コロナで500日間休業してた
2020年4月半ばからコロナ他諸々の理由で会社都合の休業が始まり、「毎日が日曜日」などと言って楽しく自炊していたが、振り返ってみれば500日程度の春休みであった
毎度月末ギリギリになって「来月も休業」と連絡がくるような体たらくだったので、半月先の予約は立つが2,3か月先の予定は一切立たず、休業手当が10万円弱という兵糧攻めを食らっているのにその場しのぎのバイトもできず、ひたすら毎日近所のスーパーに通っては自炊をしていた
最初の数か月は「ああ~~休みだ~~」と思う存分羽を伸ばし、月末が近づくと「ああ……仕事が始まるのか……」と鬱になっていたが、さすがに何度も繰り返すと「どうせ来月も休みやろ」となる。最終的には、休業が続けば毎日が日曜日で嬉しいし、休業が終われば収入が増えて嬉しい、どちらに転んでも嬉しいやんけ、と悟ってからは何とも思わなくなった。
相変わらず2カ月先の予定が立たないので貯金はゴリゴリ削れるが、よく考えてみると、こんなに何カ月も何もしなくてよいのは幼稚園入園前以来であり、自分の人生にとって間違いなく超特大イベントで、たいへん貴重な機会なのだった。結果、普通に働いていては経験できない生活を送るべきという考えに至り、とりあえず貯金が持つ間はあんまり深く考えないことにした。
金がないので毎日が自炊である。このコロナ休業の最大の成果のひとつが、自炊スキルの劇的な向上だった。時間だけはあるので、毎日スーパーを回る。存在は知ってたけど行ったことない近所の店から、ちょっと離れた店まで、行ける範囲のスーパーはすべて絨毯爆撃した。
スーパーには、肉が良い店、魚が良い店、野菜が良い店、弁当が美味い店、などそれぞれ特色がある。生鮮食品は水物なので、すごい掘り出し物が転がってる日もあれば、何もない日もある。特に、魚市場の仲卸が運営するスーパーがあり、どこよりも新鮮な魚が他の半額で売っているため、ほぼ毎日通っていた。その店がなかったら乗り切れなかったかもしれない。野菜も2020年以降ずっと豊作で意味不明な安さが続いており、農家には申し訳ないが、消費者としては大変助かっている。というか「野菜が安い」という認識ができるのも自炊に勤しんでいたからこそである
ところで、最初のうちこそずーっと遊んでいたが、さすがに2カ月3カ月も遊んでいると「これはやばいな」という自覚がわいてくる。プログラムをしないと技術者として死んでしまう。社会貢献もしたほうがいいし、社会との交流が必要である。ということで、エンジニアとして参画しているものの、あまりのレガシーコードに数年放置したままの新都社に手を付けることにした。2020年5月~8月くらいまでほぼフルコミットでリファクタリングや新規機能開発、UI改善など行い、ある程度の成果をみたと思う。フルコミットというか、力尽きるまで開発して、力尽きたら寝る、起きたら開発、をやっていたので、通常の仕事より働いていたと思う
新都社について、こうしたほうがいいなぁ、と思うことはたくさんあるが、私はあくまでお手伝いさんなので(とはいえ開発エンジニアは私一人だし、一定の権限は与えられているが)、提案・相談以上のことはできない。すでに多量のコンテンツ・ユーザーがあり、レガシーコードもあるので、あまりにドラスティックな仕様変更も難しい。ということで、一定の互換性がありつつも、不満点について改善した形の漫画投稿サイト「まんがおきば」をスクラッチ開発した。夏~秋あたり。
2020年の秋~冬あたりは特にアメリカの政情が紛糾していて、とにかくtwitterの治安が悪かった(もうずっと悪いが)。そのほか諸々の理由があって、遊び半分でtwitterみたいなSNSを作ってみたところ、意外と人が来てしまったので、ちょっと真面目に作ることになり、Meowが誕生した。もうずっと使い慣れたPHPで漫然と開発するだけだったので、ActivityPubとかいう新しいものを勉強できて楽しかった。
2021年前半分の記憶があんまりないが、2020年は無職といいつつ、ひたすら開発しまくっていたので、2021年はあんまり開発してなかった気がする。代わりに部屋を掃除したり模様替えしたりとQOLを改善したり、ベランダでピーマンを育てたり、半日かけて近所を散歩したり、自炊したりしていた。
散歩はよくやったが、本当に何の時間にも追われず、散歩するために散歩していると、今まで見えてなかったものが沢山見えるようになった。道端にはわんさか草や木があり、花や葉の色がある。何にもない住宅街に見えていた家々の庭にも手入れされた植木があり、花や実がついている。そこらじゅうに分布するドクダミ、ところどころに聳え立つクソデカ百合、謎の柑橘。猫じゃらしがアワの原種ということなので、採ってきてフライパンで炒ったけどイマイチだった。飢饉になったら一生懸集めたい。
すぐ近所に川や湖があるが、平日休日関係なく毎日いろんなおじさんが朝から釣りをしている。水鳥がわちゃわちゃしている。朝、外から聞こえてくる鳥の鳴き声はなんていう鳥なのか気になるようになった。
比較的コロナが落ち着いた頃合いを見計らって、車で一泊程度の温泉地にもちょこちょこ行った。道の駅が大好きなので、毎回しこたまお土産を買ってしまう。温泉第一なので安宿専門だけど、安宿って楽しくて好き
幸い、コロナ休業は転職活動によって2021年9月に終了したが、新しい会社がフルリモート・フレックス・残業少な目なので、就労した気がしていない。毎日布団でごろごろして、起きたらPCかちゃかちゃしてるだけなので、休業中の自宅開発と大差ない。エンジニアのリモート勤務もフレックスも、自己管理のできるスーパープログラマのやるもので、自分には縁がないと思っていたが、おねがいツインズを見ておぼろげに憧れた生活が、20年遅れで突然やってきてしまった。もう都内通勤に戻れない。
新しい会社は男性も産休・育休がもらえるらしい。男性育休は支援制度を活用すれば手取りも8割は維持できる。月収10万の極寒に比べれば天国である。自分のクローンが世界に発生してしまうことに困惑している。ピーマンしか育てたことないのよ……