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【短編小説】布おむつの日

 ざぶざぶって水と泡と布がダンスをしてる音が聞こえてくる。正直彼がいなきゃやってられなかったと思うし、彼がいてもしんどいなぁってなってる。洗ってくれるからまだ使ってるけどさぁ。

 うちに新しい命が来てくれたことは嬉しくって幸せ。

 どんな子かな。気になる、でもとりあえず元気なら良いよね。そうだね。どっち似かな。

 色々楽しみにしながらグッズを揃えてたときに見つけて、試すかーって買った布おむつ。

 メリットもデメリットもあるけど、彼が育休が取れそうって言ってくれたから、じゃあやってみよっか。無理なら紙にしようって話になって。

 生まれて出てきてからは、布おむつがどうとかいうよりも毎日忙しすぎて、訳わかんないくらい。お洗濯増えちゃうのしんどいから、まずは紙に頼ろう!って泣きながら二人で話し合った深夜。もーほんと寝られなくてしんどいんだね。

 毎日毎日、びぇーって泣きだすのがお仕事なキミは何がご不満なの??ってご機嫌伺いして、一個一個試して、全部ダメだった時の悲しさもやるせなさもあるけど、まあ、笑えばしょうがないと……半分くらいは流せるから良しとする(しかないよね)。

 結局布おむつを再開したのは3ヶ月くらい?だっけ。やっとペースがわかってきた頃。

 それでも、おむつの枚数を重ねないとすぐ漏れるし、服も汚れるから洗濯は増えるしでほんと彼がお洗濯してくれるんでなきゃ無理だったなぁって。

 メリットにあげられる経済的とか、肌に優しいとか、カバーが可愛いのがいろいろあるとか、排泄した時の不快感がわかるとか(1番は肌にいいが惹かれたところなんだけど)、正直あんまり実感はしてない。おむつはずれが早くなるって話だけど多分1歳くらい?だよね?

 お出かけのときに漏れちゃうと大変だから紙おむつも併用してるし。

 畳むものも増えてて、正直しんどいなぁ、が結構あるんだけど、それでも、続けてるのはなぜなんだろう。

 あー、そっかそういえば。布おむつをね、着けたときにさ、やっぱり紙とは感触が違うって思ってるのかな、ニコニコ感が違う気がするんだよね。

 紙でも多分、ダメじゃない。でもなんか、布おむつのときは、ふんわり笑うの。

 あとはまぁ…自分の満足感というか、達成感もあるのかも。布おむつも使って頑張ってます!って。いや、おばさんがね、たまに遊びに来るんだけど、布おむつ激推しで……紙なんてダメよって言われちゃうから、紙おむつは見えないところにしまい込まれてる。色々親戚対策とか、自分たちにストレスがないように対策するのは大事だよね。

 そういうのがなくっても、布おむつってやっぱリふわふわだから、寝てても気持ちいいのかなって。

 女の人ならわかるかなと思うけど、生理用ナプキンとかさ、わたしものすごく不快感が酷いんだ。必要だからつけるけど、気持ち悪いし肌荒れするし。最近はマシなのもあるけど、でもやっぱり蒸れるし着けなくていいなら無い方が良い。

 この子もそんな感じなのかな。畳み終わった布おむつの山に手をおいて、布のさらっとふわっとした肌触りに口角が上がる。

「終わったよー…、っと寝てたか。どしたの?なんか機嫌いいね」

「お洗濯ありがと。助かります。えっとねぇ、あなたが洗ってくれたこのコたちの肌触りにね、うっとりしてた」

 布おむつの上に置いた手をぽんぽんと示して見せる。でも視線は、その布おむつを着けて、ベビーふとんの上ですやすや眠る我が子へ。自然、声は小さくなってゆく。

「どういたしまして。世のお母さんってすごいな…コレ全部一人でこなすの無理でしょ」

「無理だよねぇ…泣き叫ぶ新生児のお世話して、家の掃除と、増える洗濯物、それにだんなのご飯と……人によってはご機嫌伺い?夜の晩酌のつまみ作る人もいるって」

「いやいや、どう考えても無理だわ。オーバーワーク。つまみとかいらないから。あ、ってか掃除してくるよ」

「そう言ってくれる旦那さんで本当に助かります。でも今は休も。やっと寝てくれたし、洗濯も終わったんなら休憩大事。掃除は休んでも死なないよ」

「そうするかぁ……」

 夜の授乳はかなり落ち着いてきたけれど、それでもたまに夜泣きはある。二人で交代していても、寝不足になるのは否めない。ましてや…彼はそろそろ職場復帰だ。私が一人で色々やらなきゃいけないし、彼にはしっかり寝てもらって、体を休めてもらわないと。

 布おむつ…頑張って洗うかぁ。昼寝もそれなりにまとまってきたし、ちょっと掃除が隔日になるかもだけどそこは許してね?

「いー顔して寝てるなぁコイツ」

「ね、気持ちよさそうだよね」

 開けた窓からふわりと爽やかな風が入ってきて、ほんの少しだけある髪を揺らす。

 その横にころりと寝転んだ彼も、あくびをして一緒にお昼寝タイム、かな。

「アラームかけとこう。寝過ごしたら大変でしょ」

「まあ、良いんじゃない?今日はあと、ご飯とこの子の相手、だよね?」

「三人仲良くぐっすり?」

「そう、ぐっすり」

 くすくすと小さな子の頭を挟んで笑い合って、どちらからともなく声は小さく、聞こえなくなっていく。代わりに聞こえるのはすぅすぅという寝息。

 わたしも、おひるね、いっしょに、ね。


 ハッ!寝すぎた?!ってビクってして起きたけど、そんなに時間が過ぎてなくてホッとした。

 その後。

 よく見たら、いつのまにか私の指と彼の指を、両方の手でぎゅーって握ってるキミはとぉっても可愛かったよ。



 本日は「布おむつの日」だそうです。日本記念日協会さまより。

 襁褓(むつき)と呼ばれていたことから6月、いい日ということで11日だそうでした。
 布おむつ、我が家でも新生児〜1歳半位まででしょうか、活躍していました。我が家は私がお洗濯もしていましたが、だんなさんはそれ以外を大目に見てくれたので助かったというところでしょうか。
 紙おむつの品質は向上していますし、便利さは捨てがたいです。けれど、やはり布の肌触りも良いんですよね。お気に入りのおむつカバーをつけさせて、ころころと寝返りをうつ我が子も可愛かったです。便利なものと、良いもの、どちらも良い部分を選んで、場面場面で使い分ければ良いのではないかなと思います。
 経験談でいうなら、母乳もミルクも半々で良いでしょうし、離乳食だって全部手作りしてたらお母さんは息切れ必須です。(好きなら良いんですよ勿論)お出かけ先用に離乳食を買っておいたり、紙おむつを何枚か持っておいたり。お家では、できる範囲で手の込んだお世話を。無理なく続けられることでなければ、どんどん重くのしかかってしんどくなってしまいますから。
 昔からの良さと、便利さを、それぞれうまく活用していきたいですね。

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ぺん
小説を書く力になります、ありがとうございます!トイ達を気に入ってくださると嬉しいです✨