スモーキン'ブギ 歌詞考察から見えたブギウギとタバコ ~ダウン・タウン・ブギウギ・バンド(新井武士)~
1.今回はいろいろあるよ
以前、山口百恵さんのプレイバックPart2を取り上げた時に、次も阿木燿子さんの作詞で行こうと思いました。だったら作詞家デビューのダウン・タウン・ブギウギ・バンド(以下DTBWBと記す)を考察しようと考えていました。
そんな時、そう言えば朝ドラの影響で‘ブギウギ’が多少なりとも話題になってるな。なんかちょうど良いかなって…。
だったらDTBWBを有名にした曲でもあり、まさしく‘ブギウギ’って曲があるじゃない!『スモーキン'ブギ』!おお、これで行こうって、そんな感じでこれになりました。ということで今回は阿木燿子さんの歌詞ではありません。
まず最初は音楽のジャンルの「ブギウギ」について軽く触れ、日本でのブギの歴史の中で、笠置シヅ子さんの次に大ヒットを飛ばした、'DTBWB'の『スモーキン'ブギ』の歌詞考察、そして、この曲の作者、新井武士さんによる2016年に発売されたアンサーソング、『スモーキン'ブギ 其の弐』の歌詞考察と展開します。
また、そこ(其の弍)に描かれる令和に生きる喫煙者の苦悩や悲哀、喫煙事情も少し話せればと思います。
…ということで、新井さんのアンサーソング(其の弍)の内容からが割とメインの題材になります。
2.ブギウギとは?
ブギウギは、1920年代後期にシカゴで流行したジャズのブルース演奏スタイルの一種で、特にピアノによる演奏が特徴的です。このスタイルは、アフリカ系アメリカ人のコミュニティで1870年代に発展し、ダンス音楽としても人気を博しました。
ブギウギはロックンロールの原点ともされ、そのリズミカルなベースラインは多くの音楽ジャンルに影響を与えています。
ブギウギの特徴はピアノの低音部の繰り返しのベースフレーズと、右手による高音部の即興的演奏による、ノリのいい音楽ジャンルと言えます。
ごく簡単なブギウギの例をiPhoneのGarageBandで作ってみました。こんな感じです。
日本におけるブギウギの歴史は、特に戦後の昭和時代に花開きました。代表的な例としては、笠置シヅ子さんによる「東京ブギウギ」があります。この曲は敗戦後の日本に新しい音楽の風を吹き込み、多くの人々に希望を与えました。
昭和20年代後半までブギウギの流行は続き、笠置シヅ子さんは「ブギの女王」として数多くのブギウギ
ソングをリリースしました。
今回は笠置シヅ子さんについては横道に逸れるので飛ばします。またの機会があったらやります。もしくはNHKの朝ドラ見てね!
その後1970年代になると、DTBWBの『スモーキン'ブギ』により、再び若者たちの間でブギウギが流行しました。
3.スモーキン'ブギ
「スモーキン'ブギ」は、作詞は新井武士さん、作曲は宇崎竜童さんによるものです。1974年12月に東芝EMIのレーベル・EXPRESSからリリースされたDTBWBの楽曲で、バンドの3枚目のシングルです。
この曲はDTBWBが有名になるきっかけとなった楽曲であり、バンドを代表する作品とされています。累計売上は70万枚を超える大ヒットとなりました。
また、この曲は宇崎竜童さんのその後のキャリアにおいても多くの機会に演奏されています。新井武士さんは、この曲の歌詞について「リズムに乗せてゴロ合わせをしただけ」と述べており、そのシンプルながらも印象的な歌詞が特徴です。
歌詞の内容は、令和の時代ではコンプライアンス上いろいろ問題にもなりそうな喫煙…、それも未成年者による喫煙を描いた作品です。でもこの曲は内容以前に、コミカルな歌詞のノリと、ブギウギが非常にマッチして、とても楽しい耳に残る作品だったためヒットしました。
とくに小中学生から高校生まで、未成年のティーンの間で流行り、コンサート会場はアイドル並みの歓声が飛び交いました。ちょうどキャロルが解散し、入れ替わる形で若者たちを魅了したのでしょう。
そしてこの曲、作詞者の新井武士さんにより、2016年に歌詞を新たに書き換え、アンサーソングとして新井さんのソロアルバムの1曲として発表されています。
今回は映像のワンコーラス目だけDTBWBのオリジナルを使用し、その後に新井武士さんの『スモーキン'ブギ 其の弐』を繋げてみましたので以下YouTubeで聴いてみて下さい。最後だけ1975年のDTBWBのライブ音声で締めています。ここで若者たちの熱狂が多少聞けます。
⚠️映像には喫煙シーンが大変多く流れます。苦手な方はここはスキップして先にお進み下さい。
4.歌詞考察
それではまずは1974年発売のオリジナルから見てみましょう。
見事なまでに当時の不良たちの姿を現してます。内容的には朝起きてからから夜寝るまで、タバコが手放せない不良少年の歌です。
ただ聞くところによると、普通の中高生も好んでこのレコードを買っていたそうなので、それだけ一般的に流行したのがわかります。♪スーパッパのノリがコミカルで、ブギウギを知らない若者たちにもすんなりと入ってきますね。
DTBWBとしては、このヒットを受けて二番煎じを狙いました。次のシングルが「カッコマン・ブギ」と言う、またブギのノリのいかしたナンバーを出したのです。
ところが面白いことに、B面の「港のヨーコ・ヨコハマ ヨコスカ」が空前の大ヒット!これで2曲続けての大ヒットで、紅白歌合戦の出演を決めました。
「港のヨーコ・ヨコハマ ヨコスカ」については、歌詞考察はしていないのですが、一応私のnoteにも投稿してるのでご参照下さい(映像もあります)。
この頃は喫煙者も普通に路上でタバコを吸える時代でした。なんと言っても、タバコの発売元は「専売公社」と言う、かつて存在した日本(国)の特殊法人が独占販売していた時代です。国がタバコを売ってたってすごいことですよね(1985年民営化)。
だからこの頃はタバコは市民権を得て、公共の場所でも普通に喫煙出来ましたし、国鉄(現JR)電車内に吸殻入れがあった時代です。年配者に喫煙者が多いのもこのためなんですね。
そんな時代も30年も経つと世の中の状況が変わってきました。会社(オフィス)内では禁煙が当たり前になり、喫煙所が設けられるようになりました。それまでは皆デスクで喫煙していたんです。
そうなると肩身が狭くなるのは喫煙者ですね。そんなその後の「スモーキン'ブギ 其の弍」が作詞者の新井さんのソロアルバムに収録されました。2016年のことです。では、そちらの歌詞を見ていきましょう。
それまでは国からも認められていた喫煙者が、だんだんと周囲からも煙たがられ、とうとう禁煙にも挑戦しようとした内容です。しかし、イライラには勝てず、また隠れて吸うようになり、しまいには居直って堂々とタバコを吸い出します。
この辺は、私の知り合いが新井さんと親しくさせて頂いているので、実話だということを聞いています。タバコの税率もかなり上がって、きっと経済的にも厳しいことでしょうね。
5.令和の時代の喫煙動向と喫煙者の悲哀
ここでちょっと固いお話をします。今の時代(令和)の喫煙事情をまとめてみました。
【令和時代の喫煙対策と喫煙者への影響】
令和元年(2019年)に改正健康増進法が全面施行され、受動喫煙防止対策が一気に進みました。飲食店などの施設内はもちろん、公園や駅周辺など屋外の多くの場所でも原則として喫煙が禁止されました。一部に設置された狭い喫煙所の外では一切喫煙できなくなり、喫煙者は社会的に孤立せざるを得なくなりました。
また、紙タバコへの課税が大幅に引き上げられ、経済的な負担も重くなりました。2022年には1箱500円近くの値上げがあり、重喫煙者の生活は一層厳しくなりました。健康保険組合による支援制度も次々と縮小され、喫煙者は金銭的にも精神的にも追い詰められる存在となってしまいました。
こうした厳しい環境の中で、多くの喫煙者が禁煙を選択せざるを得なくなりました。一方で、ストレス解消の手段として喫煙にすがる人も少なくありませんでした。そうした人々は、隠れて喫煙したり、喫煙所が遠い場所に通うなど、社会から孤立し、偏見の目で見られる存在となってしまいました。
【現在の紙タバコ喫煙者の減少】
こうした喫煙対策の強化に伴い、確実に紙タバコの喫煙人口は減少しています。国民健康・栄養調査によれば、2016年の喫煙率は18.2%でしたが、2022年には12.7%まで低下しました。特に若年層での減少が顕著で、喫煙が社会から追放されつつある状況がうかがえます。
一方で、中高年男性を中心に、根強い喫煙者も残っています。生涯を通じて喫煙し続けた人々で、禁煙の動機がつかめないという人も少なくありません。この層の一部は、次世代の加熱式タバコや電子タバコなどに移行しています。
【次世代タバコ製品への移行】
受動喫煙の問題がなく、紙タバコに比べてリーズナブルなコストが魅力的な次世代タバコ製品。特に加熱式タバコは、健康被害がやや低いとの見方から人気が高まっています。現役の喫煙者の一部はこうした次世代タバコに移行し、喫煙から完全に離れることはできていません。
一方で、未だ健康への影響が解明されていない次世代タバコへの規制強化の動きもあります。
2024年には年齢制限や公共場所での利用制限などが検討されており、将来的には現行の喫煙規制と同様の扱いとなる可能性があります。
【今後の喫煙人口の予測】
こうした規制の動きなどを前提とすると、今後10年の間に成人喫煙率は5%を下回ると予測されています。若年層での喫煙は完全になくなる可能性が高く、喫煙は高齢男性の一部に残る程度になると考えられます。
しかし一方で、喫煙は完全に無くならず、次世代タバコを中心に一定の人口が残存すると見られています。特に慢性的なストレスを抱える人々の間では、何らかのリリース(喫煙に類する行為)を求める層が残ると予想されます。
また、人口減少が進めば、高齢喫煙層の相対的な割合が高まる可能性もあります。医療費負担が大きくなり、喫煙者への規制がさらに強まるかもしれません。つまり、喫煙を完全に追放することは難しく、一定のリスク層は残存し続けると考えられています。
【喫煙者をめぐる課題】
最後に、喫煙者をめぐる主な課題をまとめます。
■経済的な負担と生活の行き詰まり
重喫煙者ほど経済的に追い詰められ、生活に窮することになります。一方で、精神的苦痛からの解放ができず、喫煙に依存せざるを得ない層も一定数いるため、二重苦に陥る可能性があります。
■社会からの孤立と偏見
オープンに喫煙できる場所が極端に減少し、喫煙者は隠れ家的な存在となりがちです。それにより、社会から孤立し、理不尽な偏見の対象にもなりかねません。
■健康不安と医療費の課題
喫煙は肺がんなどのリスクを高めますが、依存症などで禁煙できない人もいます。一方で、喫煙者への医療費負担が課題となり、制度の見直しが迫られる可能性もあります。
このように、今後も喫煙者は経済的にも社会的にも孤立し、健康上の不安を抱えながら生きていくことになるでしょう。しかし一方で、ストレス社会においてリリースの手段を求める層は一定数残ると考えられます。この問題をどう解決するのか、引き続き議論が必要とされています。
6.終わりに
かつては国で販売していて、それに乗せられた喫煙者たち…。それが今では社会的にも阻害され、経済的にも厳しい状況です。私はタバコを吸わないのでなくなるのは嬉しい方なのですが、こんな形で苦しんでいる方々がいることは忘れてはいけない気がしました。
ただお互いに文句を言うだけでなく、そういう時代を経てきた方々をも認めつつ、世の中が良い方向に向かって行って欲しいと思います。
ブギウギから喫煙問題まで考えられて、ちょっと楽しい時間でした。喫煙所に集まっている方々にも優しい目を向けようと思いました。そしてこうしている間にも時代は次へと進んでいます。今の常識が10年20年で大きく変わるかもしれませんね。
7. おまけ(noteお勧め)
最後に本文とは関係ないですが、私の知り合いがここnoteで定期的に記事を投稿しているのでご紹介します。
medibeautyとは、代表(みさみさ)自身が従事している医療業界の分野に、メイクやファッションを取り入れる事で患者様の心のケアを目的として、そこから得られる効果から、生きがいと癒し、そして笑顔を引き出そうと言う試みです。それにより、症状の緩和や病状の進行を遅らせたりする事を目的としています。
▼medibeauty公式WEBサイト
https://medibeauty.my.canva.site/
それを「医療と美容の架け橋」と称して、それを先導して行く企業“medibeauty”を立ち上げるべく日夜努力しています。分かりにくいテーマですが、医療ではカバー出来ない、人間本来の生きる力を引き出す美容的アプローチです。
これは医療関係にとどまらず、介護にも同じ事が行え、認知症予防、進行の抑制、生きがい、に繋がる事になります。
誰もがいずれ通る事になる病気や老化。誰しもが健康で生きる権利があります。少しでもそう言った方々にお手伝い出来るのが“medibeauty”です。
ここnoteでも定期的に記事を投稿しています。ぜひ読者になって応援していただければ幸いです。
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