フリー台本 星の影(性別不問・2人読み)
*お題「星」で思いついた掛け合いの短い台本です。
ホラーっちゃホラー…なんでしょうか?
恐怖要素はないんですが。
性別や一人称は設定してないので、そちらの改変やアドリブなど含めて、よろしければご自由にお使いください。
星の影
◆幽霊
やあ、死にたがり。また来たんだ?
◆人間
うるさいよ、死人。こっちに関わってくんな。
◆幽霊
とかいって、毎晩毎晩来てるクセに。
ビルなら他にいくらだってあるのにさ。
◆人間
死んだやつと違って、生きてるやつは鍵かかったドアをすり抜けられないんだよ。
◆幽霊
ふぅん…そういうことにしとこうか。
それで?
◆人間
…なにが?
◆幽霊
今日は飛ぶの?
◆人間
…飛んじゃ悪い理由でもあんの?
◆幽霊
おすすめはしないなぁ。
飛ぶっていうか…死にたがるのは勝手だけど、ホントに死んじゃうのはねぇ。
◆人間
…わかった風に言わないでもらえる?
何も知らないクセに。
◆幽霊
どうかなぁ…死んだ後についてはそれなりかもよ?
何しろほら、幽霊ですから。
◆人間
なら黙ってろよ。
死人に口なしって言うんだから。
◆幽霊
そりゃないよ。
そっちじゃ多様化だなんだって騒いでるのに。
幽霊だって口くらい付けるさ。
◆人間
…じゃあどうしろって…。
◆幽霊
ん?
◆人間
生きてたところで、いいことなんかなかった。
ただ苦しいだけのことが続いて、こんなことなら死んだ方がマシだよ。
◆幽霊
こっちからしたら、贅沢な言い方だなぁ。
そのうち勝手に死ぬのに。
◆人間
…死んだやつにわかるもんか。
必死にやってきたんだよ…!
認められたかったし、認めさせたかった…!
なのにいつも、もっと上手く出来るやつがいて…そのたびに引き立て役になる…!
一生そうやって、比べられて笑われて終われって!?
◆幽霊
さあね。
◆人間
…っ、結局そうやって他人事じゃんか。
◆幽霊
だって他人事だよ。
だいたい、キミは幽霊からおためごかしを貰って、それで満足?
◆人間
それは…っ、だけど!
◆幽霊
一言か二言か、死人に優しい言葉をかけてもらって、それで生きる希望が湧くって?
そんなに安い悩みじゃないから、相変わらず死にたがってるんでしょ?
◆人間
…はぁ…あんたさぁ、結局なんなの?
死なせたいの?
それとも死なせたくないの?
◆幽霊
うーん…一人暮らしが夢だったんだ。
いつか出来たらいいなって、ずっと思ってたんだよね。
◆人間
なに? 今度は自分語り?
◆幽霊
まあまあ。…一人暮らしに憧れてたんだけどさ。
結局、生きてる間は出来なかったんだよね。
代わりに今、念願叶って廃ビルに一人で残ってるんだけど。
◆人間
…だから?
◆幽霊
いんや、別にそれだけ。
だけどまあ、こんなに寂しいものだとは思わなかったなぁ、あははっ。
◆人間
…勝手な話じゃん。
◆幽霊
辛辣だなぁ。
◆人間
あんたほどじゃないよ。
◆幽霊
ははっ、それもそっか。
…ああでも、もう星が消えちゃうね。
また朝になるのかぁ…。
◆人間
幽霊って、昼間でも出てくるもんじゃないの?
◆幽霊
さあ?
星がないと出られないんだから、まあ仕方ないよ。
さながら星の影ってところかな?
◆人間
中二臭いんすけど。
◆幽霊
ははっ、今はそんな言い回しするんだ?
◆人間
そうだよ、お節介なバカ幽霊。
…あんたが死んだ時はどうだったの?
星が見えてた?
◆幽霊
ああ、よく見えたよ。
怖いくらいに見えて、遠のいて…あとは見ての通り。
まあともかく、また会おうか。
◆人間
…あんたさぁ。
◆幽霊
ん?
◆人間
…なんで生きてるうちに、友達になってくれなかったの?
◆幽霊
ああ…うん、そうだねぇ。
飛ぶまで知らなかったんだ。
世の中には、友達になれる人がいるんだって。
◆人間
…気づけよ、そのくらい。
◆幽霊
うん、同感だな。
もっと早く…。
◆人間
…バカ幽霊。遅すぎるんんだよ、ホントに…。
次は、ちゃんと最後まで言って消えろよ。