焼きおにぎり最強説

先月、家族5人そろってコロナになった。
我が家には在宅介護中の後期高齢者がいるが、その本人が最初に陽性になり、訪問ヘルパーもデイサービスもすべて停止。家族だけで10日間の療養期間を乗り切らなければならなくなった。

その療養中、一番多く作ったのが、焼きおにぎりだった。

家族の陽性がわかった日はちょうど生協の宅配日で、一週間分の食材が届いたところだったので、すぐに食事に困る、ということにはならなかった。しかし、普段昼間はそれぞれ幼稚園と小学校に行っている子どもたちと、週に4日はデイサービスで昼食をとっている義母が家にいるという事態は、一週間前の自分は当然想定しておらず(夫は自営業で常に家にいる)、昼食は早々にネタが切れた。冷蔵庫に食材はたっぷり詰まっているが、療養二日目にして自分も発症し、着られるものを着られるだけ着て布団を頭からかぶっても歯がガチガチと鳴りやまないような激しい悪寒とともに、みるみる熱が上がり、冷蔵庫の食材を順に消費していく力など、どこを絞っても出てこなかった。

そこで、焼きおにぎりである。

いや、何が「そこで」なのか、全然わからない。焼きおにぎりが出てくる必然性がない。それは分かっている。ただ、病のときというのは、合理的に考える思考力も体力もどこかに持っていかれるもので、何故か私は、焼きおにぎりを作り続けた。

ところで話は逸れるが、今までに自分の脳内イメージを越える焼きおにぎりを食べたことがない。焼きおにぎりへの期待値が高すぎて、おいしいのだけれど、何かが違う、と思ってしまう。それでも、限りなく満足度の高い焼きおにぎりを家で再現することに成功した。とりたてて紹介するほどのレシピでもないが、現時点での記録としてここに残しておく。

①温かいご飯を用意する。
②ご飯に粉末状のブイヨンとピザ用チーズをたっぷり入れて混ぜる。
③三角形に成形する。
④フライパンにバターを溶かし、両面を焼く。
⑤仕上げに両面に醤油を少量つけて焼く。

療養期間中の昼ご飯に、とにかくこればかり作っていた。
同じ日に発症してこちらもフラフラの夫が、とり憑かれたようにおにぎりを焼き続ける私の後ろで、遠慮がちに「無理しないで…」と怯えていた。
焼きおにぎりというのは、いつもの海苔おにぎりや昆布おにぎりとはちょっと違うよそ行き顔で、突然部屋にほぼ軟禁されて過ごさなければならなくなった子どもたちには好評だった。ありがとう、焼きおにぎり。

ちなみに、京都水族館の、ペンギン型の海苔が巻かれた焼きおにぎりが好き。

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