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【脱線】私を形作ってきたもの-会社編①

私が正社員で勤めていた会社は、大企業の小さな子会社でした。

前に「前時代的な」と書きましたが、どれくらい前時代的だったかというと、
事務所では男性陣が当たり前にタバコを吸ってて、年賀状の住所は筆ペンで手書き、やり取りは電話とFAX。
会計用にPC98が現役でバリバリ稼働している。
それくらいの感じ。

全体的な世の中はもう少し進んでいて、
事務所に初めて入った時に、うわぁ。昭和っぽい。と思ったのを覚えています。

事務所は兄弟会社の一室を間借りしていて、そこにいるのは60代の出向社員のおじさん(というより当時の私から見るとおじいさん)。
40代後半の男性と女性がひとりずつ。
そして50代の上司がひとり。

そこに導入された富士通製Windows98搭載PCを使える人がいなくて、雇われてきたのが私、ということでした。

そんな私の仕事は、朝、みんなの机を拭いてお茶を出すこと。
それから、訪ねてきたお客さんにお茶かコーヒーを出し、電話番をする。
後は手書きで請求書を書いたり、給料日には現金を数えて給料袋に入れていく。

時々私がイルカのカイル君と遊ぶくらいで、
富士通製Windows98搭載PCは空っぽのまま、ピカピカのブラウン管を光らせていました。

斜め前の出向社員のおじいさんは、ふと手元を見ると、くるくると丸を書いています。
時々兄弟会社からやってくるスーツを着た偉そうな人とゴルフの話をしていました。
どうやら彼の仕事は、電話に出ることとくるくる丸を書くこと、偉い人とゴルフの話をすること、金封に名前を書くこと、年賀状の宛名を書くことであるようでした。

40代男性は時々タバコを吸いながら、のんびりと事務作業をしていました。
封筒にまず定規で線を引き、それからおもむろに住所と会社名を書いています。
ふと見るとこくりこくりと寝ているときもありました。

40代女性は事務員の制服を着て、一日中忙しそうに働いていました。
電話はほとんど彼女にかかってきました。
FAXを受け取るとどこかに電話をかけ、機械に何某かを打ち込み、隣の兄弟会社の人に連絡をしに行きます。
いつも忙しそうでした。

50代の上司はほとんど事務所にはいませんでした。
現場を行き帰しているようでした。
たまに事務所で大事なハンコを押して、タバコを2本ほど吸ってまたどこかへ出かけていきます。

事務所の中の仕事のバランスが明らかにおかしいなーと思いながらも、社会人一年目の私は、ただただ目の前のことを受け入れていくのみでした。
毎日繰り返される、9時から5時の淡々とした時間がこの先も続いていき、それをこなしていくのが社会人ってことなのかなと思っていました。

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