2023.03.11 LaLiga第25節 レアル・マドリーvsエスパニョール
・はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
LaLigaとコパを経て、ここ3試合で勝利無し、得点数1と絶不調マドリー。
そろそろ気持ち良く勝っておきたい中、派手なピンク集団をホームに迎えたエスパニョール戦を振り返り。
以下、スタメン。
ベンゼマの欠場、アルバロの台頭によって注目が集まったCFのポジション。
しかし、この試合はロドリゴがそのポジションに入る安定択。
リヴァプール戦を見据えて休養させるかと個人的に思っていたクロースとモドリッチは両採用。
カマヴィンガが左SBに回し、ナチョが久々にCBとして先発出場。
対するエスパニョールは、前回の4-1-4-1とは異なる4-4-2の陣形に、割と変容した顔ぶれのメンバーを載せる。
前回中盤起用されていたダルデルが2トップの片割れを務め、バルセロナでは前線を務めることが多かったブライスワイトが左のSH。
・試合内容
・利用スペースの誘導のために敢えて拡げる選手間
この日のエスパニョールの攻撃の狙いから。
ポイントは選手間の距離の広さと利用したいスペースを空けるための選手配置である。
特に前半1分のゴールキックから見せた動きは1つエスパニョールの特徴が発現した攻撃。
ゴールキックの際、両CBをGKの側に配置。
両SBも大外を取り、ドブレピボーテは片方がボックス手前、もう片方が自陣中央という縦並びポジショニング。
ここで肝心なのが、DFラインの低さとは反比例して、前線4枚は横幅広めでかなり高い位置を取ること。
これにより、自陣低めに設定したDFラインと前線の距離感を広げ、
「①カマヴィンガ(カルバハル)のピン留め状況+ヴィニシウス裏を空ける」
「②クロースモドリッチを引きつけてチュアメニ脇に広大なスペースを作る」
という2つの状況を創出。
こうして意図的に空けたスペースをロングボールを主体とした大きな展開で突くエスパニョールの狙いにより、マドリーは早々にピンチに陥っていた。
その結果、距離感広めでロングボールを主体に組み立てる戦術は前半7分のマドリー失点シーンにも繋がっている。
CBのセルジ・ゴメスから右SHルベン・サンチェスを狙った対角へのロングフィード。
そして、本職ではない左SBを務めたカマヴィンガの頭上をボールが越える。
ルベン・サンチェスがボールに追いつき、そのままダイレクトで逆サイドのホセルまでクロスを届けてゴール。
大きな展開を2つ重ねられたところから失点してしまった。
守備意識の低いヴィニシウスにより晒されがち+本職ポジションではないカマヴィンガのサイドを、ロングボールで狙うという意図はかなり理に適っており、まんまとやられてしまった失点であった。
・圧縮守備と世界最高峰のサイドチェンジ
距離感を広げたオフェンスとは打って変わって、エスパニョールの守備は非常にコンパクト。
特に目についたのが横幅を圧縮する意識の高さ。
そしてこの圧縮守備に対し、マドリーが積極的に活用したのがクロースのサイドチェンジである。
守備時のエスパニョールは上の図のように4-4-2のラインを崩さず、ほぼ片側サイド半分に横幅を圧縮。
特にマドリー左サイドにボールがある時はこの傾向が顕著で、オーバーロードを作ることが多い左ユニットからスペースを奪って圧殺したいという意図が感じられた。
こうなると空いてくるのは勿論逆サイド、とりわけ大外を取るカルバハルがフリーに。
そして届ける発射台は世界最高のキック技術を持つクロース。
しかし届けたはいいものの、その後の右外からの選択肢が乏しかったことが非常に痛かった。
右サイドからファーを覗くと待ち構えるのはヴィニシウスであり単純な高さ勝負は部が悪い。
最近はベンゼマもボックス内の動きのキレがよろしくない。
バルベルデは左サイドに寄っているため、ポケット突撃にボールを流すといった右サイド攻略にすぐ移行することも難しい。
そのため、カルバハルがボールを持ってからラグが生まれ、素早い攻撃でゴールに迫ることができずに若干の停滞感が漂っていた。
(それでも前半30分のようにクロス精度でヴィニシウスの決定機を創出するなど、カルバハルは流石であったが)
「浅い位置でボールを受けてルックアップ」ではなく、「もっと深く位置を取ってダイレクトで折り返す」というようなプレーも増やしていきたいという雑感。
・組織を破壊した斜め後ろへのカットインと“蹴る“の上手さ
エスパニョールに早々に得点を許し、4-4-2圧縮守備の糸口を見つけようにも肝心のゴールに迫る手立てが見つからない中、マドリーは技術でゴールをこじ開ける。
まず1点目、ヴィニシウスのゴール。
左サイドでボールを受け、相手2枚と正対しつつ内と縦の2択をチラつかせながらドリブル。
対面のDFがカマヴィンガのポケットへのフリーランに釣られ、重心がずれたタイミングでマイナス方向のカットイン。
そこから足を振り切るというよりは、伸ばし切った脚でインフロントに引っ掛けるように放ったシュートが逆サイドネットに吸い込まれる。
素晴らしかったのは、マイナス方向、即ち斜め後ろへのカットインからゴールを産んだという部分。
ヴィニシウスへのダブルチームがデフォルトな昨今、縦方向と真横のカットイン(ボックス内の選手へのリンク)の2つの選択肢はまず消されることが多い。
相手からすればゴール方向から遠ざけるのは当たり前のことで、それを避けつつゴールに結びつけられる形を魅せつけられたのは今後の糧。
前半38分に決めたミリトンエアラインによる2点目にもヴィニシウスのマイナス方向への持ち出しが絡んでいる。
CKのクリアボールをヴィニシウスが拾う。
(ちなみにこのCKはショートコーナーを利用して工夫されていた点もgood。)
一瞬マイナス方向へ持ち出したタイミングで外側を回るチュアメニへスルーパス。
そこからチュアメニがモドリッチさながらのアウトサイドクロスでゴールを演出。
チュアメニの良さの1つであるキックパターンの豊富さ。
中盤低め位置から放たれる長短交えたパス、得意のチップパス、強烈なミドル、そして今回のアウトサイドキック。
多彩で高精度なキックは本来のピボーテ位置、クロースのサポーター的役割、攻めるために上がって来る場合、あらゆる状況で腐らない。
この2得点から改めて“蹴る“技術とそのパターンの多さの重要性を改めて教えられた気がした。
・結実するナチョのディビディール
久々にCBで起用されたナチョがこの試合で見せた中で特徴的だったプレーがディビディール(dividir)である。
「ディビディール(dividir)」はスペイン語で「割る」という意味があり、“選手と選手の間を割って運ぶドリブル“を意味するサッカー用語でもある。
例えば後半71分のシーン。
リュディガーからビルドアップのボールを受け、ルックアップ。
フィードのキックモーションも交えつつ、ボールを運びながら出しどころを探す。
すると急にスピードを上げ、エスパニョールの2トップの間を割って第一プレスを越えるプレーを見せた。
そしてこのプレーは左SBに移った後の後半アディショナルタイムの91分にアシストという形で結実する。
左サイドでボールを受けたナチョ。
D・スアレスも寄ってきてサイドで囲んで奪いどころにしようとする相手の逆を突き、A・ビダルとの間をディビディール。
ここで見逃せない素晴らしい動きを見せていたのがアルバロ。
ナチョのドリブルコースを塞がないよう裏抜けコースをサイド側に変更、そしてモンテスを釣り出すことでCBを1枚に。
アルバロの動き出しもあり、一時的にナチョ&アセンシオvsカブレラの構図を創出→ナチョが運びながら完璧なタイミングでアセンシオにボールをリリース。
そしてアセンシオが得意な角度からGKとの1対1をアセンシオが沈めて3-1。
アセンシオはこういうのを外さない。
実際にもこの試合でもCBとSBを同じ試合の中でこなしており、どうしても守備的なマルチロールというイメージのあるナチョがこのプレーを行うことに意味があり、虚を突くためは非常に効果的な個人戦術であった。
このまま試合は3-1で終了。
・まとめ
選手間を工夫し、空けるスペースを意図的に操作。
空けたスペースとそこを担当する選手の経験値を狙い、ロングボールを主体に素早く攻撃を組み立てながら実際に得点を奪って見せたエスパニョールの戦術は理に適っているものだった。
しかし開始早々に喫したこの失点は呆気ないミスと言ってもいいレベルであったこともあり、ガッカリ感と共に暗雲が立ち込める中、晴らす嚆矢になったのがヴィニシウスの素晴らしいゴール。
守備ブロックの届かない位置に持ち込み、難易度も上がるシュートを沈めて見せた。
ヴィニシウスのシュート、圧縮守備に対するクロースのサイドチェンジやチュアメニのアウトサイドクロス。
総じて“蹴る“ことの上手さが前面に出た試合だと感じた。
そして忘れてはいけないのが、マドリーの功労者ナチョの活躍。
ナチョは試合後、「The fans gave me goosebumps when I heard them chant my name.」とインタビューで語ったが、鳥肌が立ったのはこの試合を観ていた者、ナチョのプレーを観ていた者も同じであったはず。
勝てない試合が続く中、3-1の勝ち試合で終えることができた。
・おわりに
本稿執筆時点ではCLでリヴァプールを突破し、マドリーはベスト8進出。
この流れのまま次節は首位との直接対決となるクラシコへ。
個人的に全然LaLigaを勝ち取ることは諦めてないし、頼むから勝って欲しい。
稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
よければ拡散等していただけますと幸いです。今のところLaLiga全試合レビューするつもりではいます。多分。
それでは!
※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。