亀と少女と静かな冒険
大きなリクガメが動物園から脱走した、というニュースがあった。
エンデの「モモ」を思い出した。
ちょっと先のことがわかる大きな亀が、ゆっくりとゆっくりとモモを誘導していく。決して時間泥棒には出会わない道を選んで。
あんな大きくてゆっくりしか動かないリクガメが、
なぜ脱走から行方不明になるまで、だれの目にも止まらなかったのか。
本当に誰の目にも止まらなかったのか。
亀には「自分が発見されない道」を察知する能力があるにちがいない。
そしてもう一つ。亀がわかっていること。
この子は自分の大冒険を邪魔をしない。
帽子が落ちて、背中に垂れていることも忘れて、ただひたすら自分の歩みを見ている子。
この世で彼女だけが、亀を見ている。
海亀の 一歩を見んと 炎天下