双海真美同人誌「私たちは桜の咲き散る頃に」感想
私たちは桜の咲き散る頃に/坩堝書院(タングス天功さん、https://x.com/tungs_tenko)
読了。
長崎に戻って来てから移動時間、仕事の休憩時間などで読みました。
双海「真美」主役の同人小説。
……とだけ書くと紹介としても感想としても浅いのでもう少し掘り込んで説明を。
【ミリシタ】キャスティング投票イベント「MILLION C@STING!!!」、第1回投票 テーマ①「現代伝奇ホラー」、この企画の二次創作と言えます。
投票の結果でキャスティングが決まった「解夏傀儡」イベント。
逆に言えば「それ以外のアイドルのキャスティングのパターンは見られない」ということでもあります。
なので、自分で書く。
……究極の自給自足精神です。
まさに二次創作同人。
自分もシンデレラ10周年沖縄公演がコロナで中止になり、行き場のない気持ちを中止にならなかった世界線での、沖縄公演SS小説という形にしたのでこの辺りはよくわかります。
さて、改めて中身の話を。
中身というか先に外側、装丁。
サークル名は「坩堝書院」。
同人小説であるにもかかわらず、書店に置いてあるような本のデザインにこだわっています。
まさに坩堝書院というブックレーベルがあるかのようです。
グッドデザイン賞ですね。
このあらすじの書き方もこの本をより一般流通している分このような雰囲気を出す効果と、中身を端的に見本誌を確認する一般参加者へ伝える役割とを立派に果たしています。
私は同人誌は同人誌だろ! と開き直ってこういう形でのこだわりはあまりしていないので見習うべき点だなと。
本編。
真美の一人称小説です。
書くのが遅れましたが私は解夏傀儡イベント未プレイ、ドラマCD未試聴なのですがこの小説を読むにあたって最低限の情報はググって仕入れました。
タマワリの儀とかね。
でも結果としてその必要はなかったというか、キャスティングの段階の役。
姉役、妹役、従姉妹役、医師役、少女役というアウトラインをなぞり、そこをオリジナルキャスティングして小説を書いていらっしゃいます。
なので実際のタマワリの儀やタマイレの儀とかを知らなくても大丈夫でした。
表紙裏の「ハナサキノギシキ」の方がメインだったということです。
キャスティングも真美を主体に、妹に亜美、従姉妹に春香、医師に千早、少女に美希を自分で選んでキャスティングされています。
正直、「これは書いててめちゃ楽しいやつだ……!」と同業者的に思ってしまいましたね。
配役自分で決められるんだもん。
そしてこれは「現代伝奇ホラー」の二次創作であると同時に、限りなく「真美」の作品です。
公式からも二人でセットにされることの多い双海姉妹ですが、この作品では明確に姉であること、妹であることを軸にして伝奇ホラーの劇中劇として書ききっています。真美の一人称として無理のない描写、読みやすく、すらすらと入ってきます。
だからこそホラーを感じる度合いが強いのかもしれません。
ときどき語彙力が真美よりも小説家でもある作者の語彙力を感じる場面がありましたが、劇中劇でもあり、無理を感じるというほどではありません。
ネタバレはしませんが雨戸のシーン、本当に怖かった。
あの時点では秘密や正体が分かっていなかったからなおさら不安をあおられました。
どうしても消去法というか、出てきている人間で物語と風呂敷を閉じる必要が出てくるので意外性は少し減るかもしれませんが面白かったことに間違いはありません。
不安感の残滓は危機が去ったはずのラストシーンでもまだ何か起こるんじゃないかと全然安心できないというか、このあと二人にも何かが起こるんじゃないかという気持ちがぬぐえず、グッドエンドと思えず……w
いいホラーです。
まぁ村のこともあるんだけど。
劇中劇の二次創作で、解夏傀儡と同じ世界観ではないので人によっては邪道と感じるかもしれません。
ですが、これもまた二次創作です。
765プロ事務所が出てこなくても公式のMILLION C@STING!!! と配役が違っても。
アイドル達で自分でMILLION C@STING!!! の配役を決めて物語を書く。その自給自足の精神と自分が読みたいものを書くという二次創作の同人の原点。
それがギュッと詰まっていいものができています。
そしてホラー小説としてもとても面白く、他のアイドル達の活躍もとても楽しめました。
元アケマスPなのでASメンバーで入りやすかったというのもあります。
主流派からは比較的イレギュラーな二次創作ではあると思いますが小説として読んでいて面白かったのと、真美を輝かせるというプロデューサーとしての精神で感動したのと、何かと読ませていただいて得るものの多い一冊でした。
ありがとうございました!