観劇記録|『遥か月へ飛ぶ日まで』
劇団ふだいさんの冬季公演が2024年の観劇始めとなりました。毎年大学入試の時期に冬季公演をやっておられて、毎年「ロックだな……」と思っています。この日試験を受けて富大に合格した人が来年のこの日舞台に立つ。熱い。熱すぎる。
私が演劇を始めたのも大学生からでした。高校演劇から演劇を続けているサークルの同期も居た中、大学から演劇を始めた私は遅いスタートだと思っています。それでも、サークルの同期は本当に仲良くしてくれたし、先輩も後輩も演劇が好きで、サークルが好きで、本当に楽しい思い出しかありません。ふだいのメンバーさんも、きっとそんな楽しい思い出がつまった4年間を過ごすのだろうなと思います。そんな思い出になる一時を観劇する側の人間として見せてもらえるのは嬉しい限りです。
基本的に、「稽古の中でできること、これをやったらワンランク上のお芝居になるだろうな」と思うことを書いています。ですが、「楽しく演劇をする」という枠からはみ出すような感想もあるかと思います。ふだいさんや役者それぞれの方がどんなコンセプトで演劇と関わっているか私にはわかりません。過去のふだいさんの感想等をご覧いただき、読んでも自分にとって不愉快にならないな、と思う判断ができる場合ご覧ください。また、ほかの団員さん等に周知する際も、その方が大丈夫かご配慮の上勧めていただければ幸いです。スタッフさん、キャストさん共に良かったところも気になったところも書くので、自身で判断をお願いいたします。
劇団ふだい2023冬季公演
『遥か月へ飛ぶ日まで』
作・演出| 夏宮日和
出 演 | みんみん 粟守九十九 かいせー 日向寺彩
白城菜摘 無因由 リーノ 犬飼結弦
at 富山県民小劇場オルビス
2024年1月13日(土)13:30開演
上手真ん中くらいより観劇
あらすじ
西暦20XX年現在。月に住まうのは6匹の兎だった。
地球から飛び立った宇宙船などが月に墜落する度、その宇宙船の資材や食料を得ながら兎たちは生きていた。毎日当番制の餅つきをしながら。
そんなある時、大破した宇宙船から1体のなんかすごい機械(アンドロイド)、アイビーが発見される。兎たちの資材から電源を供給し起動し直したアイビーは、そこにいたうさぎ1号(みんみん:以下1号)をマスターとして認識登録する。そのほかの兎たちにもアイビーを紹介し、生活をサポートするためにアイビーは兎たちと生活を共にするのだった。
兎たちとも次第に仲を深めていくアイビー。アイビーと交流をしていく中で、うさぎ4号(日向寺彩:以下4号)はアイビーを作ったのが、以前に月にやってきた宇宙飛行士(犬飼結弦)だったことに気付いてしまう。
宇宙飛行士は乗ってきた宇宙船が月に不時着し、幸か不幸か1人生き残ってしまった。その時、4号と出逢い、癒され、話し相手にするのだ。4号は彼女から言葉を教わり、宇宙船を直すまでに至る。宇宙船と共に旅立った彼女と彼女を想い続ける4号。
4号が逢いたくてたまらない宇宙飛行士だったが、その気持ちをひたすら隠し、さらにほかの兎たちにも秘密で宇宙船を製作する4号。その宇宙船で4号は宇宙飛行士が居るであろう地球へ向かうつもりなのだった。
そして月に響き渡る轟音。また資材が落ちてきたのか、と思う兎たちだったが、うさぎ5号(白城菜摘)の悲鳴が聞こえる。いつもと様子が違うことに動揺する兎たち。駆けつけると、どうやら不時着した宇宙船だったが、生存している人間たちが月を荒らしているようだった。そしてそこで知りえた情報は、「彼らが地球に残った最後の生き残り」であるということだった。
その事実にショックを受ける4号。他の兎たちは4号の様子が気になり、アイビーの助けも借りて4号の元へ向かう。そこで4号が宇宙船を作っていることを知る兎たち。1号と喧嘩になってしまう4号だが、仲直りし、全員で宇宙船をつくることにするのだった。
完成した宇宙船に乗り込み、地球へと向かう兎たちとアイビー。ところが、途中でトラブルが起き、大気圏から脱出できない状態になってしまう。アイビーはそれを自分が解消することで兎たちをサポートし、散ってしまう。地球に降り立った兎たちは、時間をかけて地球で生き、子供たちが生まれ育つ頃にまた彼と出会い、過ごす日々を取り戻すのだった。
沢山の情報を伝えるために基礎がある
私が大学生の頃、同じ演劇サークルの同期にある役者さんがいました。私と同学年でしたが、その子は年齢が一つ上でタバコを吸いながら「1浪してるんだよね」とあっけらかんという子でした。
ある学内公演の後、大学の合宿所(畳の部屋が4部屋くらいある建物)のロビーでその子がタバコを吸いながら淡々と言いました。
「これまで基礎なんて全然、って思ってたけど、今回の公演ですごい思った。基礎って必要なんだなって。滑舌が悪くて、全然伝わらなかった。伝えたいことが(基礎が無いことで)伝わらないって痛感した」
彼女は歯並びか舌が短いかのせいで、舌っ足らずになりがちで、滑舌があまりよくない方でした。それは本人もわかっていたのですが、それを公演後に痛感したというのを聴かされました。
私は滑舌やアクセントで苦労したことはあまりありません。高校時代放送部で滑舌はよくやっていたこと、自分の方言があまり好きではなく、共通語を意識して使っていたことがあるからです。
基礎は大事、というのはよく聴く話ですが、具体的に基礎が無くて何がダメかというのを知る機会はありませんでした。それに気が付かせてくれたのが彼女でした。
この言葉で、私もハッとした覚えがあり、基礎うんぬんの話をする時は、必ずこの彼女のエピソードを話すことにしています。
台詞が聴こえにくいことで、観ている人の何かを奪います。
それは集中力であったり、現実に引き戻されることであったり、役ではなく役者さんに気付くことであったり、違う思考を引き起こすことであったり様々です。精度の高い台詞はそれだけで情報量が違います。
言葉が引っ掛かった「ありがとう」と
すらすら流れるように出る「ありがとう」という言葉でどちらがより「ありがとう」という意味や意図が伝わるか。もちろん状況やキャラクターによっては前者がよりフィットすることもありますが、「ありがとう」という感謝の意味が100%の台詞であれば、後者の方がより精度が高い気がします。
基礎はそれが出来ているだけでも情報量を多くすることができる可能性を秘めています。
別に私は基礎は必要だと思った人がやればいいと思っています。
まわりからどんなに基礎が大事、出来ないとマズイと言っても、本人がその必要性を実感しないと結局基礎への意識は変わらないと思っているからです。プロになりたいというのならば強制的にもやった方がいいと言いますが、好きで、楽しく演劇をするという枠の中では、別にそれはやりたい人がやればいいんじゃない?くらいでいいのかなと思っています。
ただ、無いよりはあった方が演劇が楽しくなると私は思っています。そして、基礎ができているだけで上手く見えます。めっちゃお得です。ローコストハイリターン。
当日パンフレットの演出コメントにもありましたが、このコロナ禍で途絶えたことの中に、基礎的な部分も少しはあったのかなと思います。技術や練習かもしれないし、物理的に基礎練をする時間かもしれない。普段の稽古では気にしていなかったことでも、公演というひとつの形になったときに、足りなかったものって見えてくるような気がします。もっと早くわかるようにして!って思いますけど、もしかしたら稽古をしながら薄々気が付いていた人もいるかもしれません。
公演を観せていただいて、言えるとしたら2つ。
この基礎的なところができれば、今よりもちょっぴり良くなって、ぐんと上手く見えるだろうなということです。
1つ、発声を鍛える
この公演、4回を終えた後の役者さんたちが多分一番痛感しているんじゃないかと思います。私は初日、初回に観劇させていただきましたが、途中から声が出なくなってきたな、という役者さんがいたんじゃないかなと思います。演出だったらそれは演出として「ちょっとそこはもうちょっと演出…」と思うのですが、そうでなければ本番中や本番後、声が思うように出てくれない、出なくなった、身体が思うように声を出してくれないなどと思う瞬間があったかもしれません。
声が大きいと、それだけで感情(意図)の伝わり方が大きくなります。私たちの演劇仲間の間では、「とにかくよくわからなかったらとりあえず大きい声を出して台詞を言えばいい」というのが通説です。笑。
声を大きく出すには感情(意図)を大きくすれば良いです。だから、単純に感情が大きくなり、大きな声のためにより伝わる、という構造です。ちなみに大きな声でお芝居ができない理由にはいくつかあります。
①感情を出すのが恥ずかしい
②感情が前に飛ばない(内側に向かってお芝居をしてしまう)
③自分で「ここまで」というイメージ(限界)をつくって芝居をしてしまう
④単純に声が出来ていない(基礎ができていない)
などがあるんじゃないかと私は思っています。
今作を見せていただいて思ったのは、③と④が理由だと感じました。基本的に④はほぼ全員で、③は何人かの役者さんです。
③は精神的な意識を変える必要があってちょっと難しいですが、④は物理的に時間を使って基礎をやれば解消できます。誰でも向上できます。
公演と公演の間のインターバルが短くて基礎練を十分やる時間がない、というお話もちょっと耳にしたので、全員で基礎を底上げして行こう!というのは難しいかもしれません。声を出さなくても息だけでできる基礎練もありますし、そうやって積み重ねた基礎は必ず形になり効果がでます。
過去に基礎練をみっちりやっていたふだいの世代の子の基礎を見せてもらったことがありますが、その子はふだいを巣立った後もしっかり基礎が身に付いたままの状態でした。凄いなと思いましたし、私の基礎も大学の演劇サークルで身につけたものです。20年以上経った今もその恩恵を受けています。
声が出る、出来ているというのは演劇だけでなく、就活にも、その後の仕事にも生かせるので、いいと思いますよ!(謎の売り込み)
1つ、意識して立つ
私の中での基本的な基礎というのは、
・発声
・動作(立つ、歩く、走る、座るなど)
の2つです。
先に挙げた発声に加えて、この「動作」を身につけることで自分のお芝居がちょっぴり良くなります。私が体練と呼んでいる身体のトレーニングをやらなくても、自分が意識するだけで改善できます。明日からでもすぐ実践して良くできるところです!もちろん、意識するのは大変なので、意識しなくてもそれができるようにするために、動作の練習をするのです。本番の舞台でそこに意識をかけるなら別のところに意識を使いたいから、意識しなくてもできるように練習する、楽をしたいから練習するだけです。
スポーツをやっていた人は、この動作は比較的出来ている人が多い印象です。私は万年文化部で運動が苦手、スポーツも下手なので、この動作ができるようになるのはとても大変でした。演劇サークルに入ってから、立つ、歩く、走って止まる、ターンする、どこを動かすとどう見えるか確認しなくてもできるようにする…など先輩に見てもらってやっと普通になりました。この時運動ができる人が本当に羨ましかったです。
私も言われることがありますが、背中、肩甲骨あたりから首、頭が前のめりになっているのが今回は気になりました。キャラクターにあっていれば姿勢が悪いのは良いと思いますし、むしろ役作りのひとつとして考えたいなというところです。今回で言えば、うさぎ3号は演じられたみたいにやや姿勢がパキッとしない感じがキャラクターにあっていました。背も高いので、ああいう「感じ」を出すにはセンスがいるから凄いなぁと思いました。
逆にキャラクターとしてしっかりスッと立つ姿勢が多かったうさぎ5号もキャラクターに合っていました。ビビりなのは根が真面目なところから来ているのかもしれないな、と思わせる立ち方です。アイビーも機械という点で立つということにとても気を遣っているのがわかりました。
ただ「立つ」ということだけですが、それだけでキャラクターを表現できてしまうというお得さがあります。ですが、意識していないと、そういう意識で舞台の上に立たないと生かせない難しさもあります。
そして、「立つ」ができると応用ができます。
「崩して立つ」「しっかり立たない」という表現ができます。どうすることが「しっかり立つ」ということがわかるからこそ、外れることで生まれる表現だと思っています。3号の立ち方が、立つことができた上で崩せた表現なのか、センスでやってのけたことなのかで意味が違うかもなと私は思います。
スタッフ
脚本と演出
全体の感想として、とても脚本が丁寧で、やりたいことが明確だなと思いました。合っているかはわかりませんが、ここがメインなのかな、というエピソードもあっていい脚本だなと思いました。
最初のシーンからやや陰鬱な、けれども透明感のある空気が流れていて、これはこのキャストさんだから生まれたのかもしれないし、演出としてこの空気を求めてつくられたのならば凄いなと思いました。この平行線が続くような空気感で、この月の世界観や時間がとても感じられました。
色々試行錯誤があったり、時間がもっと欲しいと思った瞬間もあったかもしれませんが、演出さんがこうしてほしいということを丁寧に形にしていった集大成なのかなと感じました。キャラクターも感じられて、役者さんも演出さんの作品をキャラクターに上手く落とし込んでいるなぁと思いました。
これは演劇の経験などが関わってくるので、割と当てはまる場合が多いのですが、ついつい一列に並んでしまうところ。これが観やすく、作品にフィットする場合もあるのですが、この作品は非日常的な設定の中に日常感があった方がいいのかなと思いました。それならば、兎たちが不自然な一列に並ぶよりも、思い思いの、自分たちのお気に入りの定位置がありそうなもの。座る、立つ、腰かける、ちょこちょこと動いてしまうなど、キャラクターの性格や習性があれば、それを動きや立ち位置に落とし込んであげる演出がつけられたら、より日常の風景が濃く出たかなと思いました。
月面のクレーターからひょっこり顔を出す4号の演出はとても可愛かったです。頭から突っ込んだ2号…可愛すぎるな…ここもいいなと思いました。まだ他にもあのクレーター周りの高低を活かせる動きや演出があったらよりあの舞台セットの意味が強く感じられて良かったかもと思いました。
ラストの宇宙船をアイビーが何とかするシーン、あのクレーターの後ろや近くに立つみたいなところがあれば、宇宙船のエンジンや動力、噴出口などを連想させたかもしれない。正面に向いて座る宇宙船も迫力があってとても良かったけれど、クレーターを一番後ろにして、段差や大道具の椅子を配置して斜めの感じにしても面白かったかもしれない。色んなアイディアが出てこの演出になったと思いますが、まだ考える余地があったかな、という風であればもう少し練って見ても良いかもなと思いました。色んな演劇を観るとヒントがあるかもしれません。
4号と宇宙飛行士、アイビー関連のシーンは、観ている人に強く届くような、際立って見えるようなシーンにできたら作品全体が立つなと思いました。それが、お芝居を前に飛ばすことなのか、立ち位置なのか、お芝居自体なのか色々な側面から考えることができそうですが、このキャストさんとつくることができる側面からひとつ演出の手を詰めれば良かったかもなと思いました。
スタッフワークの気合、素晴らしき
いつも思いますが、ふだいさんのスタッフワークが素晴らしいです。今回も気合の入った舞台をありがとうございました!
舞台セット/舞台美術
このセットを創ろうと思ったのも凄いし、実際この形にしたのも凄い。劇場に入ってこの舞台セットがある風景にテンションが上がることしかない。役者さんもきっと気持ちよくお芝居が出来ただろうなと思いました。
宇宙船のところに衣類が干してあるのが凄く好き。生活。
汚しとか凄い。
あの宇宙船の座席になるセットを考えた人が凄すぎる。アレめっちゃいいですよね。これは演出ですが、動かして宇宙船の座席を作る時、わざと音を出して(バタン、バタン、って感じで)宇宙船が組みあがる音演出をつけても面白いと思ったけど、床がリノとかだったら音がでないか…と思って自分で却下しました。
舞台のスペースの問題でめっちゃ仕方がないと思ったけど、上手の後ろ奥の出ハケ(クレーターの右前)が若干役者さんが出ハケしにくそうだったのが唯一気にかかった点。
照明プラン/オペ
後ろのホリの色合いが綺麗で最高だった。暗転に入るスピードが個人的に気持ち良かった。フェダーの操作上手すぎか?マジックアワーな感じの色合いがいい~~と思った。
これは演出ですが、宇宙飛行士と4号の回想シーンはもうちょっと照明で回想ってわかる感じでも良かった気がした。気持ち暗めにするとか?
宇宙飛行士の長台詞のところのシルエットめっちゃ綺麗でしたね。(好き)
音楽/音響オペ
選曲がめちゃくちゃ良かった。効果音も込みで作品の世界観に合っていたな~と思った。その分、オペがもうちょっと頑張って欲しかった。これは演出部分でもあるけど、音量が足りてなかった。役者さんの台詞を消さないように絞り気味にしたのかもしれないけれど、世界観がその分小さくなってしまっていたり、お芝居の台詞とあっていないところもあった気がして気になった。役者さんの声ができていたら音も大きく出せるんです。
衣装/ヘアメイク/メイク
衣装とヘアメイク、メイクの方は本当に素晴らしい仕事をしたとしか言いようがない。あからさまではないキャラクターの色分けとコーディネイト、兎のしっぽ、耳の造詣、細かいところまで手を抜かない仕事が素晴らしかった。5号と6号の髪型が、どちらも役者さんにあっていて、尚且つギリギリい一番可愛くてキャラを維持するラインを攻めていて、これは凄いやり手がいるぞと思った。2号の前髪の一筋にはこだわりが感じられ、1号のもみあげはとても兎だった。特にアイビーにエプロンドレスを採用した方に5000兆円あげたい!!!!
足元が靴下そのままだったのか、そういう靴的なものだったのか確信が持てないが、役者さんが走るシーンで滑っていたので安全面でちょっと心配だった。足元をデザイン優先にするか安全優先にするかその辺りも詰められたら演出さんや舞台監督さんと相談してもらえたら安心して観劇できます。
宣伝美術/制作
今回のフライヤーデザインが、フォントまでこだわっていてとても素敵だった。SNSでも目を惹いたので、フライヤーやパンフレット、宣伝に関わった全員の力を感じた。チケットも手を抜いていないし、当日パンフレットに至るまで隙が無い仕事が素晴らしかった。スポンサー広告も担当された方は数多く対応されて、しっかりとした役割をみなさん果たされているなと思った。パンフのキャストページは、この観劇記録を書く際にとても役に立ったことをお伝えしておきます。もう名前と顔が一致しないんですよ…。
限られた予算の中でこの舞台から宣伝美術まで予算振り分けして下さった会計さんに感謝……。
終演後劇場の外に出たら、めちゃくちゃ団員さんがいっぱいいて凄いなって思った。めっちゃ演劇する人いる…って思った。
一緒に行った配偶者が、「三越の開店時間の時のスタッフさんのお出迎えみたい」と言っていた。めちゃくちゃ特別感があるので、体験してみたい人は最初に劇場から外に出るといいと思います。
キャスト
1号 さてはめちゃくちゃ上手いな?技術が高い。計算してお芝居ができていて、頭いいなと思った。(頭の悪さが露呈する感想を書いてしまった)
キャラクターの役回り、役割を分かっていて舞台に立っていた。後半の感情的なシーンも真っすぐ4号に向かって台詞を飛ばせていたし、入り抜きのお芝居も使えるし、どう魅せればいいか考えてお芝居出来る器用な役者さんだなぁと思った。欲を言えば、後半の2言くらい短い台詞が、キャラクターではなく役者さん自身のっぽい台詞に聴こえたので、抜いた時にキャラクターとして成立するギリギリを見極められたらさらに良かった。
2号 めっちゃカッコイイ。ただ立っているだけでカッコよく見える役者さんだと思って、それはもう親から授かった才能なので天に感謝した。(私が)時折(上手に立った時)、肩から頭が猫背っぽくなる立ち方をしていたので、そこをスッと伸ばした立ち方にすると、キャラクターの説得力があがってより良くなったと思う。背が高いことを舞台上で持て余していなくて、それが更に良かった。
3号 そのキャラとお芝居ができるのがセンスの塊。これは役者さんによっては出来ないので、才能でしかない。背が高いのに可愛く見せることができるのが凄い。
4号 描写や台詞的に難しかったかもしれないけれど、宇宙飛行士、アイビー、1号の流れに関するシーンは自分のキャラクターの感情(意図)を明確にして演じるともっと演じやすくなったかもと思った。演出の部分もあるけれど、宇宙飛行士にあった時の1号、交流して打ち解けていった1号、分かれて逢いたいが募っている(けれども隠している)1号で、どうキャラクターが変化しているかを整理して、お芝居や立ち方、性格の変化(弱かったけど自信がついて、宇宙飛行士との絆だから機械を触ることで強くなっていったとか)をつけて良ければ、観ている人がより世界に入り込めたかなと思った。しゃべり方や衣装などでしっかり者、というイメージがあるので、現在の1号はしっかり立つができたらそれだけでキャラクターが立ったと思った。
5号 めちゃくちゃ丁度いいバランスで世界の中にいて、センスあるなぁと思った。もうワンステップ上げるとしたら、びっくりしたり臆病になったりするシーンは、周りにいるキャラクターを使うと良いと思った。後ろに隠れたり、誰かの傍に必ずいたり、裾を掴んだりという動作で、キャラクターを深められると、関係性の中で役を表現できるようになると思った。手を前で組む以外の手の位置で弱い、臆病、という表現を取れたらそちらの方が良いと思った。(手を組むのが癖に見える。同じ理由で、意図しないのに腕を組むというのも2号、3号で気になった)
6号 めっちゃ難しい役だな~~~~~~~~~~と思った。これは演出でもあるけれど、最後のシーンで、アイビーと別れるのが~という下りに説得力を持たせるには、その前までのシーンがちょっと弱かった印象があった。
バランスが難しいけれど、動作の力加減をもう少し抜いたらわざとらしくなくキャラっぽい、というところに落とし込めたような気がした。
アイビー すご~~~く丁寧に役をつくってきたなぁという印象があった。ラストシーンの手前くらい(宇宙船で旅立った辺り…?)から、声が若干こもってきて疲れが見えてきたので、持久力!!ですね!!!
宇宙飛行士 めちゃくちゃ上手いなぁ…….。上手い子多いな…。回想の、シルエットのところのシーンが良かった。生き延びてひとりになったことに気が付いたところのシーンも良かった。宇宙服で重力を表現しながら歩くところ、表現に迷いがあるような表現の大きさだったので、自信をもってやっても大丈夫でした。もう少し舞台を広く使えると(その歩くシーンとか)より伝わる大きさが大きくなるので、より良かったと思った。
未来が長い人たちが希望を結末に据えること
思うように稽古や活動時間を捻出できなくて大変だった時期もあったかもしれませんが、劇団ふだいの公演記録のひとつに作品を連ねていけて素晴らしいなと思いました。
オリジナルの台本の醍醐味は、脚本家や書き手、その世代の人たちが何を考えていて、どんな世界で生きているかを垣間見られることです。
今回の作品は、宇宙船が飛び立ったところで終わりにすることもできた構成でした。けれども、その先とアイビーと再び出会う所まで描き切った、未来を描いたのはとても希望があるなと思いました。別の世代が未来を描くとはまた違った意味や希望があるなぁと思って、とてもよい結末だと思いました。
サポートいただいた分は全てお芝居をつくる何かになります。 一緒にお芝居をつくってくださったら嬉しいです。