちが首を左右に動かしているのを見て、「面白そう、やってみよう」と練習したりしたくらいですから。

そんなんで自然に身につけていた動きでしたが、バリ舞踊でこんなに生かされるとは。
そして反響の大きさに「え?これってそんなに珍しい動きなの?」と少し面白かった記憶があります。


バリ舞踊の使い方としては、大きく動かすことはない、というのがひとつあるかもしれません。

ジャズなんかだと自由なので、音に合わせてガン!と動かすこともあるし大きく回すことだってある。前後も使ったりと振付でどんな動かし方もありですが、バリ舞踊の場合は必ず左右のみで小さめ。

首を動かしている時には少し首を長くするような感じもあって。バリ舞踊の他の動き同様に、ちょっぴり人形のような印象があります。

そしてゆっくりというのは確かほぼありません。
だいたい、早め。


当然のことですが音楽の流れと動きと感情は必ず一体なので、楽曲の流れの中で音に合わせてその動きが出てくるということは…、となるのですね。

踊りも歌でいえばビブラートやうなり、楽器でもニュアンスや音の伸びやかさや厚みなどに置き換えてイメージしてみると少しわかるところがあるかもしれない。
踊りは単なる「動き」ではありませんから。それはどの踊りも同じことです。


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さて。
首には、まだありまして。

バリ舞踊のあのしなやかな手の動きの起点となっているのは「手首」なのです。

バリ舞踊を観ると指をひらひらさせながら上下に左右に空気をかき混ぜるように動いて見えると思うのですが、あの動きを全て導いているのは「手首」。

身体全体と連動しますが、手首を押すことで動きのきっかけを作り、手を返す時にも手首を使う。
指も、肘も、顔も、体全体も、手首に引っ張られるように連動して動いているという感じです。

手をふわりと回す動きは「ウッカール」。
これも手首で持ち上げて回していく。


レゴンを踊る私。常に手首に意識。
この体制で首を小刻みに動かすような場合もあります。
曲の中で音が揺れるようなメロディの時に多い。
動きは必ず音楽と連動します。
踊りは音楽と一体ですから。



さらにもうひとつ。
歩く時には足首をぎゅっと曲げたまま。


そういう説明を聞いたことがあるわけではありませんが、「首」「手首」「足首」この3つはバリ舞踊の要というのでしょうか。

どれも「首」とつくところなのだなと思うと、なにか共通点があるような、意味があるような気がして面白いなと思います。


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要、といえば。

丹田が動きの真ん中にあるというのは、歩き方とのところで書いた通り。

その時に、腰の真ん中が丹田とバランスをとるように大事だなと感じていました。



それからもう一つ。

バリ舞踊の基本のポーズ(「アグム」と言います)は、胸を大きく開いて肩甲骨を思いきり寄せ、肩の高さに両腕を載せるようにし、両肘をぐっと左右に張って、手首をしっかり前に出して指を空へ立てるのですが。

肩甲骨を寄せた、背骨の一点。
そこに「クンチをかける」という言い方をします。

クンチとは、鍵のこと。

そこに、カチッと鍵をかけて、そこを要として他を自由にさせる。


身体に入らないうちは「何を言っているのでしょう、身体中どこもガチガチですが」と言いたくなるのは、どの踊りの時も同じ。
踊りだけでなく、きっとなんでも同じでしょうね。
体に馴染むまでは全身気をつけることばかり、力入りまくり。

けれど、繰り返し同じことを聞き、同じ動きをし、言われたことをひとつひとつ意識して、、とやっているうちに、ずいぶんたった頃に「あぁ、こういうことか」とわかってくる。


バリの芸能は、踊りも音楽も直接の口伝え。
こうして、理論や思考ではなく、じんわりと時間とともに身体と感覚に馴染んでいくことを大事にしてきたのだろうと思うのです。


効率的ではないかもしれない。
時間もかかる。

けれど。

その身体と感覚に入った確かさを知ると、そのやり方の大事さと結果的に効率的だということ、その贅沢さと同時に伝えていくということは何事も同じであろうということを感じざるをえません。



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3つの「首」の話。

いつかバリ人とゆっくり話をすることがあったら、そんな話も聞いてみたいかも、なんて思ったりするのです。


さーて。
バリ舞踊の基本的な動きの話はだいたい出揃ったかな。

細かな話をしだしたらキリがないので。
次回からは、踊りの種類や、バリ舞踊にまつわるいろんな話をしながら動きのことも交えていってみましょうか。


バリ舞踊の話。
読んでくださってありがとうございます。
まだまだ続きまーす!


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 首の動き〜練習〜

肩の力を抜いて背筋を伸ばし、両手を前で合わせます。
右手で左手を押しながら右耳を右へ引っ張られるような感じで。水平に顔がスライドできるようになったらグッジョブ。左も同じようにやってみましょう。

いきなりできなくても、まずは意識だけ、右・左、、と繰り返してやっているうちに少しずつコツをつかんでくると思います。

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 手と手首の動き 〜ウッカール練習〜

背筋を伸ばしてあぐらをかいて座ります。
①両手首を胸の前あたりに。肘は少し曲げて。指先をしっかりと空へ向けます。この時に親指は前にピンと伸ばして。指はできればひらひらと左右に小刻みに動かします。

②ドアノブを回すように外まわしに回しながら手の平を上というよりは正面に向け(この時は親指も開きます)、中指をくっと立てて手首できっかけを作るようにしてくるっと一回転。

もとの位置(①)へ戻ります。

①②を繰り返し練習。
呼吸を忘れずに。

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