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フェルミ推定の基礎と具体例
フェルミ推定を詳しく説明します。具体的な流れや実践方法、他の事例も紹介しながら、より深く理解できるようにします。
1. フェルミ推定とは?
フェルミ推定は、実際のデータが手元になくても、論理的思考を使って「おおよその数値」を求める手法です。
物理学者エンリコ・フェルミは、シカゴ大学の教室内で「シカゴにはピアノ調律師が何人いるか?」といった問題を学生に出し、短時間で近似値を導きました。これがフェルミ推定の起源です。
フェルミ推定は、日常生活やビジネスシーンで出会う「答えの分からない問い」に対して、手順を踏んで合理的な答えを出すために用います。
2. フェルミ推定の基本手順
フェルミ推定を行う手順は以下の通りです。
1. 問題を分解する
• 求めたい答えを導くために、必要な要素を分解し、シンプルな因数にする。
• 例えば「ピアノの台数」を求めるなら、「世帯数」「ピアノ所有率」「世帯あたりの保有台数」に分ける。
2. 前提条件や仮定を立てる
• 分解した要素ごとに、仮の数値(常識的な範囲内での概算)を置く。
• データがなくても、経験や直感、一般的な知識を使って数値を考える。
3. 計算して統合する
• 分解した要素に仮定の数値を当てはめ、掛け合わせや割り算をして答えを求める。
4. 答えの妥当性を検証する
• 最後に、出た答えが現実と大きくズレていないかを確認する。
• ズレがある場合、仮定や分解が適切かを見直す。
3. 具体例: 東京にピザの配達員は何人いるか?
フェルミ推定の手順に従って、この問題を解いてみます。
① 問題を分解する
ピザの配達員数は、以下の要素に分解できます:
• 東京の人口
• 東京で1日にピザを注文する世帯数
• ピザ1件あたりの配達時間
• 1人の配達員が1日で配達できる件数
② 仮定・概算を立てる
1. 東京の人口
• 約1400万人
2. 東京で1日にピザを注文する世帯数
• 東京の世帯数は、人口 ÷ 平均世帯人数(2.5人) = 約560万世帯
• ピザを1日に注文する世帯の割合は、5%と仮定
→ 注文世帯数:560万世帯 × 5% = 約28万世帯
3. ピザ1件あたりの配達時間
• 平均して30分(往復時間・準備時間を含む)と仮定
4. 1人の配達員が1日で配達できる件数
• 1人の労働時間を8時間(480分)と仮定
• 1日で配達できる件数:480分 ÷ 30分 = 16件
③ 計算して統合する
必要な配達員数は、1日の総配達件数 ÷ 1人が1日で配達できる件数:
• 総配達件数:28万件
• 配達員数:28万件 ÷ 16件 = 1万7500人
④ 答えの妥当性を検証する
「東京にピザの配達員は約1万7500人」という結果になりました。
この数値が現実と大きくズレていないか考えます。東京には多くのピザチェーンや個人経営の店があり、アルバイト配達員も含めれば1万7500人という数字はそこまで不自然ではないと考えられます。
4. 他の具体例
例1: 日本に電柱は何本あるか?
1. 問題分解
• 日本の面積
• 電柱の密度(1平方kmあたりの電柱数)
2. 仮定
• 日本の面積:約38万平方km
• 都市部と田舎の電柱密度を平均し、1平方kmあたり50本と仮定
3. 計算
電柱の総数:38万km² × 50本/km² = 1900万本
例2: 1年間に日本人が消費するペットボトルの数は?
1. 問題分解
• 日本の人口
• 1人あたり1日のペットボトル消費数
2. 仮定
• 日本の人口:約1億2000万人
• 1人が1日に1本のペットボトルを消費すると仮定
3. 計算
年間の消費量:1億2000万人 × 1本/日 × 365日 = 438億本
5. フェルミ推定の重要ポイント
1. 細かいデータにこだわらない
• 正確な答えではなく、合理的な近似値を求めることが目的です。
2. 大きな視点で考える
• 問題を分解して、簡単な要素に置き換えます。
3. 論理的なステップを踏む
• どんな仮定を置き、どう計算したのかを明確に示すことが大事です。
4. 常識的な検証を行う
• 仮定や結果が不自然でないか、最後に見直します。
6. まとめ
フェルミ推定は、不確実な状況でも論理的思考を使って答えを導く強力なツールです。
• 複雑な問題をシンプルに分解する
• 仮定を立てて概算する
• 結果の妥当性を考える
この手法はビジネスや面接、さらには日常生活でも役立つため、練習を重ねることで、論理的思考力や問題解決力を鍛えることができます。