評論同人誌「このあいだ入院しました。」感想
このあいだ入院しました。/C3 Design Works(糀町さん、https://x.com/C3DesignWorks)
メロブ
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2736561
読了。
大前提として、私は医療従事者(内科医師)なので一般の読者と受け取り方が少し異なるかもしれません。
いつもの耳かきやデザインの頃からの読者です。
まず、最初に一言。
すごく、いい本です。
普段の私のジャンルのフォロワーさん(30歳~35歳以上なら特に)にも全員1冊ずつ買って読んで欲しいくらいです。
この本は特別な医学知識なしに読める本であり、その上で特定の病気についての説明の本ではありません。
「緊急入院」「入院生活」について記した本と言っていいでしょう。
そしてそれが「医療従事者じゃない方」によって書かれている、という意味でもすごく意味があります。
医療従事者は誰でも、仕事をするうちに医学のこと、病院のことについて詳しくなっていきます。
大学を出るまでは自分だって「非医療従事者」であったはずなのに、その頃の自分の知識がどれくらいのものだったのか忘れてしまう。
この本はそんな私にも、一般の方の理解度と、入院の際にどのような準備が必要か説明するためにもとてもいい本だと感じさせてくれました。
この本は入院経験のない方、高齢のご家族が居る方など、一読しておくと役に立つと言えます。
ここからもっと具体的に中身に触れていきます。
まず、字が多いのに読みやすい。
作者が普段から同人誌を作り慣れているし、デザインにも明るいためでしょう。
この文章量でサクサク読める点が素晴らしい。
どれもいい文章ですが特におくすり手帳の有用性、かかりつけ医の大事さ、これは実感したことのある人にしか分からないでしょう。
作者が意識がはっきりしない間もおくすり手帳の存在やかかりつけ医がいたことでスムーズにことが運んだであろうことが書かれています。
これは病院で救急をやる側としても、常に感じていることです。
多分患者さん目線で役に立つのは「入院生活に必要なもの・持っていたいもの」リストですね。
病院はホテルではありません(強調)。
ベッドと空間は借りられるし、点滴もしてもらえるけど着替えや日用品は自分で用意する必要があります。
これは大事なことなんですが意外と周知されていないし、指摘すると逆ギレする人もいます。
このような本があることは同人誌として面白い・有用だけじゃなく私たち医療従事者としてもありがたい。
積極的に宣伝していきます。
また、健康診断・定期受診・人間ドックなどの予防医学の重要性についても触れて下さっていることが有難いです。
この3つに関しては並列して語るのには別物ですが「予防」「早期発見」の観点ではどれも大事です。
重症になってから突然ある日救急車で運ばれるのと、早期発見できたり、定期受診して病気の状態を常に把握できていたりは病気によっては予後(治り具合や余命など)が全然違う場合があります。
人間ドックなどは自費になるので、すべてが誰もが利用できる方法ではないにしろ、年齢と持病のバランスでは考えていただきたいです。
この本は筆者の経験を通して、このようなことを記してくれています。
・病気は予告せずに突然来る
・入院にはいろいろ道具が必要
・入院中の生活には入院してはじめてわかることがある
・人間ドックや定期受診の重要性
特にS字フックは医療従事者でも思いつかなかったものでした……w
確かにあれがあれば入院中は便利そうですね。
とにかく、非医療従事者である程度年いったフォロワーさんには間違いなくお勧めの本です。
素敵な1冊をありがとうございました。