フリー台本「野鳥公園で管理員のお姉さんと作る思い出」
3000字ちょっと!
シチュボ向け…?な気がするフリー台本ですっ♪
元々は声劇用に考えてたものを一人読みに変えたものになります。
二人読みの声劇版もその内書きたいところです♪
アドリブ・改変含めて、よろしければご自由にお使いください。
■本編
◆野鳥公園にやってくるリスナーと、それに気付くヒロイン。
ああ…ふふっ、いらっしゃい。
また来たんだ?
キミ、受験生じゃなかったっけ?
いいのかなぁー、平日の昼間から野鳥公園なんか来て…さ。
…ふふっ、冗談だよ。
別にいいんじゃない?
私だって仕事サボってるようなものだし。
サボりたい時くらい、あるよねぇ…。
…ま、いつも通りスタッフも私だけだし。
好きにくつろいでいいよ。
なんなら…ふふっ、お姉さんが相談乗ってあげよっか?
人生相談。
いいから、いいから。
ほら、こっちのテーブル。
どうせ他にお客さんもいないんだし、何も言われないって。
もし補導されそうになったら…うん、その時はちゃんと言い訳してあげるよー。
◆公園のテーブルに移動。
それで、っと…あ、これ飲む?
ふふっ、どうせ来るんだろうなー、って気がしたから。
買っておいたよ、キミの好きなやつ。
…ああこら、財布出すんじゃないの。
社会人なめるなよー?
缶ジュース一本で恩着せるほど、ちゃちなお給料もらってません。
それで、今日はどうしたぁ?
…や、どうした、っていうのはご挨拶かな。
顔見ればわかるし。
ふふっ、そりゃわかるよー。
キミってさ、たぶん自分で思ってるより素直で純粋だよ?
表情に出ちゃうんだよねー。
駆け引きする時は苦労しそう♪
◆一拍置いて落ち着いたトーン。
ん…まあでも、真面目な話、疲れてるんだね。
毎日毎日、受験勉強で頭いっぱい。
脳みそ使いすぎて、肩も重くて…。
ストレスとかプレッシャーとか、そういうので身動き取れなくなっちゃってる。
…そんな感じかな?
ふふっ、たった数年でも、人生経験の差をなめるなよぉ?
青春の苦悩っていうのは、お姉さんにもあるんだよ。
…っていうのは、自慢できることじゃないか、あはは。
だけど、うん…わからない悩みじゃない、つもり。
キミよりほんのちょっと長生きしてる分だけは、ね?
◆最初に伸びをしながら。
んーっ、そういう時は仕方ないっ!
肩の力抜いてみたら?
気を張って進もうとして、それでうまくいかないんでしょ?
なら、楽しんでみなよ。
…ふふっ、勉強を、じゃなくて、なんていうかな…人生?
もー、あんまり突っ込まないの。
とりあえずほら、こっちおいで。
すぐそこに海あるんだし、少し歩こう?
◆防波堤を歩きながら。
ふぅ…気持ちいいよねぇ~、潮風。
海、こんな目の前にあるのにさ、意外と見ないんだよねぇ…。
キミもでしょ?
ふふっ、わかるよー。
いつもいつも、すぐ野鳥公園の方に来るんだもんね。
周り見る余裕、ないんでしょ。
海も、鳥も…楽しいこと、落ち着くこと…。
ふふっ、盲目的だよねぇ。
…誤魔化さないでいいよ。
キミ、私しか見てないじゃん。
バレてない、って思った?
だけど、まあ…そういう話をしてこないのはさ。
指輪も見えてるから、だよね。
◆やや後ろめたそうに。俯きながら自嘲してるイメージ。
ん…お姉さん、結婚してるよ。
してるけど…それ、抜きにしても…キミには、応えてあげられない…かな。
…こらこら、勝手に落ち込まない。
キミが子供だから、年下だから、学生だから…って、そういう理由じゃないんだよ。
どっちかって言うと…私の、見栄かな?
年下の男の子にはさぁ。
…一目惚れの相手には、さぁ。
キレイな面だけ、知っててほしいじゃん。
憧れのお姉さんのままで…居たいじゃん。
◆一拍置いて、タバコを取り出す。
…ふふっ、私、本当はキミが憧れてるような人間じゃないよ?
たとえば、これとか。
タバコ。二、三年前から、ずっとね。
…嫌いだよ。
タバコなんて、本当に嫌い。
味も煙も…舌気持ち悪くて、目が回って、頭ガンガンして痛くなるし。
…なのにさ、手放せないの。
他にわからないの。
胸の、ね…ここのとこで鳴ってる、ノイズみたいな嫌な感情。
他にどうやって誤魔化せばいいか、わかんないんだよ。
◆防波堤に座って、タバコを吸い始める。
一本いい?
ん…すぅー…ふぅー…。
…ぶっちゃけるとさ。
上手く行ってないんだよ。
結婚生活、ね。
いつの間にか、すれ違って…かけ違えて…誤解して、誤解されて。
気付いたら、お互い無関心になっちゃった。
ただの同居人って感じ。
…ね?
本当の私は、ただの大人でしょ?
キミもよく知ってる、どこにでもいる…吸い殻みたいな、ただの大人。
…健全な男の子が憧れるには、ちょっと、ね。
苦すぎるでしょ、私は…。
◆タバコを吸い終える。
…ふふっ、ごめんね? 幻滅させた?
あー…そんなことない、とか…キミは言っちゃうのかぁ。
あーあ、いい子だなぁ~…!
いい子すぎて、やんなっちゃう。
あと五年…ううん、三年。
三年でいいからさ…なんで三年早く、産まれてきてくれなかったかなぁ…。
…なんでもっと早く…私のこと、見つけてくれなかったかなぁ…。
◆膝枕する流れ。
…こっち来て。
ん、隣。ここ座って。
ほーら、遠慮しないっ♪
もっとくっつきなぁ?
そしたら…こうっ♪
ふふっ…いい子のキミに、プレゼント。
お姉さんが、思い出になってあげましょー。
学校サボって、海辺で…憧れてた女の人の膝枕で、お昼寝。
いい思い出になるでしょ?
…これくらいしか、やってあげられないし。
キミみたいな子に、イヤな失恋はさせられないから。
目を閉じて…このまま少しだけ、眠ってみて?
ふふっ、タバコの匂いは…まあ、ご愛敬ってことで。
…いい子だね、キミは。
素直で、純粋で…いい子すぎるんだよ。
大丈夫。
この先、何があっても…キミは絶対に大丈夫。
ここで働いてるとさ、いろんな鳥を見るわけよ。
ほとんど渡り鳥だけどね。
何度も来るのもいれば、来ないのもいて…。
戻ってこないのはさ。
たぶん、他にいい場所を見つけられたんじゃないかな。
家だったり、家族だったり…ここよりずっと、居心地のいい場所をね。
…キミもおんなじ。
私より、もっといい場所を見つけられる。
鳥みたいで、でも鳥よりもずっと大事な人だよ。
…ふふっ、お姉さんが保証してあげる。
だから今は少しだけ、このまま眠っちゃいなさい。
少ししたら起こしてあげる。
明日から、また頑張れるように…ね?
ふふっ、別に二度と来るな、なんて言わないよ?
今生の別れじゃないんだから。
ただ…私としては、さ。
こうなってほしいな、っていうのがあるの。
何日も何日も、いつまで待ってもキミが来なくて…。
もう忘れちゃったのかな、元気かな、なんて考えながら、何年も過ぎて…。
それでね?
しばらく経った頃、成長したキミと街ですれ違うわけよ。
私の方はすぐ気付くんだけど…キミは、私には全然気づかない。
隣に素敵な恋人がいて、ずーっとその子を気にかけてる。
私は、寂しかったり切なかったりしたあとでさ。
よかったなぁ、って思うの。
ちゃんといい男になったじゃん、立派な人になってるじゃん…って。
…それが、私の夢。
そういうのが…叶ってほしい、キミと私の未来。
きっと叶うんだろうなぁ、って信じてるんだよ?
今は寂しかったりするかもだけど、キミは大丈夫。
大丈夫だから…そうなるように、進んでみて?
◆最初の二行だけ、表情には出さず、内心で泣いてるイメージ。
…ん、ホント、キミはいい子だね。
聞き分けよくて、お姉さん、助かるなぁ。
…大丈夫、大丈夫だから。
ゆっくり、落ち着いて…心配いらないよ。
お姉さんは、キミが憧れてるお姉さんのままだから。
いい子、いい子…よしよし。
今だけ、眠っちゃおうね。
いい子、いい子…大丈夫、大丈夫。
◆一拍置いて、眠ったリスナーにかなり小声でささやく。
ん…寝ちゃったかな。
ホント、可愛い寝顔してるんだから。
…私、キミに嘘ついちゃったよ。
本当は…キミの隣には、私がいたい。
キミと一緒にいる人は、私であってほしい。
だけど、ダメだな…勇気出ないや。
…好きだよ。
キミが、好き。
どうしようもないくらい…泣きたくなるくらい、キミが好き。
…ありがと。
私を好きになってくれて…ありがとう。
キミのこと、ずーっと応援してるからね。