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「バーニング・シーズン」信念の銃弾に倒れたブラジルの熱帯雨林活動家、チコ・メンデス

THE BURNING SEASON(94)
ジョン・フランケンハイマー監督作品

ブラジルのゴム採取業者が、新しい道路と牧場の土地のために熱帯雨林の一部を切り倒そうとする政府や開発業者に抗議して人々を率いる実話に基づいています。
金持ちや権力者は、何事にも立ち止まらず、しばしば殺人に訴える。

80年代半ばに彼の仕事が原因で殺害された、実在のアマゾンの熱帯雨林活動家チコ・メンデスの物語です。

この映画は、何世代にもわたって受け継がれてきたブラジルのゴムタッパーの生活を描いています。その存在は、彼らの計画に道を譲るために熱帯雨林を燃やそうとするならず者の牛男爵や他の産業海賊によって脅かされています。メンデスと彼の信奉者たちは、その数と体で開発者に対抗。
彼らは、ガンジーの信奉者たちが「ガンジー」で行ったのと同じように、市民的不服従のプログラムを採用しました。

ラウル・ジュリアは、チコ・メンデス役で情熱的な演技を披露し、息を呑むような激しさの瞬間をいくつも見せつけてくれます。

彼はこの役のために30ポンド以上痩せたという。
ジュリアが「バーニング・シーズン」の撮影後、長く生きられなかったのは非常に残念であるが、チコを演じるという、彼の意気込みを感じずにいれませんでした。



ゴム採取事業者の土地を取り上げ、彼らを奴隷として扱う。

「木を切るのが仕事だ。日当20クルゼイロと食事になる。うまい仕事だ。」

チコは言う。

「君らには組合が必要だ。カスをつかまされているからだ。
町を離れ土地を切り開き自分の農場を持つ。
ところが、その土地は役立たずだ。
木が無いと草木もろくに育たない。知らされていなかっただろう。
餓えた子供の為に働いているつもりが利用されて終わる。
森を焼き木を切り倒せば我々も飢えてしまう。
わずか20クルゼイロのために・・。」

ピンヘイロ:「組合の専属になれよ。」

チコ:「必要なのは学校を作る事だ。大学の友人に資金を出させて    100の学校と100の病院を作る。」

ピンヘイロ:「組織無くして何の教育だ?」

チコ:「無知な100人は暴徒にすぎない。教育のある1人の男が時代を動かすんだ。」

命を狙われない?一人の少女がいう。

開発事業者の会議室では環境専門家、国会議員、マスコミ対策の専門家

「アリ(組合員)の駆除をするには?」

「女王の抹殺 女王アリが消えれば巣が無くなる 巣がなければアリもいなくなる」

エコロジストを味方に付け開発がいかに有用かを民衆に訴えかけ世論を操る。

組合に対しては死の脅しが始まった。
何で鳥のアタマだけなんだ…。体や足があれば喰えたのにな。

ピンヘイロに死を!組合の壁にも物騒な落書きが‥

と、酒を飲み交わす和やかな一時、組合事務所に入ってきた2人の暴漢にピンヘイロが射殺された・・・。

放送局を乗っ取りピンヘイロの死を伝えるチコ。

やつらは一方的に脅しを実行に移した。
報復してはならない。思うつぼだ。

チコの呼びかけも虚しく「ニノ・セルジオに死を!組合万歳!」と猟銃を片手に飛び込む若者。

警察部隊が組合員を逮捕に踏み切る。

村は焼き払われ、無抵抗の者は警棒で殴られ監獄に入れられる。

袋叩き、逆さづりといった拷問の日々。

ここでは司法も何も機能していない。

警察のジープで村の道端に棄てられる瀕死のチコ。

警察に見張られ、村は葬式だらけ。
ついに根をあげ、村の娘と一緒に村から離れて暮らそうとしたチコだが、道中 開発業者の手配したショベルカーや大型ダンプ等の行列とすれ違い、村で抵抗する事を決意。
「もう未亡人も孤児もたくさんだ!」

スティーブン・ケイという男がチコを訪ねてきた。
映画を作っている男がドキュメンタリー映画を撮りたいという。
頑なに拒むチコであったが、村の実態を世間に知らせるためだというスティーブン・ケイの説得に根負け。応じることに‥

村人から銃器を取り上げるチコ。
非武装で人間の壁をつくり、開発業者の工事車両の進行を妨害する。

「この土地は我々が守る。法が保証している。牧畜業者は多くの住民から土地を奪ってきた。これが君たちの土地でも平気なのか。」

チコの演説に、チェーンソーを振り上げ「これが、ここの法だ!殺したくないが必要なら殺す」という開発業者たち。

ここでは殺人事件にはならないからだ。

大男たちが一斉にチェーンソーで村人に摘みよってくる。

一歩もたじろがないチコを庇って一人の青年が深手を負った。

一刻も早く病院へ急ぎたいチコの車を、牛の行列が遮る。

ここで、エコロジストの登場だ。
急いで病院へ行きたいと懇願するチコを尻目に、自分が如何に素晴らしい人間であるかを丁寧に解説し、脅しをかける。

病院で手当てを受ける間に、外で少年が腹を押さえ前のめりになっていた。馬に蹴られたという。

チコが少年の服をめくると、少年は腹に銀色に輝く一丁の銃を隠し持っていた。

チコ:「馬は尻を軽くたたくと蹴ったりしない。ダルリに教えてもらわなかったのか?」

少年:「なぜボスが、ダルリと?」 

手術が終了の報告に、
「次は彼を診てやれ。馬に蹴られたらしいが名を言わない。」

少年は「ジェネシオ」と名乗った。

村では大雨が降っていた。チェーンソで切りかかった大男がチコに言う。
「大雨のせいでとりあえず撤退することにした。が、頭痛の種はお前の存在だ」と。

傷つけた青年の命は助かったが、右腕は切断したとの知らせに落胆の表情を浮かべ雨に消えた。
立場は違えど、彼らも使われているだけの存在だ。


青いスーツで歓迎されるチコ。モンジールという男が座りこんでいる。

チコ「ある男が若い娘に恋をしてしまった。年齢は離れているが、娘も男を愛している」

モンジール「そりゃ~よかったな」

チコ「彼は言った。”ほかの男を見つけろ”」

「そりゃ~そうだ」

だが、娘は男を忘れることが出来ないと言う。

「そりゃ~努力が足りん」

「男の方も諦められない。そこで、あんたにお願いだ。
            あんたの娘と結婚させてほしい。」

村人の一斉の歓喜の声と拍手に包まれた。

だが、村の問題は解決した訳ではない。彼らも巨額を投じて村へと通じる道路を作ってきている。簡単に諦めるとは思えない。

「かつて父親は良い男だった。妻を愛し子供を溺愛した。
この世が良くなると信じて資産家たちに騙され搾取され続けた。
自分の子供達には絶対に同じ目には遭わさせない!」
断固たる決意の源を、一人の若者に語った。

「帰って、練習しとけよ。」タバコをふかしながら、はにかむチコ。

4年後・・・
激しく燃える森林の惨劇をボートから撮影するスティーブン・ケイの姿が・・。
彼のカメラはチコと妻のサンディノ、そして愛らしい娘の姿を映している。

今や組合事務所を住み家にしている一家。遅刻することは無い。

マイアミで世界銀行会議がある。融資で環境破壊が進むと訴えて欲しいと言うスティーブン・ケイの要求。州議に立候補したいのでムリだと断るのだが‥。
炎は燃え続けどんどん近づいてくる。組合の事務局長という立場だけでは太刀打ちが出来ない。

対決するには政治の大舞台にあがるしか方法が無い。

ピンヘイロのようなことになると心配する身重の妻。

「東側には河がある。信念や愛国心を持たない者は河を使えばよい。しかしそれでは地域は廃れるのみ。」
「美しくて、広くて立派な道路が幸せを運んでくる。その幸せはどこの地方にもあって、なぜココには存在しないのか。」
「考えてみなさい。皆の幸せを邪魔してきた者の存在を‥。」「地下に埋もれた天然の資産を、広大な広い牧場を‥」
「この青い空のしたの広大な大地は世界の貧困と飢えを無くし、皆さんを裕福な家庭にすることができます。」

さすがはグローバル企業から雇われた政治家とエコロジストである。

「その事実を隠蔽し、進歩に反対し貧しいままでいいという者がいる」
「神様から授かった恵の地を・・。もうゴムなんかでお金にはなりません」
「チコ・メンデスは時代遅れの代表者です。彼の言うことを聞いてはいけません。神の栄光よ! ブラジル万歳! ブラジル万歳!」

民衆は当然‥カルヴァオ議員のうまい言葉に乗っかった。

チコの演説に耳を貸すものなど居なかった・・・。

カルヴァオ議員には潤沢な資金もあって新品のチェーンソーが配られた。

双子の赤ちゃん誕生の知らせに喜ぶチコであったが‥
世の中を変えるのは息子の為かも ‥という支持者たち。

「11人産んだ。しかし、飢えのため子どもが何人も先に死んでいった。 
母は、一人ひとりをはらに感じたんだ。」

死者は先に帰ったが 我々は働かねば‥

「倒れるまで闘うんだよ。」
少し大きくなったジェネシオ少年に励まされる。

フロリダ州 マイアミに乗り込むとチコはカメラに取り囲まれる。
と、スティーブン・ケイの姿が。
「みんな映画を見たんだよ。君は映画スターなんだよ」

熱帯雨林の森林保護としての仕事が認められ、各地でのスピーチの予定が組まれていた。

しかし、各国の要人の集まるパーティでスティーブンがチコを紹介して回るも、要人からは軽くあしらわれるだけであった。

「自分達は仕事が欲しいのだ。熱帯雨林や映画のためではなく、仲間たちの生活の出来る仕事が」チコは怒りをぶちまけた。

故郷に帰ると道路工事が途中で中止となっており、民衆がチコの乗るバスを取り囲み歓喜の声をあげた。

一斉に沸き起こる「チコ」コール。

娘のエレニラも駆け寄る。

エコロジストが寝そべっていると、美女3人を連れた資産家のセゼロがやってきた。

ポーカーで勝利し、相手の男はカショエイラの1万5千エーカーの土地で支払うという。
翌朝、チコの元にエコロジストがやってきた。土地の権利書を片手に、翌朝からカショエイラの森林を伐採すると告げに来たのである。

雨の中、伐採の労務者を大勢連れ、エコロジストがやってきた。

非武装で人間の壁を作る住民たち。

チコは棒切れ一本の武器も持ってはならない。と、注意をはらう。

ジェネシオ少年は服をめくり、腹に銃を仕込んでないとアピールした。

相手は馬に乗り銃を天に向かって発砲する。一瞬たじろぐも抗議の賛歌を歌う町民たちに、武装警察隊がなだれ込んでくる。

非武装・無抵抗だと叫ぶチコであったが、警察隊は容赦なく住民を抑えつける。
完全に抵抗の出来なくなった住民たちの様子を見て、棒で殴りかかる伐採の労務者たち。
チコの制止も虚しく乱闘になるが、警察隊は伐採の労務者たち側の味方であって勝負にならない。

力なく帰路につく住民たちに一斉掃射があびせられ、幼い子供たちが犠牲になった。

別の日には、ゴムの木から汁を採取していた青年も、背後からライフル銃で9発も銃撃を喰らい死亡した。

チコは住民たちとの集会で「正義も法も無い。しかし相手が殺人を犯すなら、こちらも殺すのか?」とあくまで非闘争を訴えかけるが住民の怒りは止まる訳がなかった。チコは票決をとった。

グローバル企業側は政府に訴えかけ、政府軍が動き出した。
大勢の兵隊に軍用ヘリが来飛する始末だ。

軍用ヘリから投資家セゼロとカルヴァオ議員が降りてきた。

チコ側の要望として、現行法が機能することと、土地の権利、森林の保護を提唱。個人としては平和と、平凡な暮らしを望む。

そして、彼らには父や母、兄弟、姉妹そして子供たちを返してくれ。
死者の写真が壁一面に貼られていた。

「今の騒乱は他国から見ても恥でしかない。」と、いうカルヴァオ議員に対し、潰れた銃弾をとりだし、青年に9発もぶち込む方が恥だ。と返す。

外では、住民たちと軍隊がにらみ合っている。

住民たちは一斉に歩みを進めた・・。

中では深夜までチコと投資家セゼロ達の交渉が続いた。

住民たちはチコの家の外に集結。無言の圧力をかけ続けた。

折れたカルヴァオ議員たちは、住民側の要望を受け入れ撤退を表明。

住民たちに再び歓喜が訪れたかに思えた。

しかし、それを面白く思わない者たちの存在がチコの命をも脅かす。

しばらく身をかわし別の場所に移り住むよう勧める家族や友人たち。

しかし、自分の死が及ぼす影響で理想が広まるのであればその価値は計り知れない。ここを離れるわけにはいかないと頑なに拒む。


本当は生きたい。本当は生きたいんだ・・


シャワーを浴びているチコに、ジェネシオ少年が今すぐに逃げるよう警告する。

「銃を濡らさないで。撃てなくなるから」ジェネシオは、腹の銃を護身用に持たせようとするが、チコは頑として「武器の所持をすることはない。」と応えた。


チコは家族にクリスマスプレゼントを 足が後ろ向きについていて豚に乗っている人の像クルピラを掘った。

扉の向こう側には、ライフル銃の銃身が鈍く光っていた‥

頭部に被弾したチコは、愛する家族の目の前で息を引き取った・・・。

チコの訃報は世界を駆け巡った。
1990年3月12日 大統領令によりカショエイラ一帯は伐採および開拓から永久に守られることになった。

チコ・メンデス保護区

葬儀を見守るジェネシオ少年は、そっと腹の銃を水の中で手放した。


ジェネシオがダルリ親子を告発し、彼らには懲役19年が宣告された。
しかし、3年服役したのちに脱獄。

いまだ逃亡中であるという。


死者は先に帰ったが 我々は働かねば‥
チコ・メンデス


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