
ワンオペ弁護士の日常(1)前提編
弁護士の前田です。いつもお世話になっております。本連載は弁護士業をもっと身近に感じてもらうために日々の私の活動を知ってもらおうと考え、私の身の回りの活動や物事に関する向き合い方などをブログ形式でつらつらと書きなぐっていこうというものです。
1.弊所の規模、活動などについて
弊所は虎ノ門にあります。事務所はレンタルオフィスの形式をとっており、会議室は共用です。虎ノ門という場所を選択したのは、自宅の最寄り駅から地下鉄で直通で行けること、東京地裁や弁護士会館に事務所から徒歩で行ける距離であることなどが決め手になりました。
とはいえ、事務所の経営基盤が確立していない現段階では大きいスペースを借りることができないので、必要最小限のスペースを間借りし、通常の業務は自宅で処理しております。
弊所には事務員がいないのでいわゆるワンオペ状態です。したがって、電話対応や郵便物の受け取りなど通常なら事務員に任せるべき仕事も自分でやらねばなりません。事務員をフルタイムで雇うには年300万円程度の支出が必要になります。一度雇った事務員には中長期的に仕事を果たしてもらいたいので最低限5年分の内部留保、つまり単純計算で1500万円は余剰がないといけませんが、そこまでの内部留保はできていないのが現状です。
もっとも、訴訟資料のファイリングや郵便物対応などの業務は独立前から弁護士として扱ってきたことでもありますし、事務員に任せたいのはいわゆる事務所の留守番業務であることを考えるとそこまでの投資が必要かは悩んでおります。
活動については各種学会活動から弁護士会の研究会、先端技術(メタバースやAI、web3などが中心)に関する各種イベントへの参加、事務所で行っている各種セミナーなどを回しております。
参照:著作権法セミナー(独立してから毎月開催しています)
2.私が扱っている仕事の範囲
弊所は主に著作権法や商標法などのトラブルでご相談にいらっしゃる方やこれらの権利処理の契約法務の依頼を目的にいらっしゃる方が多いです。また、最近ではVR業界で活動しているいわゆるVR住民やVRアーティストの方からの一般的な法律相談なども多く受けております。
私の取り扱い分野は知的財産法務や会社法務が中心ですが、一般の労働事件や誹謗中傷対応の事件、ひいては一般民事の紛争まで幅広く対応しております。これらの事件に広く対応できるのは独立前の事務所がいわゆるなんでも事件を受けるタイプの事務所であったことも大きいです。
現在特に多いのは生成AIやメタバース空間に関する事業の適法性監督の依頼だったり、生成AIツールをどこまで安全に使えるのかというご相談です。
3.私がなぜ知財弁護士になったか、知財の仕事をしたいと思ったか
私が知財の仕事をやりたい、と思ったのはロースクールで知的財産法が何のためにあり、知財弁護士がどういう仕事なのかを当時東大ローの客員教授であられた末吉亙先生(弁護士知財ネット理事)と問答したことがきっかけでした。当時私は知的財産権で独占権を認めるということと想像や発明の文化の促進との文脈がわからず、クリエイターが権利を主張して独占して金稼ぎをするのを法がサポートするのは文化の多様化、促進に照らしてどうなのか、という質問をしたところ、権利に対して独占権を認めて創造のインセンティブが確保されることで芸術や発明が促進されるというモデルを取っていることや色々な表現が多様化されるためには表現を保護してフリーライドや売れ筋の表現だけが残る仕組みを変えないといけないという回答を受けました。その話を聞いた時、私は知財弁護士になれば、創作者や発明者のそばで彼らの活動を法務面からサポートできるパートナーとして創作や発明の最先端の世界を一緒に享受できるのではないか、と考え、自分にはできない創作や発明をする人と同じ景色がみられる可能性に思いをはせて知財弁護士を目指しました。
しかし、当時の私はすでに30代を過ぎており人材として「とうが立っている」状況でした。司法試験の成績も芳しくはなく、いわゆる大手事務所にはまったくお声もかからずたまたま引っかかった事務所で働くことになりました。
その事務所は中小企業法務と街弁を足したような事務所であり、私は弁護士としてのスタートをこれらの企業法務と街弁業務を学ぶところから始めました。
それでも創作に関する権利関係を扱う弁護士になることを諦めきれず、当時エンタメロイヤーとして最先端を歩んでいらした福井健策先生のイベントやシンポジウムに参加し、デジタルアーカイブ学会やエンターテインメントロイヤーズ、弁護士知財ネット、日本商標協会、著作権法学会といった知財弁護士御用達の団体にも参加して各種先生方の発表や交流を通じて最新の知財弁護士会のトレンドを吸収することに努めました。
所属事務所には3年在籍していましたが、所属事務所のボスの弁護士との方向性との違いから同事務所を退出して独立しました。
正直独立するだけの経済的基盤はなく、ためた貯金を食いつぶすだけの生活がずっと続きました。
独立してからはクリエイターのことをもっと知りたいという考えからクリエイターのイベントやクリエイター支援したい人とのかかわりを強くするなどの課外活動を行いました。その過程で志を同じくする方と巡り合い弊所のコンサル業務も担ってくれることになりました。VRや生成AIについて詳しく知ったのもこの時期です。特にAIについては著作権が肝になることは簡単に想像できましたので早い段階から研究を行っておりました。
現在、それらの活動の過程の真っただ中ですが、だんだん自分のやりたい仕事ができるようになってきていることもあり日々の活動については充実した日々を過ごしております。
ただし、あくまで知財弁護士は大きな紛争案件でも来ない限りは大きく儲かる案件が早々は来ないので単価がほどほど程度の仕事を処理することで生計を立てている、というのが実情です。
大きい事件やお金のもらえる事件が欲しいのは本音ですが、クリエイター様にはお金のない方が多いのでそこも踏まえて価格交渉をする必要があります。
4.現在私が力を入れていること
現在はこのような状況を踏まえ、AIツールの利用者やVR空間の住民、出版やコンテンツを扱う企業様宛の顧問契約プランに注力しております。弊所の顧問契約は相談が回数時間無制限であり、DiscordやSlack、Chatworkなどで適時に返答ができる体制を整えていることもあり顧問契約をいただいた方からもレスポンスの速さや正確さで好評を得ております。弊所の経営基盤としても毎月顧問料をいただくビジネスの方が事務所の安定経営には大事であることからも顧問の獲得に向けた活動を実施しているところです。
もし顧問契約の内容にご関心がある方はこちらのページをご覧ください。
※顧問契約プランの概要
今日はここまで。また明日日々の活動状況について説明していこうと思います。
いいなと思ったら応援しよう!
