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【短編小説】武士の日
キン!と弾く音は画面の中から。
むかーしむかしの、お侍さんたちが活躍した頃を彷彿とさせるような、でもフィクションだというその映画は、フィクションだけどめちゃくちゃ人気だったもの。
去年の間ずーっと長く映画館で上映してて、でもタイミングが合わなくて観に行けなくて、そのうちに別にいいやになった。そういうのよくあるよね。
ある程度時間が経てばテレビでやるし、ネット配信だって始まる。
そう思ってたけどネット配信が始まっても観るのを忘れてて、結局一年越しにテレビで見ることになった。
「あ、いまの」
「ん?」
「かっこよかった」
「え、どこ?」
「敵さんの攻撃をしゃがんで避けてから、脚をたたっ斬ってた」
「おお」
隣には同居人。観るなら観る、と言ったかと思うと、冷蔵庫から飲み物を出し棚からスナック菓子を手にとった。そのまま部屋に一個しか無いソファにどっかり座って完璧な観る体勢。
観るならってよりも、自分も観たかったんだろーなってわかる。去年一緒に見逃したから知ってたけど。
「この時代に二人共いたらさぁ…どんな役どころだったかなぁ」
「えー?まぁふっつーに町人レベル?」
「いやいやそっちは貪欲に天下取りに行ってそう」
「どーいう」
どんなイメージを持たれてるんだと苦笑しながら観進めていく。
最後はなんやかんやあったけど主人公が捕まって、悔しさとともに叫びながら首をちょんってやられちゃって、終わってた。
やだなぁこんな最後。
今なら?謀反を起こす…うーん、政府のおえらいさんを銃やナイフで脅して?即SPに捕まって、きっつくてなっがーい裁判があって、そっからの刑務所生活…ある意味スパッと終わるこの時代のほうがいいかもしれないとか思ってしまった自分がいる。
まあ、人によるか。
刀を振り回して戦う自分なんて想像出来ないし。
でも、チャンバラごっこならやりたい。昔やってたし。
「時代村、ってどこあったっけ」
「んー、2箇所くらいなかったっけ?」
「近い方…こっから電車で2時間?くらいだね」
「今度行こ」
「衣装着て?」
「刀も腰に差して」
「ちょっとタイムスリップ気分ね、おっけ」
この時代に生まれてたら、なんて話は想像の中でしかないけど、この時代の気分をほんの少しだけなら味わうことができる。旨味部分だけだけど。
次の休みは遠出をして、画面の中で動いてたお侍さんになったつもりで通りを練り歩くんだろう。そんな自分達を想像してみたけど、髷があまりにも似合わなさそうだなと、隣と目を見交わしてひとしきり笑ったのだった。
本日は「武士の日」だそうです。記念日協会様より。
お休みしちゃおうかと思った記念日小説ですが、サクッと30分クオリティで思いついたので書いてきました。作中の映画はフィクションです。元ネタも特にありません。時代村はモデルが2箇所ありますが、どちらとも明言はせずです。行ったことないので言えないが正しいですね。いつか行ってみたいと思いつつ。昔は関東の方の隣県に住んでいたので行こうと思えば行けた距離だったんですが、行かないままにすっかり遠くなってしまいました。
チャンバラごっこって男女問わず小さい頃にやったことがある人、多いと思ってるんですけど、どうでしょう?
落ちてる木の枝を持って、もしくは傘とか、ステッキとか、昔だったら竹箒とか。単純な打ち合いだけど、それが楽しいんですよね。大人になると中々そういった単純なことで楽しむ機会が減ってしまっている気がします。いつかまたやりたいですね。折角だし、子供に付き合ってもらうことにします。
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