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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

TRPGのシナリオネタにした特撮の話

 昨日に引き続き、箸休め的な内容の記事である。

 僕が最近よく卓を囲む仲間は、特撮ヒーローものをあまり嗜まない。なもんで、TRPGのシナリオやキャラの元ネタに、仲間の知らない特撮ネタを仕込むことがよくある。
 今回はそんなシナリオの元ネタの話――まぁ、言ってしまえば究極の身内ネタだ。


特捜戦隊デカレンジャー13話『ハイヌーン・ドッグファイト』

 以前も記事にした。特捜戦隊デカレンジャーのデカマスター初登場エピソードだ。とはいえ、ほとんどタイトルを拝借しただけの話でもある。ギリギリ共通点があるとすれば、「警察PCを主役に据えて、ヒロインを救出してもらう話」というくらい。

 元ネタは、デカレンジャーの司令官ドギーが現役時代に逮捕した宇宙犯罪者により、ドギーの大切な女性が攫われてしまうという話だ。犯罪者の目的は復讐。ドギーは、部下であるデカレンジャーには、市街地に出現した巨大爆弾の対処を任せ、自分はひとりで犯罪者の指定した場所へと向かう。もちろん、罠だとは承知の上でだ。
 ドギーはそこで、現役時代の伝説の刑事としての姿「デカマスター」に変身し、100人の戦闘員を斬り倒して因縁の宇宙犯罪者と対峙する。

 結構やりたいことを詰め込んだ結果、PC①の上司の話とか、犯罪組織の幹部の話とかが混ざって、まぁそれはそれで面白かった。のだが、やはり「ハイヌーン・ドッグファイト」の名前を冠するなら、それに相応しい再現性の高い内容に寄せても良かったなぁと今なら思う。
 上司の話と犯罪組織の話は別に設けるとして、純粋に「ハイヌーン・ドッグファイト」をやるならどうするか。

 PC①に主役となる警察官、PC②には①が信頼している探偵を置き、爆弾と人質救出というダークナイト的な二択を突き付ける。PC②が爆弾を引き受けて、①の背中を押して人質救出に向かわせる。
 その上で、PC①の周りに「敵は100体です! 1ダメージごとに1体倒せます。さぁ、どうぞ!」ってやったら、デカマスターの100人斬りシーンなんかも再現できたし、すげー気持ちよくRPしてもらえた気がする。

バトルフィーバーJ33話『コサック愛に死す』

 今回この記事を書こうと思ったキッカケの話だ。一昨日までYouTubeで無料配信されていた。スーパー戦隊シリーズ初期の名エピソードである。

 バトルコサックの大学時代の恩師が、悪の組織によって殺されてしまう。コサックは、恩師の遺された愛娘を気遣うが、目の前で父親を殺された少女は心を閉ざし、「(正義の味方も悪の組織も)同じよ。殺し合いをするんだもの」「血の匂いがするわ」と拒絶されてしまう。
 コサックは少女を気遣い、バトルスーツを持たずに彼女の心をケアしていくのだが、そんな中、悪の組織の襲撃に遭う。変身できないコサックは、少女を庇って命を落とす。このあと、バトルコサックのスーツは、同話で恩師を殺した相手を追っていた、大学時代の先輩に引き継がれる。

 このエピソードは丸ごと再現したわけではなく、NPCの過去に使用させてもらった。つまり、シナリオヒロインが少女で、その少女の親友がコサックだ。親友は腕利きのサムライだが、少女のトラウマを気遣って武器を持たずに彼女と接し、それが原因で命を落としている。

 「コサック愛に死す」は名エピソードなのだが、それはそれとして、少女のアフターケアとか全然してない。後半は二代目コサックへの交代劇に焦点が移ってしまった。「どう考えても女の子にとっては一生もんのトラウマだろ!」と思ったので、その辺を解決するためのシナリオになった。
 ヒロインの名前は、バトルコサックの本名である「白石謙作」と、少女の名前である「まゆみ」から取った。これはYouTubeで「コサック愛に死す」を見るまですっかり忘れていたのだが。

 このエピソードは、当時の流行っていた刑事ドラマの「殉職回」の特撮ヒーロー版アレンジといった趣がある。殉職の経緯がヒーローものならではの内容になっているのが、評価されている理由にもなっていそうだ。
 少女のケアを放っぽってるところとか、ツッコミどころもなくはないのだが、普段はムードメーカーをやってるコサックが、少女の言葉を気にしてしきりに手を洗うシーンなんかは、質感があって非常に印象的だった。
 コサックの役者さんは、当時の俳優さんの中では比較的線が細くて若々しい、爽やかなイケメンだったので、そうした点からのギャップも、本エピソードの悲惨さを際立たせている。

ウルトラマンティガ32話『ゼルダポイントの攻防』

 「相棒」シリーズにも参加している太田愛氏が脚本を務めるエピソード。氏はウルトラシリーズに何度かゲスト的に参加していて、人間や怪獣、宇宙人の心理を重視した作風は評価が高い。

 「ゼルダポイントの攻防」は、かつては新エネルギーとして期待されていた危険な爆発性ガス「ゼルダガス」を巡る物語だ。
 ゼルダガスは遺棄が難しいため、現在はゼルダポイントと呼ばれる場所に封印され、第一人者である博士のもとで無効化の研究が進められている。
 そこに現れたのが、巨大な鳥型の怪獣だ。博士は、その怪獣が亡き娘の飼っていた小鳥「シーラ」であると看破する。娘とシーラは、博士の研究していたガスの爆発に巻き込まれており、娘は死亡、シーラはその影響で怪獣になってしまったのだ。
 シーラの目的が、飼い主の復讐――施設の破壊と、博士の殺害であると考えた防衛チームとウルトラマンティガは、総力をあげてゼルダポイントを死守。だが、手負いのティガが倒され、ついにシーラはポイントに辿り着く。
 シーラの目的は、復讐ではなかった。罪悪感から研究に没頭するあまり、このままでは命を落とすところだった博士を救うためにも、シーラはゼルダガスをすべて吸収し、宇宙へ飛び立つ。

 ウルトラマンのシナリオは単品で完成度の高いモノが多く、怪獣や宇宙人などが話を動かす中核になっているので、割とTRPGシナリオにしやすいと思う。本エピソードもそのひとつだ。
 ゼルダガスを細胞、シーラの正体を猫に変えて、「娘を失い、贖罪の為に命をかける科学者と、それを狙っている(ように見える)怪獣」というベースを守ったままシナリオにした。

 使用システムはクトゥルフなのだが、「怪異(シーラ)への対抗手段」が薄いシステムだったおかげで、「怪異の目的を調べるうち、なんかだんだんいい話の気配がしてくる」という空気感を上手く作れた。
 最終的に、PCがシーラの真意に気づいて、命の尽き掛けた彼女を博士の元に連れて行くというのが終盤の流れで、いろんな友人に回したが、評判が良くてうれしかった。

 「ゼルダポイントの攻防」で博士を演じたのは、寺田農氏だ。仮面ライダーWが好きな身としては、ついついテラードーパントのイメージが強くなるのだが、こういう穏やかな老人役も似合う方だった。ウルトラシリーズではむしろこういった役割の方が多かったなぁ。

ウルトラマンティガ11話『闇へのレクイエム』

 先にTRPGの話をすると、上述のシナリオの間接的な続編として制作した。件の細胞が残っており、それを巡って起こった事件の話だ。システムは変わってトーキョーナイトメアである。

 元ネタは、防衛チームのコメディリリーフである「ホリイ・マサミ」とその旧友の物語だ。
 突如出現し、突如姿を消した怪獣の影を追ってやってきたホテルで、ホリイは旧友と再会する。防衛チーム発足前、同じ宇宙開発センターに勤めていた同僚であり、何をしてもホリイより優れた結果を出すエリートだった。旧交を温め、過去の想い出を振り返る二人。
 旧友と分かれた後、ホテルの付近に怪獣が出現する。怪獣はすぐさま消えてしまうが、ホリイは発信機をつけることに成功。その発信機を追っていくと、その旧友から、怪獣と同じ反応が出ていることがわかる。
 旧友の過去を洗った結果、宇宙から飛来した危険な細胞の研究をしていたことが発覚。ホリイは旧友を問い詰めると、旧友はエリートであるがゆえに感じ続けたプレッシャーを吐露。自分が防衛チームに選ばれなかったことへの焦燥感や、ホリイに対して感じていた劣等感などから、危険な細胞に手を出したことが発覚する。
 旧友は「一番じゃない僕なんか、誰も好きになってくれない!」と叫び、細胞を制御しきれずに怪獣になってしまう。

 TRPGでは、PC①に旧友を生やし、やはり同じようなエリートとして描いた。犯罪組織が旧友の研究に出資をしていたり、その犯罪組織の人間が、同じ細胞で2人めの怪人になったりと、ちょっと仮面ライダーっぽいテイストも入れたが、やはり主軸は旧友のコンプレックスと後悔である。
 原作では旧友は死亡しているが、TRPGでは助かっている。これはウルトラマンの話をTRPGシナリオにするとき、気を付けた方が良いなーと思っていることだ。ウルトラマンのエピソードは結構ゲストが悲しい結末を迎えたり、「人間は愚か」的な問題提起をする結論になることが多い。
 まぁ、それがウルトラマンの魅力なんだけど、そういうのTRPGでやりたい? やらせたい? って話になると、「ちょっと違うかもねー」と思う。有名なジャミラの話だって、戦闘後にジャミラが苦しみのたうって死ぬのを見るだけのエンディングはあまりにも辛いし……。ジャミラの娘と交流して、彼を人間に戻す方法を探り、それでも止まれない彼を力づくで止めた後に救う話の方が、プレイヤーとしては気持ちがいい。個人の感想です。


 ここに紹介してないエピソードもまだまだあるんだけど、今回はこんなところかな。ティガ・ダイナ・ガイアの話は、けっこうTRPGシナリオにしてみたいと思える話が多いイメージがある。
 というか、このあたりに関わってる小中千昭氏がクトゥルフ大好き人間なので、割とクトゥルフと親和性の高い話が多いのかもしれない。
 昔覗いたサイトでは「オビコを見た!」をクトゥルフにしている人がいたし、「時空をこえた微笑」とか「幻の疾走」とかは、コンパクトにまとめつつ良い話が作れそうだ。というわけで作ろうと思います。

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