富山で演劇ユニットを結成すること①
演劇ムーブメントえみてんが結成される前
現在、私は富山で演劇を中心とした活動をする、演劇ムーブメントえみてんという演劇ユニットに所属しています。
ユニット名と私の名前から察していただけるように、ユニット名に私の名前が入ってしまっています。これは、「ユニット名に名前を入れておけば逃げられないから」という、主宰のありがたい配慮によるものです。
そんな演劇ムーブメントえみてんですが、結成したのは2018年です。細かく言うと2017年辺りから準備などで動いていたのですが、2018年に結成を周知し始めたので、この年の結成ということにしています。この年に初めて公演をしたので、わかりやすいかもしれません。
元々、私は劇団フロンティアという黒部の老舗アマチュア劇団に所属していました。今は休団扱いにしてもらっているので、一応形だけは所属なのですが、ほぼ活動に参加していないので、過去形です。
2008年に富山にUターンしてきてから、えみてん結成までの約10年間、フロンティアで舞台に立たせてもらいました。
そのフロンティアに、えみてん主宰の天神さんが客演をするようになりました。そして、一緒に作った『みんなの宅配便』という舞台の打ち上げ後に、演劇ユニットをやろう、と誘われます。この作品で天神さんと共演しなかったら、えみてん結成は無かったかもしれないし、結成にもっと時間がかかっていたかもしれません。
県内でのユニットの立ち位置
富山で劇団ではなく、ふたりで立ち上げるユニットというのは今まで聞いたことがありませんでした。また、ずっと地元で活動していた役者ではなく、一度県外で、東京でお芝居を学んだ役者が地元でユニットとして演劇をするというのも初めてだったかもしれません。
地元の劇団で活動してきた下地があったとはいえ、それまで地元でアマチュア劇団で活動してきた人たちにとっては、道場破りをしそうな二人組、と思われていたかもしれません。それくらいの勢いや熱量だと思って貰えるくらい、それまでの私は自分の力以上のお芝居を求められない環境や、周りのレベルに合わせてお芝居をすることに苛立ちがありましたし、むしろもうそんな風にお芝居をすることはないと諦めていました。
だから、富山に戻って、初めて遠慮せずにお芝居をしてもいいという環境であったり、アマチュアだからと諦めていた部分や、クオリティを上げていける環境は素直に嬉しく思いました。ただ、地元の劇団にとっては迷惑や恐怖を感じた人もいたかもしれません。趣味で楽しく演劇をする、自分たちが出来る範囲で高いクオリティの作品を作る、という価値観でやっていたのに、そこにプロ志望(あるいはプロ)レベルの人たちが、その意識のまま作った演劇が並べられるということになったからです。
今は、私たちの演劇を観て貰った結果、県内のアマチュア劇団からは頭一つ抜けている、そういう場所で演劇をやっているユニットとして、趣味でやる以上の集団だと線引きが出来てされているような気がします。そう認識してもらうまでは、「あいつら何をはじめるんだ」「自分たちが楽しくやっているのに邪魔されたら困る」などと思われていたかもしれません。
天神さんに出会ったきっかけ
天神さんを最初に見かけたのはTwitterでした。
当時、私は劇団フロンティアの公演『まほろば』の稽古中で、自分の集客のため、富山県内で演劇をやっていそうな人、お芝居に興味がありそうな人を検索していました。そこで、魚津で撮影された映画『スケッチブック』という作品に出演している人がいる、というのを知りました。それが天神さんでした。
『まほろば』という作品は、群像劇で、わたしはミドリという役を演じていました。その作品は私も気に入っており、仕上がりも良かったので、「この作品であれば、誰を誘っても面白いと思って貰える」という自信もありました。そのため知らない人であっても、積極的に、TwitterでDMから公演案内を送っていました。そのDMを送った相手のひとりが天神さんです。その時は、快く返事をもらって、公演を観に来てくれました。
公演後、そのまま劇団の打ち上げに誘い、お芝居をやっていることなどをざっくり聞いたと思います。そして、劇団フロンティアお得意の、打ち上げで次回公演出演のスカウトをし、天神さんは次回公演に出演することになります。
えみてん結成のきっかけになった公演
天神さんが初参加した『ウェルカム・ホーム!』から『赤シャツ』『広くて素敵な宇宙じゃないか』を経て、『みんなの宅配便』を上演しました。
この『みんなの宅配便』は、私の方から天神さんに出演をお願いした作品です。『赤シャツ』の本番中、出番が終わってしまった私と天神さんは楽屋で待機していました。その時、
「まだ戯曲が発売前だけど、もし読んで面白かったら、一緒にやってほしい」
という感じで誘いました。戯曲を読んでいない状況でしたが、多分面白い、という予感がありました。
天神さんは普通にOK、みたいな感じで、その後届いた戯曲は案の定面白かったので、天神さんにも読んでもらいました。その後すぐに「OK、やろう」みたいな返事が来たと思います。
あとから聴いた話ですが、全部読まずに、2~3ページだけ読んですぐにOKの返事をしたそうです(笑)
そして、『みんなの宅配便』の稽古が始まり、公演を迎えます。
この公演は、公演チラシから舞台写真まで、それまでの劇団フロンティアのやり方とは違うやり方をさせてもらいました。今もえみてんで舞台写真を撮ってくれるカメラマンはこの公演から協力してくれました。スタッフも、今のえみてんに関わっているメンバーがメインでした。演劇ムーブメントえみてんの形が、大体この辺りに出来ていました。
それまで、天神さんは劇団フロンティアに客演はしていたものの、所属する意思はありませんでした。私もそれは知っていたので、この公演が終わったら、天神さんはあまりフロンティアには関わらなくなりそうだし、私も今まで通り、フロンティアで何となくお芝居を続けていくんだろうな~と思っていました。それゆえに、打ち上げ後、
「それぞれまた頑張ってお芝居をやっていこう」
という感じで別れの挨拶をしていました。
その直後、天神さんから、
「えみちゃんと俺でユニットをやるから」
という言葉が出てきます。
私はこれが最後だろうな、という思いでやっていたのに、全く逆のことを言われ、かなり戸惑いました。その場ですぐに返事はせず、日を改めて返事をしたのではないかと思います。
そして、その結果、演劇ムーブメントえみてんが結成されました。
2017年、3月~4月頃の出来事でした。
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