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仏版シティーハンターを見た

 めちゃくちゃ面白かった。
 今回は重大なネタバレ無しで話そうと思う。

 フランス版シティーハンターは、主演のフィリップ・ラショーが原作者の北条司先生に直接ラブコールを送り、その製作が実現した映画だ。これは何の裏付けもないコタツ情報なので間違ってたらゴメンね。

 漫画作品の海外実写化という、要素としては地雷満載の作品だけど、ファンの評価がめちゃくちゃ高い。原作愛と再現度合が半端ないのだ。
 でも僕はシティーハンターファンとしてはにわかも良いところなので、この映画がファンアートとして如何に優れているかは他の識者に任せたい。この映画の良いところは、シンプルに映画として面白いところなのだ。

 筋書きは、「最強の惚れ薬」を護衛するという実にしょーもないミッションから始まるのだが、この「惚れ薬」が単なるマクガフィンに終わっていないのが良い。惚れ薬でできそうな面白いことをガンガンやるので、面白いシーンがずっと続くのだ。誇張抜きで、「惚れ薬」というネタを世界で一番上手に擦り倒したエンタメ作品とすら言えるかもしれない。

 アクションも見どころ満載で、特に中盤のスクラップ置き場でのバトルなんか発想と機転が素晴らしかった。
 総じて、ファンムービーであるというところに胡坐をかいていない。一個の映画として良いモノを作ろうという気概がそこかしこに感じられるのが、この作品の良いところだった。

 勢いで、フィリップ・ラショーの映画をもうひとつ紹介する。「バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー」は、これまたフィリップがアメコミヒーローへの愛を爆発させた最高のパロディ映画だ。
 そして、やはりそうでありながら独りよがりになっていない、美しく構成された脚本によって、ひとつの映画として非常に高い完成度を誇っている。

 これは、映画のスーパーヒーロー役に抜擢された主人公が記憶喪失になり、自分がスーパーヒーローだと思い込んでしまうコメディ映画だ。これだけで発想の勝利と言える映画だが、本作はそのシチュエーションに対して真摯な作品作りをしている。
 記憶を失った主人公が、些細なきっかけから自分がヒーローなのではないかと疑うようになり、そして妻子を救うため、巨悪と戦う決意をする。この過程を、一切茶化さず真剣に描くのだ。「ヒーローとしての自覚がない状態で、凶悪な犯罪者と戦うという決意そのものが、ヒーローの証だ」という文脈を、大真面目にやるのだ。正直、僕はヒーローの覚醒シーンとしてめちゃくちゃ好きな演出だったよ。
 「シリアスな笑い」という言葉が浸透しているように、シチュエーションが優れているコメディは、それを真剣にやればやるほど面白い。主人公には妻子も、戦うべき巨悪もいない。だからこそ、一切手を抜かず、全力で最高の演出をすることが、最高のギャグシーンになるわけだ。

 ラストの大オチに至るまで、脚本の構成力は素晴らしい。
 「フランス版シティーハンター」と「バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー」。このふたつを立て続けに見た僕は、フィリップ・ラショーの才能にすっかり魅了されてしまった。
 彼が主演・監督・脚本を務める映画はまだあるが、未来の作品にもぜひ期待したいところである。
(Get Wildのイントロが流れて歩き出す)

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