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篠澤広同人誌「コントラストに焦がれて」感想

コントラストに焦がれて/Pumpkin Head(Clownさん、https://x.com/clown000
読了。
千葉から東京までの京葉線の車内と羽田から長崎への飛行機の中で読み切りました。
篠澤広の小説本。
Pドル要素若干あり。
Pixivでも書き下ろし以外は公開されています。
https://www.pixiv.net/users/128713

 読ませていただきました。
私より地の文が上手いのがいつも悔しい。
今回のエキスポの新刊として頒布されたこの本ですが、この本は今出ることに意味があります。
学マスは作中で時間の流れがあり、進級することが明言されています。
この同人誌では広が1年生の現時点でのお話だけではなく、広が飛び級で進学していた大学時代の話や、2年生以降に進級した後の話も含みます。

 もちろんこれは捏造、非公式です。
仮にこのあと学マス内の時空が進んでもこれには一致しないという意味でも完全にパラレルです。
だからこそ、これは今しか書けない。
その上で、現時点で公式から与えられたあらゆる情報を統合させて納得のいく篠澤広とその担当プロデューサーの物語を描いています。

 簡単にPドル、という分類をするのは乱暴かもしれません。
ですが、ちゃんと「アイドル」だけではなく「アイドルとプロデューサー」の物語として描かれています。
アイドルとプロデューサーは表裏一体であり、それはアイドルマスターという作品の根幹と言っても過言ではないと思います。
章ごとに広視点、プロデューサ視点で語られる物語。
これも非常に見せ方がいい。
こういう作風を邪道という人もいるかもしれませんが純文学じゃないんだからいいんです。
小説同人誌かくあるべし。
分かりやすさという意味でもいいと思います。

 さて、もう少し踏み込んだ感想を。
大学時代から現代(高校一年生)、二年生、三年生、エピローグと繋がる物語。
構成、見事でした。
特に広がアイドルをする意味を一歩踏み込んで考えるようになる過程が素晴らしかったです。
実際に、「ただ困難を経験したい」だけではいつかはぶつかる壁というのは想像すれば有り得る話ですしね。
そこに至るまでの夏祭りや誕生日などの場面の配し方も見事でした。
適度な甘酸っぱさもいいですね。
これは学生プロデューサーと学生アイドルとしての距離感故でもあると思います。
学マスの魅力をうまく同人誌にも落とし込んでいると思います。
個人的には広のサインを研究して自分なりに解釈し、あのストーリーにしているところに舌を巻きました。
逆に初星学園の負の側面は皆が想定しているところであり、あれをステップアップのきっかけとして描いているのもいいですね。
手毬や彼女のプロデューサーもいい味を出しています。
あそこで広が本格的に覚醒したともいえ、いい物語だと思いました。

 総じてギャグ、シリアスのバランスがいい。
よく本編を読み込んで緻密に描かれている高レベルな小説同人誌だと思います。
「二次創作」ゆえの素晴らしいお話だと思いました。
先程書いたように、「今」これを書くことに意味がある。
とても面白かったです。

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