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老兵は死なず…??――サベージ軍曹の世にも不本意な冒険

※米ハズブロ社の元祖アクション・フィギュア『G.I.ジョー』の歴史、そして『G.I.Joe:A Real American Hero』の立ち位置や特長についての解説は、どっかヨソで読んできてもらうこととする!

過去から来た英雄、サベージ軍曹

さて。ARAH方面の『G.I.ジョー』展開で個人的に興味深いのは、スピンオフである『サージェント・サベージ・アンド・ヒズ・スクリーミング・イーグルス』('94~'95)。

本シリーズの主人公であるサベージ軍曹は第二次世界大戦、ノルマンディー上陸作戦(ネプチューン作戦)の生き残り。“血まみれオマハ”と呼ばれたオマハ・ビーチでの苛烈な戦闘を生き残り、氷漬けになったのち、50年後の現代('94年)に目覚めた…という設定。キャプテン・アメリカか!

ジョー・キューバートの「サージェント・ロック&イージー・カンパニー」(DCコミックス)をオマージュした…と言われる本シリーズ。パケ絵はキューバ―ト本人(情報提供:ラジアク先生)。ドカンと同梱されたVHSがイカしますね。重いんだこのせいで

米国あの時期どんな時期

'94年のアメリカといえば、ソビエト連邦崩壊('91)を経て”世界一の軍事大国”としての立場を揺るぎないものにしたにもかかわらず、色々あって軍隊がスッキリしない立場におかれていた時期。湾岸戦争('90~'91)では国内世論の反発から求心力を失い、ソマリア内戦では事実として介入に失敗する('92~'93)など、軍のあり方が常に議論の的となる時代であった。当時の悩めるアメリカにとって、ナチという、文明社会が打倒すべき絶対悪…許しがたい人道犯罪の行為者との戦いであり、国民の誰もが納得できる大義が(後天的に与えられたものとはいえ)存在したWWⅡの記憶がスイートなものに錯覚できたことは、まあ、われわれにも想像は難くない。…っていうか現に、サベージのバックカードの紹介文は「World War Ⅱ had many heroes.」で始まる。

シンプルにカオがこわい

で、そのバックカードには「What does the future hold for a hero from the past?」とも書かれていたんですが、2024年の皆さんは既にご存じの通り、栄光の時代からやってきたサベージ軍曹は、ハズブロには大した未来をもたらさなかった。サベージ軍曹の物語は軽~く打ち切られ、ハズブロの『G.I.ジョー』チームはその軸足を『G.I.ジョー エクストリーム』('95~'97)へ移していくこととなります。まあ~、でも'94年とかにM1ガーランドで戦うお爺さんのハナシを子供に売るのは厳しかったと思いますヨ。過去の戦争のほうがおとぎ話にしやすかったのかもしれませんが…。

だいぶ人が変わってしまった『G.I.ジョー エクストリーム』版のサベージ軍曹。
なっなんてお姿に! でもカワイイから許す。

ただ一方でこの後、マニア向けに舵をきった12インチのほうの『G.I.ジョー』の商品ラインでは、'00年あたりまでフツーにWWⅡネタの商品を売っていきますね。『G.I.ジョー』の長い歴史の浮き沈みっていうのは、ごくごく大まかにいうとベトナム戦争(ジョー人気下落~展開終了)→米ソ冷戦(ARAHで復活)→ソ連崩壊(ARAH展開終了、スピンオフでサベージ軍曹登場、以下ジリ貧で消滅)みたいな世相とのゆるいリンクがあると思います。

過去から来た英雄・サベージ軍曹はあの時期、明らかに場違いなキャラクターだったし、数合わせ的に『エクストリーム』にゲスト出演してたのなんかもう…ちょっと、可哀想というかなんというか。ま、敗軍の将として、にくめないポジにおられますよね。なんだそのむすびは。

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